表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

作者: あまのうふ

 柿白は今日も何もせずに一日を過ごし終えようとしていた。そこに友人の浦田から電話がかかってきた。

「柿白か? 暇か?」

「暇に決まってるだろ? 仕事なにも無いんだぜ?」

「それは良かった。一緒に湖に行かないか?」

「湖? この街に湖なんてあったか?」

「あるさ。お前が知らないだけさ」

「それなら見に行ってもいいぞ。無職だから本当に何もすることがないんだ」

「おれも無職になったから気にするな。いくぞ」

「ああ……」


 二人は車で二十分ほどのところにある湖にたどりついた。

「本当にあるんだな。でもこれって湖というよりため池っていうんじゃないのか?」

「どっちでもいいさ。大差なんてないさ。人生と一緒だよ」

「人生と一緒?」

「そうさ。良い人生も悪い人生も大差はないのさ。死ねば一緒。人生に優劣なんてもんをつけるのは良くないことだよ」

「でも良い人生の方がいいよな。もう少しいい人生待ってると思ってたんだけどな俺も。若い頃は」

「みんなそうさ。でもいつか気がつくんだ。幸せになれる人は限られているということに。そしてその席はとても少ないということに」

「学校じゃ教えないよな」

「教えたらクレーム来るだろうに」

「そうだな。でも綺麗だな。釣り客もいるじゃないか」

 柿白は遠くを見ながらつぶやいた。

「そうだろ。悪く無いだろ。気分転換くらいにはなるだろ」

「気分転換にはね。現実はなにも変わらないけどな」

「そんなこと言うなよ」

 浦田が語気を強めて非難した。

「俺達も釣りでもするか?」

 柿白が提案した。

「道具がないだろ」

「買ってくればいい。千円くらいで棹売ってるだろ。餌はその辺の虫を獲ればいい」

「棹も落ちてるんじゃないか? 探してみようぜ」

 二人は茂みを歩き始めた。


「無いな」

 五分ほど探して柿白が匙を投げた。

「もうすこし探して見ようぜ。どうせ時間は有り余るほどあるんだ。死ぬまで探せば見つかるだろ?」

 浦田が提案した。

「それより飯を食いに行こうぜ。もういいよ。夕飯食いに行こうぜ」

「そうだな。夕飯にするか。飯はなににする?」

「うどんでいいんじゃないか?」

「焼肉でも食いにいこうぜ。まだ金はあるだろ?」

「あるけどな……そんなもの食べたい気分じゃないんだ」

 柿白が俯きながら言った。

「そうかじゃあうどんにするか」

「ああうどんにしようぜ。優劣なんて腹に入れば関係ないさ」

「そうだよな。俺の言ったことが分かってきたのか」

「少しだけね」

 柿白は微小を浮かべて浦田とうどん屋に向かった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ