決意〈後編〉
竜馬「奴らのボスは人工知能だ。」
亜輝「何ですって。」
項志「人工知能だぁ。」
竜馬「問題は、その人工知能に使われているマイクロチップの記憶データだ。誰のDNAだと思う……」
亜輝・項志「……」
竜馬「昔、奴の部下で、こんな事を言った男がいる。人一人殺せば殺人犯だが、一万人殺した奴は英雄だと。」
亜輝「ま、まさか。」
項志「どうした亜輝、顔色を変えて。」
亜輝「項志、これから俺達が戦おうとしている相手は、とんでもない奴らかもしれん。」
項志「どういうことだ。」
亜輝「その男の名は、アドルフ・ヒットラー。人類史上最悪の男だ。」
項志「なにーヒットラーだと。」
亜輝「しかし、奴はもう死んでいるはず。」
竜馬「奴は生きている……というより、復活したと言った方がいいだろう。奴が自決した直後、奴の脳内の海馬が髄液ごと抜き取られていた。この部分は、人間の記憶をつかさどる器官で、奴の悪の根源が全てここに凝縮されている。その海馬と髄液を培養し、マイクロチップ化し、人工知能に注入した。」
ここまで聞いて、二人とも驚きを隠せなかったが、亜輝はこう質問した。
亜輝「なぜ人工知能なのですか。クローンという手もありますが。」
竜馬「クローン人間といっても、完全に奴の思考を写し取ることは出来ない。それに、時間的な問題もある。百パーセント奴の悪を伝達するには、この方法しかないのだ。アドルフ・ヒットラー、奴こそは史上最悪の極悪人だ。ホロコーストでのユダヤ人大量虐殺、隣国への無差別攻撃、どれをとっても人間がやった事とは思えん。悪魔の所業だ。それに奴は自害した時の屈辱で、以前にも増して、人間に対して憎悪の念を抱いている。ターゲットは全人類なのだ。どうだ、それでも戦い抜けるか。」
竜馬は彼らの真意が知りたかった。ゆえに全ての真実を話し、彼らの決意を確かめたかったのだ。
項志「まさか、ヒットラーとはねぇ、しかし、俺達も命がけだぜ。今更こんなんでビビルかってんだ。」
亜輝「誰が相手だろうと、考えを変える気はない。俺達は、両親の意思を継ぎ、人間の生命を守るために生きてゆく、なあ、項志。」
項志「おうよ、大きな悪ほど不足はないぜ。俺達が正義だ。」
竜馬「よく言った。お前達の思い、確かに受け取った。実は、お前達を戦いに巻き込んで良いものかと私も迷っていた。しかし、お前達の決意を聞いて安心した。最後にコスモスとドグマの今の状況を説明しておこう。この状況を見ればわかると思うが、コスモス日本支部は、ほぼ壊滅状態だ。復興できるかどうか、めどはたってはいない。しかも我々は、一年前にたか夫、のぶ江、つまりお前達の両親、そして多くの同志を失った。しかし、こちら側もサイバー攻撃で、一年の間奴らのブレイン、つまり人工知能の動きを封じた。しかし、それもタイムアップだ。あの悪魔のようなブレインがよみがえる。」
亜輝「それでは、この一年我々が標的にならなかったのは、父と母と同志のおかげだったのか、知らなかった。」
竜馬「そういうことだ。お前達の両親は、最後までお前達を戦いに巻き込みたくなかった。しかし、自分達の身に危険を感じた時、後をお前達に託すしかなかったのだ。」
項志「そうだったのか。俺達はこの一年、両親に守られてきたのか。」
竜馬「しかし、それももう終わる。奴がよみがえって来る。君達の真価が問われる時が来たのだ。」
項志「望むところだ。」
亜輝「ああ、奴を倒す。」
竜馬「人類の命運は君達の肩にかかっていると言っても過言ではない。頑張ってくれ。」
亜輝・項志「はい。」
彼らの瞳には一点の曇りもなかった。これから始まる戦いに一歩も退くまいという決意に満ちていた。
十郎太は、よくぞここまで成長したなと目に涙を浮かべて、彼らを送り出した。
竜馬「高岡君、彼らは本物だ。必ずや悪の軍団から人命を守ってくれるだろう。」
十郎太「はい、私もそう確信しました。」
竜馬「レスキューボーイズか、いい名だ。」