決意〈前編〉
二人は竜馬の所に向かった。
その場所というのがすごい所で、都内の一戸建て住宅なのだが、ボロボロで今にも崩れ落ちそうな感じの家なのである。
項志「おい、本当にここで間違いないのか。」
亜輝「この住所でいくと間違いない。」
項志「人が住める様には思えんが。」
亜輝「そうだな。」
その時、後ろに人の気配を感じた。
項志「誰だ。」
竜馬「俺だよ。」
亜輝・項志「あ、あなたは。」
竜馬「よく厳しい修行に耐えて帰って来たな。」
そう言って、二人の肩を叩いた。
二人は、その手の感覚に違和感を感じた。
亜輝「渡瀬さん、その手は。」
竜馬「わかってしまったか。こういう事だよ。」
そう言って、着ていたコートの前をはだけた。すると、頭部だけは人間の皮膚だが、あとはほとんど機械の上に、人口の皮膚を張り付けたものだった。
亜輝・項志「こ、これは。」
二人は驚いてしまった。
竜馬「あのテロの時、体のほとんどが吹き飛ばされてしまった。しかし、運良く頭だけは無傷だったようだ。その後、私の体は極秘の内、スイスの科学アカデミーに運ばれた。そして、そこでサイボーグとして生まれ変わったのだ。」
項志「しかし、普通の人間なら即死ですよ。」
竜馬「ああ、そうだな。しかし、私は生き残った。人の命をもて遊ぶテロを、絶対に許すわけにはいかない。」
亜輝「そうですか。悪に対するあなたの執念には驚くばかりです。」
項志「まったく、大した執念だぜ。俺も体力には自信があるが、渡瀬さんには負ける。」
竜馬「君達の両親は、気の毒だが、手の施しようがなかった。」
亜輝「いいえ、あなたが助かっただけでも良かった。両親も、あの世で喜んでいるに違いない。」
竜馬「ありがとう、まあ、中に入りたまえ。」
項志「中にって言ってもねぇ。」
竜馬「まあ、とにかく入れ、靴は脱がなくていい。」
項志「はあ。」
玄関から中に入ると、荒れ放題の部屋がいくつも続いていた。
亜輝「すごい有様ですね。」
竜馬「しばらくの間、留守にしていたのでね。」
そして、ある部屋の前に来ると立ち止まった。その部屋というのが、鉄の扉で出来たものだったのだが、その部屋の横には、手の窪みのような形があり、竜馬がその窪みに手を入れると、見事に一致して、その扉が動き始めた。
その中というのが、秘密基地と思わせる機材で満たされていたのだが、ほとんど破壊されていた。そして、三、四人の人が、機材の修理、調整を行っていた。
竜馬「もうそろそろ、お前達に話してもいい頃だと思って、ここに案内した。みんな、手を止めて集まってくれ。たか夫と、のぶ江の忘れ形見だ。」
亜輝「今の名は神龍亜輝といいます。」
項志「我皇項志です。」
その内の一人が近寄って来てこう言った。
十郎太「大きくなったのう、坊、覚えているか、わしじゃよ。」
そう言ってサングラスを外した。
亜輝・項志「おっちゃん。」
彼の名は、高岡十郎太。二人が幼い頃よく家に来ては、二人をかわいがってくれた。いつも家を留守にしていた両親に代わって、いろいろ面倒をみてくれていたのである。
十郎太「両親の葬儀には出れなかったが、わしは、テロ撲滅のために生涯を捧げる決意をした。」
亜輝「僕達もです。」
十郎太「ああ、わかっている。お前達が旅立ったと聞いて、俺も腹を決めた。」
亜輝「これからは、両親の意思を継ぎ、レスキューボーイズとして生きて行きます。」
あとの人も近寄って来て、
「まだ若いのに、大した決意だ。」
と、賛嘆した。
竜馬「これから、どうする。我々と合流するか。」
亜輝「いいえ、我々には、我々にしか出来ないことがあります。」
竜馬「そうか、何か困った事があれば連絡しなさい。」
亜輝「ありがとうございます。それと、お聞きしたい事があるのですが。」
竜馬「何だね。」
亜輝「ここに来る途中、何者かに襲われたのですが。」
竜馬「何、もうそこまで手が回っていたか。」
項志「亜輝は、国際テロリストの手下だと言っていたが。」
竜馬「奴らの名は『犯罪組織ドグマ』、全世界を股にかけて暗躍している組織だ。奴らの目的は、この世界を混沌に陥れることだ。奴らは武器、弾薬なども開発、製造もしている。それを諸外国に売りさばいて資金にしている。」
項志「どうやら悪事の限りを尽くしているらしないぁ。」
竜馬「奴らの心に愛はない。人々が争いあい、苦しむ姿を見るのが好きなのだ。君達を襲った奴らも、その一味だろう。日本にもその支部がある。ドグマジャパンの一員だろう。」
亜輝「ドグマジャパン。」
竜馬「我々は、そう呼んでいる。それに対抗して結成されたのが、我々の組織、『コスモス』なのだ。全世界に散らばっているコスモスの同志達も、その生涯を、犯罪組織ドグマとの戦いに捧げた者達なのだ。君達の両親も優秀なコスモスの一員だった。」
項志「そうだったのか、やっぱり、あのテロは、犯罪組織が絡んでいたのか。」
亜輝「渡瀬さんが説明してくれた事は、大体予想はしていましたが、一つだけわからないことがあります。奴らは何を基準にして攻撃目標を設定しているのでしょうか。一年前のテロはわかりますが、奴らにとって、あまり意味を持たない攻撃が多すぎます。奴らの真意を測りかねます。」
竜馬「奴らのターゲットは、我々ではないのだ。」
亜輝「どういうことですか。」
竜馬「というより、奴らに基準などないのだ。それを今から説明しよう。」