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24.理由

「本当、何なんだよ……」


俺の頭に笑う理事長の姿が思い浮かぶ。

明らかに理事長はアイラと何らかの接触がある。

しかし、それが何なのか俺には全く理解できない。

学年一の天才と、魔術でないおかしな力を使う俺を囲おうとする理事長。

その目的は通常で考えれば、何らかの力を手に入れようとしているようにしか感じられない。


「だが、それならなぜアイラが実習に出ていないことを容認する?」


実習とは、この学院では必要不可欠な授業だ。

あそこで生徒達は実戦の訓練、そして魔術の訓練とかの学院にきた魔術師になるという目的を果たすために切磋琢磨する。

だが、アイラは一切実習に出ていないらしい。

そして俺の見る限り、アイラは放課後の魔術練習にも出ていない。


「魔術師になんかなりたくない、か……」


そこで俺は喫茶店でのアイラの言葉を思い出す。

その明らかにこの学院に通っている人間にはありえない台詞の中にはおそらくアイラの本音が籠っていた。

また、もしアイラが最早実習など意味のないくらいの実力を有していて、実習など訓練をしていないだけだったとしても、


ーーーそれでもあの理事長の様子を見て、それだけで納得できるはずがなかった。


「意味が分かんなぁ……」


俺はいくら考えても答えの見えない難問に、嘆息して側にあった茶菓子の封を切る。


「意味が、分からないのはこっちだから!」


そして俺がその茶菓子を口に放り込んだ瞬間、目の前の女性が大声で叫んだ。

俺の目の前で肩を上下させているのは、前に俺を魔術で保健室から追い出したあのヒステリックな養護教諭だった。









俺の今いる保健室は通常の保健室よりは大きいとはいえ、養護教諭の声はその中でも酷く煩い。

だが、俺は一旦目をあげる。

しかし直ぐにまた茶菓子を口に放り込みながら、思考に没頭し始める。


「無視するなぁ!」


「煩せぇな……」


だが、流石に何度も耳元で叫ばれると無視できず俺は養護教諭の声に顔を上げる。


「煩いじゃない!何で居座ってんのよ!というか、何で生徒用のお菓子を貪っているの!」


明らかに気怠げな様子の俺に養護教諭は怒鳴りたてる。


「ん、」


「っ!うぐぐ……」


だが、俺が理事長からの許可証を手にすると非常に遺憾そうに口を閉じた。

理事長と別れて、傷の治療の為に保健室に寄った俺を養護教諭は魔術まで使って追い払おうとしたが、許可証に口の端を引攣らせながら入室を許可した。

そして入室を許可された俺は傷を治療しつつ、椅子に踏ん反り返って側にあったお菓子を貪り食っている。

それが今の状況だった。

俺はその状況に不満を持ちながらも、許可証の所為で何も言えない養護教諭を見て、消毒を再開する。

そして消毒を終え、薬と包帯を取ろうとして何処にあるかわからないことに気づく。

俺は養護教諭に聞くことを諦め、立ち上がろうとして、


「あぁ、もうじれったい!」


「っ!」


その瞬間に養護教諭に椅子に引き戻された。

俺は驚いて振り向くが、養護教諭が手に包帯と塗り薬を持っているのを見て動きを止める。


「勘違いしないでね。早く出て行って欲しいだけだから」


そう告げた養護教諭の顔は本当に嫌そうな顔で、俺はその言葉が照れ隠しなどでは無い事を悟る。

ただ、害は無いかと俺は判断してされるがままにする。

それからは無言の時間が流れる。

淡々と作業する養護教諭と、理事長について考える俺の間には一切会話はなかった。

そしてそのまま十数分も経った頃だろうか?


「私の時より酷い……」


「はっ、?」


そうポツリと養護教諭の漏らした声に俺は急激に思考の海から意識を取り戻す。

その養護教諭の漏らした声はまるで彼女がいじめられていたかのようにも聞こえて、


「もしかしてお前……」


「言ったでしょ。私は酷く魔術の腕が悪かったて」


それを養護教諭は否定しなかった。

その態度に俺は俺の推測が外れていなかったことを悟る。

だが、養護教諭の顔はまるで忌々しき過去を思い出したかのように歪んでいて、俺はそれ以上聞くことを躊躇う。


ーーーしかし、一つどうしても分からないことがあった。


養護教諭が、俺と同じくいじめられていた、同類だったとしたならばだからこそ理解できない。


「なぁ、だったら何故俺を嫌う?」


俺と同じくいじめられているならば、何故周囲と同じく俺をいじめるのか。

そしてどうして、


「同じ立場にいるやつを恨む?」


それは俺の心からの疑問だった。

決して下心も、含みもない。


「同じ?」


ーーーしかし、その瞬間養護教諭の顔に怒りが浮き、空気が変わった。











「っ!」


俺は急に怒りの表情を浮かべた養護教諭に驚く。

だが、養護教諭はそんな俺の状態など気づかずに俺にのし掛かってくる。


「巫山戯るな!何が同じだ!」


一瞬、俺は養護教諭の意識を落とそうとする。


「ーーー私は直ぐに退学になったこの学院に、私より無能のくせに通っているくせに!」


「はっ、」


だが、その言葉に俺は動きを止めた。

2日に一度更新という凄く不安定な更新になって申し訳ありません……

一章の最後は連続更新を心がけます……

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