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23.謎

「この歳から難聴じゃ無いですか?」


ー 監視されている。


このタイミングで現れた理事長に、俺の頭にそんな可能性がよぎる。

だが俺は動揺を抑え込み、すっとぼけてみせる。


「へぇ、私がいくつだと思ってるの?」


俺のふざけた解答に理事長の額に青筋がたつ。

俺は目の前に立つ理事長を眺める。

艶やかな金髪に、そして肌。

妖艶な雰囲気で騙されそうになるが、おそらく理事長は20も超えていないだろう。

俺はそう判断して笑う。


「22、ですかね?」


「あら、そんな若くは無いわよ。私24だから」


だが、次の理事長の一言で俺の余裕は消えた。

本気で驚愕で叫びそうになった。


「そうなんですか……」


しかし、俺は必死にその動揺を隠して口を開く。


「若作りが酷いので、28はいってると思ってました……」


「は、はち!」


流石にそこまで言われると思っていなかったのか、理事長は大きな声を上げる。

だが俺はその理事長を無視して、酷く心を込めて言葉を重ねる。


「まぁ、確かに仕方ないですよね。この学院に通っているのは20未満の若々しい少年少女ですもんね。24のおばさんが、耐えきれなくなって厚化粧に走り、精神年齢が釣り上がるなんて珍しくもなんともない……」


「本当に言いたい放題言ってくれるわね……」


俺の心からの同情に理事長が切れる。

本当に生徒からの真心を受け取らないとは器が小さい。

俺はそう笑おうとして、


「だから桜にも変態だと思われるのよ」


「……ちょと待て、やっぱりお前か!」


理事長の言葉に今までの余裕が全て吹き飛んだ。


「この学院での俺の数少ないオアシスが!」


「うわぁ、変態……」


「黙れ!ストレスの大元!」


俺は理事長に叫ぶ。

だが、理事長は心外そうに嘆息した。


「気を失って保健室で目を覚ました桜はどうも君との間にあったことの記憶を忘れているみたいでね。服が違うことに聞かれて君の実力を隠しつつ答えるのに私がどれだけ苦労したことか。私の良心を受け取らないと?」


「で、なんて答えた?」


「いや、桜が気を失ったと連れてきてくれた東という生徒が桜の格好に興奮していたから変えたと」


「悪意しか感じねぇよ!」


どうりで、理事長との交渉の後佐藤さんに謝りに行ったら、


「あの、東くん……年頃の男の子としては仕方がないかもしれませんが、少し抑えましょうね……」


と佐藤さんに微妙な顔で言われたわけだ……


「お前陰湿過ぎるだろう……まぁ、ちょっと今日は早退……じゃない!」


俺は理事長の陰湿過ぎるやり方に、気を落としかけてようやく自分の目的を思い出す。


「アイラについて、何故成績上位者である彼女が実習に出ていない?」


俺がそう告げた瞬間。理事長の纏う空気が変わった。











「なんの目的なの?」


そう告げる理事長の声に今までのようなふざけた色は一切存在しなかった。

さらには殺気まで込められており、今までの緩い空気は一気に霧散する。


「やっぱりお前が関わっているのか……」


だが、俺には退くには全くなかった。

俺は一歩も退くことなく重々しく告げる。


「その傷、実習でついたの?」


しかし、理事長は俺の言葉を無視して、俺の脇腹の傷へと目を落としてそう尋ねてくる。


「はぐらかすな!質問に答えろ!」


「ーーーで、自分に好意的で正義感の強い彼女に実習でも助けて貰いたいって?」


「っ!」


俺は一瞬、理事長に話をはぐらかされたと思い怒鳴るが、理事長の次の言葉に事態はそれよりも酷かったことを悟る。


ーーーつまり、理事長はアイラも何らかの目的を持って見張っているということを。


「巫山戯るな!」


そしてそのことに気づいた瞬間、俺は激怒していた。

理事長の発した殺気など比にならない程の。


「っ!」


「アイラで何か企んでいるならすぐに手を引け」


理事長が動揺して少し後ざる。

だが俺は全く気にせずさらに彼女におしよる。


「俺で何を企んでいるかは知らない。


ーーーだが、アイラは巻き込むな」


俺の激情に反応して、体内の何かが暴れ出す。

理事長を殺せと騒ぎ立てる。

それはかつて無い、交渉のあの時でさえ比にならない濃密な殺気となって理事長に襲いかかる。


「あは、」


「は、?」


ーーーだが、その作家の中で理事長は唇を歪め、微笑んだ。


何処か引き攣った、それでも確かな笑み。


「ぐっ!」


しかもその次の瞬間、理事長の手に傷口が抉られる。

決して、相楽につけられた傷は俺にとって深いものでは無い。

だが、傷口をえぐられる生理的嫌悪と、激しい痛みに俺は思わず殺気を出すこともやめ、全力で後ろに下がる。


「何なんだよ!」


俺は理事長に対する恐怖で叫ぶ。


「そんなに、アイラが大事?」


だが、理事長は俺の言葉を無視してそう俺に呟く。

俺の血で濡れた手に、何処か疲労した顔つき。

しかし、理事長は何処か鬼気迫る雰囲気を纏っていて俺は息を飲む。


「当たり前だろうが!」


ーーーだが、俺の言葉は決まっていた。


俺が今回理事長の元に来た理由、それは相楽達の度を越したいじめも理由のうちだ。

だが、一番はアイラのことだ。

だから、絶対に前回してやられた相手だろうが俺は下がるつもりはない。

その思いを込めて、理事長を睨みつけて、


「そう。


ーーーだったら、アイラから監視をとるわ」


「はっ、」


その理事長の言葉に動きを止めた。


「そうね。貴方のいじめに関しても教師に声をかけて辞めさせておくわ。それから、その傷なら保健室に行った方が良いかしら」


「お、おい!ちょっと待て!お前は何が目的なんだ?」


急激に態度を変えた理事長に俺は何とか、それだけ口を開く。


「まだ教えられない」


だが、理事長は俺に保健室に入れるよう署名した許可証を俺に渡しながらそう呟いた。


「私の目的をされるかどうかは貴方次第よ」


「っ!ちょっと待てよ!」


そして、その言葉を最後に理事長は俺がいくら叫んでも反応することはなかった。

昨日には投稿したかったのですが、遅くなって申し訳ありません……

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