27.手札
次回の更新は作者が体調を崩した為遅れます。
申し訳ありません……
理事長との交渉の約束が昼の長期休みに迫る中、午前中、俺はいつもと変わらず授業を受けていた。
「さらには、」
前で教鞭を振るう教師の話はいつも通りつまらない。
そしてそんな授業であるのに対し、いつも通り全くもって集中を切らさないクラスメイト達も正直気味が悪い。
授業中目の前で起こる一連の流れは全く今までと変わっていなかったが、
ーーーだが、俺に対する扱いは昨日から急変していた。
今まで隙があれば俺を指名していた教師も、そしてそれを嘲笑っていた生徒達も全く俺に関わろうとせず、何処か嫉妬のこもった視線で見つめてくるだけ。
そしてあの相楽たちも俺にちょっかいをかけてくることはなかった。
いや、姿を見ないと言うべきか?
そのクラスメイトの変化は決して俺との仲が良くなった証などではない。
俺に向けられる生徒や教師からの視線には敵意や侮蔑が込められていてその逆としか言いようがない。
ーーーだが、それでも昨日までの扱いに比べると比にならないくらいましになっていた。
明らかに蔑まれ、学校中が敵に回ったかのような昨日までの周囲の人間。
それを変えたのは恐らく理事長の鶴の一声だろう。
それはひどく気味が悪い。
ー だが、こんなにましならば俺はこの学院にいて、アイラと友達でいられるのではないか?
「っ!」
ーーーしかし、俺の頭にはそんな思いが浮かんでくる。
それは決して認めてはいけない感情。
あの得体の知れない理事長の思惑に利用されることだけは俺は何としても避けなければならないのだから。
「っ!」
そして俺は授業の終わりの鐘がなり、お昼の長期休みになった瞬間、
ーーー自分の荒れ狂う感情を堪えるかのように強く拳を握ってアイラの方へと歩き出した。
そしてその手には、銀色に光る機械、ボイスレコーダーが握られていた……
「あ、颯斗くん!」
お弁当を手に、何かを探すように周りを見渡していたアイラは俺を視界に入れて花が咲くように笑う。
俺はそのアイラの笑みに罪悪感を感じるのが分かる。
「アイラちょっと……」
「え、え!?」
だが、俺は悩むことをやめてアイラの手を掴む。
そして動揺するアイラを人気の少ない階段の下まで連れて行く。
「あ、あのどうしたの?」
「突然ごめん、でも少し話があって……」
「えっ!」
俺がそう告げた途端アイラは酷く顔を赤らめる。
「ごめん、今日はお弁当を一緒に食べれそうにない」
「あ、えっと、え?それだけ?……恥ずかしい」
俺はそのアイラの様子に疑問を抱きながらそう告げると、アイラは何故か急に蹲って悶え始めた。
「どうした!大丈夫か!」
「………うん、猛烈に自分が恥ずかしくなっただけだから気にしないで」
俺が驚いてそう声をかけるとアイラは未だ赤い顔のままそう答える。
その様子は決して大丈夫そうには見えなかったが、体調を崩した訳ではないかと判断して追求をやめる。
「それと、後もう一つ」
「えっ?」
そして本題に入ろうとすると何故かまたアイラがおかしな声を漏らす。
気にならないことはないが、俺は早く本題に入った方がいいと判断してその声を無視する。
「アイラの家は理事長より位が高いか?」
「うん、やっぱり勘違いか……」
「ん、どうした?」
「ううん!何でもないから!言っている意味がよく分からないんだけど……」
アイラは俺の質問に対して本当によくわからなそうなそう告げる。
俺はそのアイラの様子に理事長の方が位が高いのかと、一瞬焦燥が胸を支配する。
「いや、アイラの家に理事長より偉い人はいる?」
「うん、そりゃお爺様が1番位が高いよ」
「しっ!だったらちょっとこれにある言葉を録音したい」
「えっ、何で?」
不可解そうなそのアイラの声に俺は一瞬言葉に詰まる。
理事長のことは俺はアイラに話していいのだろうか?
いや、それはアイラと理事長の対立に発展する可能性がある。
そしていくら天才と言われているアイラでも理事長に勝てるとは思えない。
「ごめん……理由は言えない」
それは余りにも無責任な言葉。
「うーん、仕方ないなぁ……」
だが、アイラはそう笑った。
「っ!良いのか!」
「うん、まぁそんな悪用されそうなものは無理だけど」
「ありがとう!」
そして俺は確信する。
理事長に対抗出来るだけの手札が揃ったことを。
思ったより話が進められなくてすいません……
明日はちゃんと話が一章の最後に向けて進んでいくはず……




