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青くまくんと赤くまちゃん。

作者: 霜月 にな

クリスマス童話です。

 


「ねえ、おかあさん。おはなしよんで?」



女の子はお母さんに言いました。



きょうはクリスマス。


テーブルいっぱいのごちそう、ジュースにキャンドル。


クリームたっぷりのまっ白なケーキには、女の子の大好きないちごがのっています。



あとはお父さんがかえってくるのをまつばかり一一一。



「お話?いいよ。どの本にする?」


お母さんが本だなから絵本をとろうとすると、女の子は「ううん」と首をよこにふります。



「はじめてきくおはなしがいい」



そのことばにお母さんは首をかしげました。


「初めて聞くお話?」


「うん」


うなずく女の子の目はかがやいています。



そう。まるでへやにかざられているクリスマスツリーのように、キラキラキラキラと。



お母さんはそれをしばらく見つめると、にっこりとほほえみました。



「そっか。じゃあ、とっておきのお話をしちゃおうかな?」



「うん!」


「じゃあね……」


お母さんはゆっくりと話し始めます。

 

 

みどりのきぎにかこまれたふかいもり。


そのなかにあるレンガでできたちいさなおうち。


そこに、青くまくんと赤くまちゃんがすんでいました。



ふたりはとてもなかよしで、なにをするのもいっしょ。



いいにおいのおはなをつむのも。


あめあがりにきれいなにじをみるのも。


あかやきいろにいろづいたおちばをあつめるのも。


こおりのはったみずうみでスケートをするのも。


だいすきなはちみつをとりにいくのも。


そのはちみつでおいしいパンケーキをやくのも。


いつもいつもいっしょです。



あるふゆの、さむいあさのことです。



「きょうはもりのおくにいこう」



青くまくんは赤くまちゃんにいいました。


「もりのおく?なにがあるの?」


赤くまちゃんはたずねますが、青くまくんはおしえてくれません。



「ひみつ」



ただわらってそういうだけです。


赤くまちゃんは青くまくんにないしょにされて、すこしさみしくなりました。


でも、



青くまくんのことだから、きっとたのしいことにちがいないわ。



そうおもいなおして、いっしょにいくことにしました。


おそろいのマフラー、てぶくろ、ぼうしにながぐつ。


そしてかばんにはあたたかいおちゃと、だいすきなはちみつパンケーキをたくさんつめて。



はぐれないようにしっかりとてをつないで、さあ、しゅっぱつです。


 


げんかんからそとににでると、あたりはまっしろ。


どうやらよるのあいだにゆきがふったようです。


「わあ、きれい!」


「すごいぞ、いちばんのりだ!」


ふたりともうれしそうなこえをあげると、ゆきのなかへとびだしていきます。


さく、さく。さく、さく。


まっさらなゆきのうえにつづく、ふたつのあしあと。


るるる、ららら♪と、あるきながらたのしげなうたなんかもでてきます。


さく、さく。さく、さく。


おかをこえて、こおったみずうみのよこもぬけて。


とちゅうでおひるをたべてきゅうけいして、さらにもりのおくへとすすみます。


さく、さく。さく、さく。

さく、さく。さく、さく。


やがてひがかたむき、まわりがくらくなりはじめるころ。


赤くまちゃんはだんだんふあんになってきました。


だってこんなとおくまできたことなんて、いままでいちどもなかったのですから。


それに、いつもならあうもりのともだちにも、きょうはひとりもあいません。


「ねえ、どこまでいくの?」


「まだまだ。もっとおくだよ」


「ねえ、そこになにがあるの?」


「ひみつだってば」


いつまでたってもおしえてくれない青くまくん。


「どうしておしえてくれないの?」


とうとう赤くまちゃんはおこってしまいました。



「いじわるする青くまくんなんか、きらい!!」



赤くまちゃんはそうさけぶと、つないでいたてをふりほどいてはしりだしました。


青くまくんがとめるのもきかずに。


はしってはしってはしってはしって、ずーっとはしりつづけて。


「あっ」


赤くまちゃんはきのねっこにつまづいてころんでしまいました。


ふわふわなゆきのおかげでけがはしませんでしたが、そこでようやくきづきます。



「ここ、どこ?」



そう。やみくもにはしっているうちに、赤くまちゃんはまいごになってしまったのです。


ひはすっかりしずみ、もりはもうやみのなか。まっくらなきのかげからは、いまにもおばけがでてきそうです。


もどろうとしばらくあるいてみましたが、どこからきたのかさっぱりわかりません。


「もうつかれたよぅ」


あるきつかれた赤くまちゃんは、ついにそのばにしゃがみこんでしまいました。



「おうちにかえりたい……」



さみしい、こわい、おなかすいた。


いろんなきもちがごちゃまぜになって、そのめからはなみだがぽろぽろこぼれてきます。



……そうしてどれくらいなきつづけていたでしょうか。



しゃん、しゃん、しゃん、しゃん。

しゃん、しゃん、しゃん、しゃん。


ふいにすずのおとがきこえたきがして、赤くまちゃんはかおをあげました。


なにかしら?


赤くまちゃんはじっとくらやみにめをこらします。


すると、あかいひかりがこちらにちかづいてくるではありませんか。


こわい!きっとおばけだわ!!


赤くまちゃんはたちあがってにげようとしました。


すると、



「にげなくてもいいよ」



やみのなかからやわらかなこえがひびきます。


「こんなところでどうしたんだい?」


そこにあらわれたのは、しろいひげをたくわえたちゃいろいうわぎのおじいさんでした。


 


「わたし、まいごになっちゃったの」



おじいさんをみてあんしんしたせいか、赤くまちゃんのめから、いちどはひっこんだなみだがまたあふれてきました。


おじいさんは、そんな赤くまちゃんのあたまをやさしくなでてくれます。


「おお、それはたいへんだ。どれ、わしのそりでおくってあげよう」


「そり?」


「ああ。どんなきょりもひとっとびできるそりだよ」


「ごらん」と、おじいさんのゆびさすさきをみると、そこにはトナカイたちのひくそりがありました。


ちかづくとわかったのですが、どうやらさっきのあかいひかりは、ひかるトナカイのはなだったようです。


「まあ、ふしぎ!どうしておはながひかっているの?」


おもわず赤くまちゃんはたずねました。


「それはね、まっくらなよみちをはしるとき、このはながみちをあかるくてらしてとってもべんりだからさ!」


こたえるトナカイはなんだかほこらしげです。


おじいさんはしゃがむと、赤くまちゃんめをのぞきこんで、いいました。



「じつはわしは、ひとしごとおえたあとでね。青くまくんにてがみをもらってここにきたんだが、しっているかい?」



「え!?」


赤くまちゃんはおどろきました。いったいどんなようで、青くまくんがこのおじいさんにてがみをかいたというのでしょう。


それをそのままつたえると、おじいさんは「ふむ」と、しろいひげをひとなでしました。


「じゃあ、それをいっしょに青くまくんにききにいこうか?」


「でもわたし、青くまくんがどこにいるかわからない……」


たよりなげにそういう赤くまちゃんに、おじいさんはにっこりとわらいます。


「だいじょうぶ、すぐにわかるよ。さあ、そりにおのり」


うながされるまま赤くまちゃんがおじいさんとそりにのると、そりがふわりとちゅうにうきました。 


「わあ!すごい!」


さっきまでのなみだがうそのよう。赤くまちゃんはまんめんのえみではしゃぎます。


「ほっほっほっほっ。おちないように、しっかりとつかまっているんだよ?」

「うん!」


赤くまちゃんがおじいさんのうわぎをぎゅっとつかむのをあいずに、そりはよぞらへとはしりだしました。



おじいさんのそりのなんとはやいこと!


トナカイたちのあしのひとかけで、赤くまちゃんたちはあっというまにもりのうえまでやってきました。


「さあ、みてごらん」


おじいさんにいわれ、赤くまちゃんはあしもとにひろがるもりをみおろします。



「あ……」



すると、もりのなかにひときわあかるいばしょがあるのにきづきました。


「おお、あそこか」


おじいさんもそれをみると、そりをそちらにむけてはしらせます。


そのばしょがだんだんちかづくにつれ、赤くまちゃんには、それがきれいにかざりつけられたもみのきだとわかりました。



そしてそのしたに青くまくんがいるのも。



「青くまくん!!」



そりがじめんにとうちゃくすると、赤くまちゃんは青くまくんにかけよってだきつきました。


「赤くまちゃん!ぶじでよかった!!」


青くまくんもそれをしっかりとだきとめます。


「青くまくん、あのね。……おこってごめんなさい」


あやまる赤くまちゃんに、青くまくんはくびをよこにふりました。


「ううん、ぼくこそだまっててごめん。どうしてもおどろかせたかったんだ」


「うん、びっくりした。すごいね!!」


ふたりはかおをみあわせて、ふふっとわらうとキラキラががやくもみのきをみあげました。


「ともだちも、みんないるよ」


青くまくんのそのこえをまっていましたとばかりに、しげみのあちこちからもりのなかまたちもつぎつぎとかおをだします。



さあ、もりのクリスマスパーティーのはじまりです!!



うたったり、さわいだり、みんなでたのしくやっていると、



「きみが青くまくんだね?」



おじいさんがゆっくりとしたあしどりでちかづいてきて、そういいました。


「はい、そうです。きてくれたんですね、サンタさん」


青くまくんはおじいさん一一サンタさんにむきなおると、ぺこりとおじぎをします。


(やっぱりサンタさんだったのね!)


赤くまちゃん、ほんとうにきょうはおどろくことばかりです。


「ごしょうたいありがとう。わしもパーティーにまぜてもらってもいいかな?」


「もちろんです。ぼくたちじまんのはちみつパンケーキもありますよ」


青くまくんはサンタさんを、ごちそうのあるテーブルにあんないします。



こうして、たのしいもりのパーティーは、ひとばんじゅうつづきました。




よあけのおとずれとともにたのしかったパーティーはおわり、サンタさんはみんなをそりにのせておうちまでおくってくれました。


青くまくんと赤くまちゃんでさいごです。


「パーティー、ほんとうにたのしかったよ。ありがとう」


「こちらこそ。きてくださってありがとうございました」


ふたりのおうちのまえで、青くまくんとサンタさんはあくしゅします。


「またきてね」


「もちろんさ」


赤くまちゃんはサンタさんとぎゅっとだきしめあいます。



「おっといけない、うっかりわすれるところだった」



そりにのりかけたサンタさんは、あわててふたりのところにもどってきました。



「はい、ふたりにプレゼント」


そういって赤くまちゃんのてにのせられたのは、まあるいガラスだま。


「これ、なあに?」


ふしぎそうにそれをみつめる赤くまちゃんに、サンタさんは「スノードームだよ。ふってごらん?」と、おしえてくれました。


いわれたとおりガラスだまをふると、そのなかではゆうべのパーティーのキラキラと、ちっちゃな青くまくんと赤くまちゃんがてをつないでわらっています。 


「わあ、すてき!サンタさん、ありがとう!」


「これからもなかよくするんだよ?」


「うん!」



わらいごえといっしょにとびたったサンタさんがみえなくなるまで、ふたりはずっとてをふりつづけました。



しっかりとてをつないで、ね。



 


「……おしまい」



おはなしがおわると、女の子は小さなてでいっぱいはくしゅしました。


「おもしろかった?」


「うん!」


女の子はとてもまんぞくです。



とけいのはりはすすんで、さあ、そろそろお父さんがかえってくるじかん。


いそいそとスープをあたためだしたお母さんのよこで、女の子はたずねます。


「ねえ、おかあさん。あおくまくんとあかくまちゃんは、いまもしあわせ?」


「そうねえ……」



ピンポーン♪



「あっ、おとうさんだ!」



女の子はぱあっとかおをかがやかせると、かえってきたお父さんをおむかえに、げんかんへとはしっていきました。


そのせなかを見おくりながら、お母さんはつぶやきます。




「そうね、幸せよ。今も、そしてこれからもね……」




そこへ女の子をだっこしたお父さんがはいってきました。


お母さんはそれをえがおでむかえます。



「お帰りなさい、柳くん」








「ただいま、桜、杏。メリークリスマス!」

 

閲覧、ありがとうございました!メリークリスマス☆

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