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球場〈前編〉

 そして、彼らが自らの生活を始めて一ヵ月が過ぎようとしていた。 

 ある日の事、コスモス日本支部長の渡瀬竜馬から連絡が入った。三日後の東京第二ドームでのナイターで、何かが起こると、本庁に予告状が届いたらしい。

 項志「第二ドームといえば、最近完成した上部が開閉式のやつか。」

竜馬「そうだ、最新型の球場だ。しかし、ここを選んだということは……お前たちに対する挑戦、もしくは罠だな。」

亜輝「ドグマの力をアピールするには、もってこいということか。」

竜馬「この球場もろともお前達を葬ろうということだ。」

項志「おもしろい、おもしろすぎるぜ。その挑戦受けた。」

亜輝「ついに実戦で試される時が来たか。渡瀬さん、この件、我々に任せてはいただけませんか。」

竜馬「奴らはどんな手段を使ってくるかはわからん。十分気をつけてくれ。」

亜輝・項志「わかりました。」

 そして、その予告の当日、球場は満員になり、ナイターが何事もなく始まった。亜輝と項志も、人ゴミに紛れて、ナイターの成り行きを見守っていた。

 その時、二人に接触してきた人物がいた。その人物は警察手帳を見せ、

警部「神龍君と我皇君だね。」

亜輝・項志「はい、そうですが。」

警部「君達のことは竜馬から聞いている。」

亜輝「あなたは、いったい……」

警部「竜馬とは昔からの付き合いだ。しかしこんなに若いとは……ああ、すまん、すまん。俺の名は江戸川壕騎。本庁で警部をしている。この事件の担当だ。」

 二人は思った。この人、本当に刑事か?どう見ても、やばい感じの人間のような気がする。

 それもそうである。角刈りにサングラス、黒のスーツ。それに額に傷。どう見ても刑事には見えない風貌である。

 警部「本当に刑事か疑っているんだろう。心配はいらない。カモフラージュだ。」

亜輝「お言葉ですが、逆にすごく目立っていると思われるのですが。」

警部「そ、そうか。まあいい。君たちの能力は竜馬から聞いている。捜査に協力してもらいたい。」

亜輝「それはいいのですが、俺達は表に出ることはできないのです。」

警部「それもわかっている。」

そう言って二つのキャップを取り出した。

警部「その帽子には小型の無線が内蔵してある。その無線で連絡を取り合うのだ。」

亜輝・項志「わかりました。」

 その時である。本庁にまた予告状が届いた。

 ドグマ“球場から五キロメートル離れた空き地に爆弾を仕掛けた。今から一分後に爆発する”

 そして一分後、爆弾が炸裂し、半径五十メートル以内は吹き飛んでいた。

 ドグマ“今の二倍の破壊力を持つ爆弾三つを球場に仕掛けた”

 警部「二倍だと。それも三個か。球場全体が吹き飛んでしまうぞ。」

 ドグマ“十五分後に爆発する。さあ、ゲームの始まりだ。十五分で解決できれば君達の勝ちだ。まあ、頑張りたまえ。”

 部下「警部、早く観客を避難させなければ。」

亜輝「残り十五分では避難させても同じことです。」

部下「どういうことだ。」

亜輝「爆弾三個の破壊力は直径約六百メートル、十五分で逃げ切れる距離ではありません。逆に内容を公表すれば球場内、外でパニック状態となり、多数の死傷者が出ることは必至、それこそ奴らの思うつぼです。」

部下「では、どうする。」

亜輝「内容は伏せて極秘の内に解決するしかないでしょう。」

 警察側もこれほど大掛かりなものとは思ってもいなかった。

 警部「赤外線探知機を使って総力を挙げて見つけ出すのだ。急げ、時間がない。」

亜輝「項志、行こう。」

項志「わかった。しかしどこへ行くのだ。」

亜輝「この事件、ゲームだと言っていただろう。」

項志「ああ。」

亜輝「奴らも俺達の存在を知っている。だから俺達の能力を試してみたいのかもしれない。まあ、挨拶がわりといったところだろう。」

項志「ターゲットは俺達か。」

亜輝「おそらくは。でなければこんな回りくどいことはしないし、犯行声明など出したりはしない。爆弾だが、球場の端に仕掛けたのでは殺傷能力も半減してしまう。」

項志「ということは。」

亜輝「そうだ。球場のど真ん中、マウンド中央部とドーム最上部に取り付けられているカメラだ。」

 そして無線機で警部に連絡した。

亜輝「警部、調べてみてください。」

警部「わかった、今ちょうど休憩中だ。そのすきに爆弾処理班を向かわせろ。観客に気付かれるな。パニックになる。」

 亜輝の言う通り、二つの爆弾が発見された。一つはグラウンドの中央プレートの下に穴が掘られて、その中に。そしてもう一つは、中央部のカメラの横に設置されていた。

 亜輝「上部下部で両方爆発すれば、殺傷力は相乗効果を伴って倍、いやそれ以上だ。そうなれば球場内で生き残れる確率はゼロパーセントだ。」

項志「観客全部が人質というわけか。」

亜輝「人質というよりも、奴らにしてみれば、このゲームを引き立たせるための演出といったところだろう。」

 警部は驚嘆した。

警部「これほど早く見つけ出すとは。」

 亜輝は瞬時に敵の目論見を見破ったのだ。

 項志「俺達は行かなくていいのか。」

亜輝「俺達は準備がある。」

項志「準備?」

亜輝「説明は後だ。これに着替えておけ。」

そう言ってユニフォームを取り出した。

項志「これは、今試合しているチームのユニフォームじゃないか。」

亜輝「だいたい次の展開はわかっている。」

そう言って、両チームのユニフォームに着替えた。

 亜輝「現場に戻るぞ。」

項志「わかった。」

 そして現場にたどり着いた。そして、処理班が手を持て余していると、

亜輝「ちょっと、見せてください。この型はTNB型の改造型、おそらく組織の中の技術者が改造したのだろう。」

警部「どうする、時間がないぞ。」

亜輝「大丈夫、おそらく改造部分はここか。」

そう言うと、中心部に内蔵してある歯車部分にあるネジを一つ外し、何本もあるリード線の内の一本を切断した。すると内蔵してある時計が止まった。


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