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17.激怒

「なんで俺をここに呼び出した?」


俺は顔に当たる風に目を細めながら、後ろにいる少女、ハルバールへと声をかける。


「うん、まぁお昼食べよ」


だが、そう言ってハルバールは俺の追求を避けるように自身のお弁当を掲げる。

俺は一瞬、さらに問い詰めようか悩む。

しかし、お昼の長期休みの今、空腹であることに気づき、取り敢えず昼食をとることに決める。


「………」


そして俺たちは隣同士に座って、黙々と食事を取り始めた。









一時間目、ハルバールが教師に反論してから、教室の雰囲気は何処か何時もと違う何処か戸惑いの含まれるものになった。

次の授業からは俺が教師に当てられ理不尽な問題を出され、嘲笑されてもハルバールが反論することはなかった。

しかし、だからと言って教師と同じように笑えるクラスメイトなど存在するはずもなく、直ぐに教師は俺を指名することをやめる。

そして四時間目になる頃にはもう、教師からの指名は無くなっていた。

その時には俺を取り巻く状況は明らかに変わっていた。

今までのように、クラスメイトのほとんどは俺を見下しているだろう。

だがそれをクラスメイトは休み時間になっても、表立って出すことは無かった。

それは俺の望んでいた状況。

素直に喜ぶべきなのかもしれない。


ーーーだが、何故か俺にハルバールが話しかけてくることはなかった。


お昼休みになった時に話しかけようとしたが、一枚の紙切れを俺に押し付けてそのまま逃げられたのだ。

そして、その紙には


「お昼屋上で」


と、それだけが書かれており、俺はハルバールの不可解な行動に呆れつつも、屋上へと向かった。








そして現在の状況は、ハルバールに何故俺に関わろうとしなかったかを問い詰めようとしている状況。

まぁ、ただご飯を食べているだけだか。


ー 何を考えているのか分からないが、話だけは聞かないと。


俺は黙々と箸を動かしながら、そう考える。

俺をここに呼び出したということはまず俺を避けようとしているわけでない。

まぁ、そんなことするつもりがないことくらい知っているが、だからこそ不可解だった。


「あの、ごめん」


俺が口を開こうとしたときハルバールが先に口を開いた。

俺はその偶然に一瞬反応が遅れる。


「明らかに、クラスで東くんを浮かせちゃったよね……今までいじめを全然助けてあげれなくて、最悪なタイミングで介入しちゃって……だからせめてさらにクラスメイトの人に注目されないようにって……」


そしてその俺の態度を怒っているとでも勘違いしたのか、顔をうつむかせ、ポツリポツリとハルバールは言葉を続ける。

その本気で後悔しているような声音に、俺は一瞬唖然として、


「ぷっ、あははははっ!」


ーーー吹き出した。


「え、な、なんで!?」


ハルバールは腹を抱えて笑い転げる俺に目を丸くするが、俺はそれでも耐えきれず笑い続ける。

そして数分後、何とか呼吸を整えて口を開く。


「あのなぁ、お前が最初に口を開いた時点でもう手遅れだよ」


「ぐっ、ご、ごめんさ……」


「いや、謝る必要なんてないから」


「えっ?」


そう、そんな必要など無いのだ。

何故なら、


「ーーー俺はお前が友達になってくるなら、それだけで十分だから」


最早俺にとってクラスメイトなどどうでも良いのだから。

これだけいじめられて、クラスメイトと仲良くなりたいそんなことを考える人間などいない。

実際ハルバールだって俺は最初利用するつもりしか無かったのだから。


「っ!」


そして、その俺の言葉を聞いた瞬間、ハルバールは赤面する。

だが直ぐに、しょぼんと頭を俯かせた。

俺は少し困りながらも、本当にそう思っていることをなんとか説明しようとして、


「ハルバールさん、少し良い?」


ーーー屋上の扉を開けて、相楽が現れた。










「相楽、少し後にしてくれないか?」


俺は内心舌打ちを漏らしつつも、何とか堪えつつそう告げる。


「ふっ、」


だが相楽は俺の言葉を鼻で笑って無視する。


「え、あ、」


そしてそのままハルバールの元へと歩きよる。

ハルバールは気の強そうな顔に反して、性格はかなり内気だ。

俺をストーキングしていたので、決して行動力がないわけではないが、自分の意見を主張するのが苦手だ。

そのせいか、明らかに相楽に近づかれることを嫌がっているのにはっきりと口に出来ていない。


「おい、ちょっと待て」


俺はそう判断して、とにかく相楽の動きを止めようとして肩を手で掴む。


「っ!」


ーーーだが、その瞬間相楽は躊躇なく魔法を発動した。


俺は常に実習の時相楽のマトにされているが、魔法は実習の時とは比にならない威力で、俺は間抜けなふりをするのを諦めて咄嗟に避ける。


「気安く触るな、僕の名を口にするな。


ーーー無能が」


何時もと同じく見下した目で告げられた言葉は、何処か焦燥を含んだ怒りも加えられていて、俺は相楽が俺の動きの鋭さに異常を感じていないことを確かめる。

しかし、それだけで相楽は止まらなかった。

今までにない感情的な様子でさらに俺に魔術を発動する。


「まじかよ!」


俺は相楽がそこまで過激になるとはおもわず、そう呆然と漏らす。

だが、そのまま呆然としているわけにも行かず直ぐに後ろに飛ぶ。

そしてその間も俺は必死に、頭を働かせていた。


ー 明らかに相楽は感情的になり過ぎている。


今までも相楽は俺を見下し、痛めつけることはあった。

いや、俺をいじめるクラスメイトの代表であったと言っていい。


ーーーだがそれでも程度は心得ていた。


クラスメイトに恐怖を植え付けないように、自分のカリスマを強めるために相楽は俺をいじめていたが、こんなに感情的になることはなかった。


「そして、


ーーー彼女に近づくな!」


「なっ!」


だがその瞬間、俺はまるでハルバールを守るように立ちふさがった相楽を見て悟る。


ーーーつまり、相楽はハルバールに対し恋愛感情を抱いているということを。


「っ!」


そしてその瞬間、俺の胸に焦燥が走る。

今まで相楽は節度のある付き合いしかハルバールとしていない。

第三者から、相楽がハルバールに対し、そういう感情を抱いていると思うものはいないだろう。


ーーーだが、内気なハルバールが俺との、無能との友好関係を理由に相楽に押しやられたられば彼女は反抗できるのか?


「ハルバール、俺と」


そして俺は考え、ハルバールにそのことを伝えようとして、


「……うん、いっか」


躊躇って諦めた。


「相楽くん、」


「どうしました、ハルバールさん!」


次の瞬間、頬を叩く音が辺りに響く。


「は、」


呆然とした声を漏らす、相楽にハルバールは微笑みかける。

その顔に浮かぶ笑みは今までと同じく酷く美しくて、


ーーーだが明らかにハルバールは激怒していた。

投稿遅くなってしまいました、すいません……

おかしい、早く投稿できるのではないかと思っていたのに……

ただ次回はもう少し早く投稿したいです。

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