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KICK OFF!!  作者: 時紐
新井川未、監督になる
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キャンプ


「みなさん、今日から沖縄キャンプです!そして新戦力との顔合わせでもあります!僕も新戦力?ですかね、新井川未です!みなさんとともにJ2戦線を駆け抜けたいと思っていますので、よろしく!

 そして、サッカーにおいては僕は何よりチームのため、そして自分のために戦える選手を優先したいです!挑戦の心を絶対に忘れないように、僕のチームに挑戦をしない選手などいりません!スタメンも固定するつもりはありませんので、みなさんアピールしてスタメンを奪おうと躍起になってください!」


 新井の『宣言』は沖縄キャンプ初日、グラウンドに集合した選手たちとコーチ陣を驚愕させるには十分な破壊的なものだった。

 この宣言のあとは、新戦力の簡単な自己紹介。新しく入ってきた別メニューの重波以外の5人の選手が新井の隣に並んだ。


「紀則翔です。柏からきました。スタメンに定着するつもりできたので、よろしくお願いします」


「颯。アンドロフです!!憧れていたみなさん、特に岩城選手とサッカーできることになって嬉しいです!よろしくお願いします!」


「結木太一です、プロの世界の速さに負けない選手になりたいです!よろしくお願いします!」


「雅佑介でーす、みんなお久!俺がいなくて寂しかったー?1年、イングランド2部で見た欧州の本気をみんなに見せるよ!今年は優勝目指そう!」


「ヴァレッドです!ヨロシク!スピードが武器です!」



 本当に簡潔な自己紹介はすぐに終わり、練習が始まった。

「久しぶりですね、新井監督。横浜時代以来ですな!」

 ランニングに参加していた新井に話しかけてきたのは、伊勢の主将・岩城だった。横浜時代には対戦経験のある新井よりも1つ年上の彼が敬語で話したのは、やはり監督だからなのか。

「岩城さん、敬語なんてやめてください!僕の方が年下ですし!」

「いえいえ、相手は監督だ、俺も敬語を使いますよ」

「ははは、僕があなたの監督だなんて…教わることの方が多いですよ」

「監督のサッカーには期待してます、ほとんど同期みたいなもんですし、なんでも協力しますよ!」

「ありがたいです!頼りにしてますよ、キャプテン!」

 新井政権下でも、この男がキャプテンを務めるようだ。


『HEY、ヴァレッド、だっけか?ポルトガル語、俺できてるか?』

 流暢なポルトガル語でヴァレッドに話しかけたのは、フランス産のモンスター、ブリジェヌ。彼はにこやかな笑顔で話しかけていた。

『あぁ、完璧だぜ、モンスター!ブリジェヌだよな?フレンチなのにポルトガル語もできるのか』

『フン、まぁな。ここは良いとこだぜ、まぁアンタは俺よりコミュニケーションとれそうだがな』

『ポルトガル語なら通訳してやるよ!』

『ありがたいな。ま、よろしくな、ヴァレッド!』

『おう!ブリジェヌ!』

 ブラジルとフランスの友情が生まれた時だった。


「久しぶりだねぇ!鬼柳!元気してたー!?」

「…相変わらず、ウルセェな、お前」

 満面の笑みを携え、仏頂面の鬼柳に話しかけたのは、熱血漢・雅。彼は久しぶりの伊勢の選手たちに浮かれているようで、ランニングの最中に色々な懐かしい面々に話しかけていた。

「相変わらず冷たいね!冷気が顔にビンビンくるよ!鬼柳!」

「お前は熱い、暑苦しい、近い!」

「つれないなぁ、昨季はすこぶる調子が悪かったようだね!」

 その言葉に、鬼柳はドキッとした。仏頂面を少し崩し、露骨に嫌な顔をした。

「くそが、デリカシーを覚えろ、今年こそやってやるってんだ、そんでGOトゥヨーロッパだ、バカヤロウ!」

「いいね、君も僕と一緒に日本代表目指してよ!」

「うぜぇ!」

 はしゃぐ雅と、イラつく鬼柳。その2人の顔は、どことなく嬉しそうだった。性格は正反対だが、入団も同時期で年もポジションも近い2人は、何かあうものがあるのだろう。




 軽い練習が終わり、シュート練習を見ていた新井にヘッドコーチの南田(みなみだ)が質問した。

「新井さん、この練習は彼らの何を見てるんですか?」

「シュート技術と、その精度です。そして流れの中で点が取れるかどうか。そこですかねー」

 この南田、年齢は47で新井よりも年上であり、新井にとっては選手としても先輩であった。現役時代は名サイドバックとして地域を転々と移籍を続けた旅人で、選手の移籍関連の相談を受けることが多い。

「ほほぉ、それを見終わったら何を?」

「もう終わりますよ、そしてすぐに紅白戦です!」

「え、ええっ!?もうですか!?」

「僕はこのチームについて知らなすぎます。選手層も薄いですしね、一回は見ておきたいのですよ。

 みなさん!集合してください!」

 新井が手をあげて、大声を出す横で南田は口をあけて驚くのであった…。このコーチの驚愕の日々はここから始まった。

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