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30.侮蔑

諸事情で次回の更新が遅れます。度々申し訳ありません。

「な、何でお前が!どこから!」


俺に向かってそう叫ぶ相楽は恐怖に震えていた。

何とか俺に向かって叫んでいるのは、ただ俺に弱っているところを見せたくないと言う虚勢以外の何物でなくて、俺はあっさりと相楽を無視する。


ーーーまるで相楽などに一切興味が無いというかのように。


「っ!」


そしてその俺の態度に相楽は激情する。

それは相楽の中にほんの僅か残っていたプライドの所為か、それとも恐怖のせいか。


「お前が、この騒ぎを起こしたのか?」


「っ!」


だが、俺に掴みかかろうとした相楽の動きは俺のその言葉でピタリと止まる。

そしてそれこそが何よりの証拠だった。


相楽がこの騒ぎを起こしたと断定するのは大して考えなくても出来ることだった。

特別練から突然現れた上級悪魔に、普段生徒が立ち入りを許可されていない特別練に朝らから篭っていた相楽。

そして相楽と取り巻きの桑田という男子生徒の制服にべったりとついた


ーーー丁度合わせたらば男性一人分になるだろう血液。


そこまで証拠があってわからない訳がない。


「ち、違う!」


だが、相楽は必死に否定する。

惨めに、まるで懇願するかのように叫ぶ。


「あの鼠が!鼠さえいなければ!」


「はっ、?」


俺はその相楽の叫びの意味がわからず眉をしかめる。

だが、その言葉の意味など今は如何でも良い。

そう俺は判断して、最後に相楽に尋ねる。


「なぁ、お前は自分のしたことに責任を取るかはあるか?」


「なっ!」


それはあの上級悪魔と戦う気は無いかという、言外の誘い。

正直、相楽程度がどこまで役に立つのか分からない。

いや、殆ど役に立たない可能性の方が高い。

だが、上級悪魔という存在は俺の知らない存在だ。

別に勝てないと思っているわけでも、似たような相手との戦闘が無かったわけでもない。

しかし、その道の専門家がいるのといないとのではある程度は変わるかもしれない。


「ひっ!」


だが、俺がそう告げた時明らかに相楽は隠しきれない恐怖を浮かべた。

無駄にプライドが高く、自分より下の者には何としても弱みを見せようとしなかった相楽が、だ。


「……そうか」


そして俺はその相楽の反応を答えだと受け取り、踵を返す。

そのまま実習室に移動してようとして、


「ふざ、けるな!」


ーーー酷く狂気的な相楽の声と共に、辺りが一瞬魔術の光で明るく照らされた。












俺はふと目を下ろす。

すると俺をかするように放たれた相楽の魔術は、俺の足先の床を貫いていた。

それは手加減なしの、俺を殺し得る威力を持った魔術。


「何でお前が、無能が前に進もうとしてんだよ!」


そしてそれを放った相楽は狂気的な光を宿す目でこちらを睨んでいた。


「そうだ!お、俺たちでさえ出来なかったことがなぜお前なんかにできると思ってる!」


さらには今まで恐怖で口を鳴らして震えていた桑田も相楽と同じ目で立ち上がる。

そして俺はその2人の目を見て悟る。

彼ら2人はもう既に自分達が何をしでかしたかを分かっているということを。

おそらく相楽たちは理事長やアイラ達への不満を溜め込み、そして酷く自分本位な理由で行動を起こした。

だがそれはあっさりと失敗した。

相楽達は何か鼠の所為で失敗したと喚いていたが、


ーーーそんな風に失敗していなかったら自分達は死んでいたことも分かっているのだ。


自分が何を犯したのか、そしてそれをどれだけ軽い理由で起こしてしまったかを。

そしておそらく2人もアイラがあの上級悪魔に攫われるのを見ていたのだろう。

だが、恐怖で何も出来なかった。

自分のやったことに責任を取って動こうとすることさえ。


だから相楽達は俺がアイラの為に動こうとすることを遮ろうとする。

自分より下だと思っていた人間が、自分よりも勇気があることを認めたくなくて必死に俺を押し止めようとする。

それは酷く憐れみを感じさせる行為だった。

おそらく相楽たちはもう、魔術組織で生きることはできない。

それだけの失態を犯している。

そしてそれでも認めることができず、泣き喚いているのがいまの状態で、


「邪魔」


「がっ!」


ーーーその状態が俺の心に響くことはなかった。


俺は魔術を展開して、俺に歪な笑いを浮かべていた相楽へと一瞬で距離を詰める。

そして膝で腹部を強打する。

何かが折れるような感覚共に、相楽の肋が数本折れる。

そのかつて味わったことない痛みに、相楽は身体を丸くする。

そして俺はその状態の相楽の後頭部に手をやり、床に叩きつけた。


「あがっ!ががっ!」


地面に顔を強打した相楽の顔の下から血が広がって行く。

おそらく鼻でも折れたかもしれない。

その場合かなり顔は悲惨なことになっているだろう。

そんなことを考えながら、


ーーー俺はさらに相楽の顔を踏んだ。


「ぎゃぁぁぁああ!」


「うるせぇなぁ」


酷く耳障りな悲鳴。

俺はその悲鳴に顔をしかめつつも、振り返る。


「あ、あ、ぁあ!」


そこにはやっと俺が相楽を蹴り飛ばした衝撃から、我に帰り叫びながら魔術を発動し始めた桑田の姿があった。

だが俺はいとも簡単に魔術の発動前に桑田との距離を詰める。


「ぎゃぁ!」


それから桑田の髪を掴み、壁に顔面を叩きつけた。

桑田はあっさりと短い悲鳴を残して意識を飛ばす。

そしてそれを確認した俺は、恐怖の入り混じった視線でこちらを見つめる相楽へと振り返った。


「っ!」


俺が振り返ったことに気づいた相楽は震えながら叫ぶ。


「何で、そんなに強い!ま、待ってくれ!悪かったから!謝るから!た、たすけて!」


血だらけの顔で、横たわったまま酷く無様に相楽はそう叫ぶ。


「なっ!」


ーーーそして俺はその相楽の横を素通りした。


俺は最後に酷くめんどくさそうに相楽に告げる。


「助けて?謝る?はっ!


ーーー俺はお前にそんなに興味はない」


「あ、」


「自分のしたことにも責任が取れず、好きな女の危機にも震えることしかできない。


なぁ?そんな奴に俺が注意を払う必要があるのか?」


「あ、あぁ、」


俺の視線、自分より格下だと思っていた者の自分を見下す視線。

実際俺は全く相楽などに一切関心を払っていなかった。

今大切なのはアイラを救う、それだけなのだから。

だから俺は全く躊躇せずに相楽にアイラを救う助力を頼んだ。


「っ!」


ーーーそして俺は本当に一切自分に注意など払っていないことを相楽はやっと悟る。


そしてその瞬間、見下していたはずの人物からの侮蔑の視線に対する屈辱か、それともそのことに対する絶望か。

そのどちらかに反応して相楽の最後に残った自尊心が消えるのがわかる。

彼を彼と為していた要素が、中身が抜け落ちていくのが分かる。


「はっ!」


だが、それに俺は憐れみさえ抱くことはなかった。

ただ侮蔑のこもった笑みを相楽に向ける。

そして、それ以降俺が相楽に興味を払うことは一切なかった。

更新遅くなってすいません……

一応ここがザマァシーンです……賛否が分かれそうな予感……

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