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別の枝に移りし者  作者: 冷たい風
少年は枝を移った
2/3

森の楽園

俺はどうかしてしまったんだろうか?

あるいは白昼夢を見ているのだろうか?


本当に一瞬の事だった。

瞬き一回位の時間で、コンクリートの道路と住宅という典型的な住宅街の風景から一転し、緑で生い茂った木々と草に辺り一面が覆われていた。

木々は乱雑に生えていて、その高さは一本一本が頂点が見えないほどであり、あたりは薄暗い。

草も俺の腰位まで伸びていて、そこに人の手が加わっていないことは明白であった。

そのような風景の中、手に人工物のビニール袋を下げ立ち尽くしている俺の姿はどこか滑稽に感じられた。


森は不気味なほど静まりかえっており、人どころか獣一匹すらいないのではないのかと思われるほどだ。


俺は誰か人がいるのではないかという淡い期待を抱きつつ、ひとまず歩き出すことにした。


「誰かいませんか~!」


森には、俺の声と草を掻き分ける音だけが響いている。

静まりかえった森には似つかわしくないほどの音であるのに、それに反応するものは何もない。


俺は少し寂しくなり、ひとまず人を探すのを諦め、寂しさを吹き飛ばすために鼻歌を歌いつつ直進することにした。

直進してれば、そのうち森を抜けることが出来るだろうという考えがあった。




§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§




「~~♪~~~~♪ ・・・・・・はぁ。」


六曲ほど森に鼻歌を提供した頃には、俺は慣れない道を歩き続けせいか、すでに足取りは重くなっていた。

なかなか森を抜けられないのと、夕飯前だったのもその事に拍車をかけているのだろう。

俺はとりあえずその場で休憩することにした。


自分の周りの草の根元を踏みつけ簡単なスペースを作り、そこに腰を下ろした。


(・・・休憩がてら、一度所持品の確認をしよう。)


この調子だと野宿を考えなければならないかもしれない。

昔、何回か野宿は経験した。

その経験から、自分なりに野宿には欠かせないことを弾き出した。


まず、ある程度の開けたスペース。

こうも草に囲まれていると、蛇に近づかれても気付けない。

一度噛まれたが、非常に痛かった記憶がある。

青大将だったおかげで、痛いだけで済んだのだが・・・。


次にある程度大きい火だ。

火があると虫は火に飛び込むから虫除けになるし、なにより辺りを明るく照らしてくれて、安心感を与えてくれる。


そして水。

人は水をのまないとすぐに体調をくずす。

食事とは違い、1日として欠かすことは出来ない。


この3つは絶対に欠かすことは出来ないと思う。


そして、これらの次点に食事や睡眠を置くべきだろう。



さて、所持品の確認をしよう。

まず、俺の服装だ。

黒のTシャツに薄い青のシャツを羽織っている。

下はジーンズだ。

夜冷え込むとしたら、少し寒いかもしれない。

やはり、火は焚かなくてはいけないだろう。


ズボンには、黒い皮財布が入っている。

紙幣はなく、カードが数枚と硬貨が・・・896円入っているようだ。

加えて、ライター・ハンカチも入っていた。


次にビニール袋の中を確認しよう。

醤油が一瓶。

豚肉ロースが一パック。

ピーマン2個。

大根一本。

リンゴ3つ。

以上だ。


うん、かなりヤバイな。

飲み物がないのが痛い。

リンゴと大根には水分があるとはいっても、明らかに足りない。

脱水症状が出てからでは遅いのだ。

早急に水を探す必要がある。


俺は水を求めて川や水溜まりを探すことにした。

なかなか人が見つからず森を抜け出せない以上、

生き抜く事を優先すべきだろう。

生きていれば、そのうち必ず良い事がある。

俺はそれを短い人生で実感したのだ。





§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§



休憩を終えた俺は水を求めて歩き出した。

といっても、水がどこにあるかは分からないので、

先ほどの続きを歩くだけである。

しかし、体力を少しでも温存するために声は出さない。


・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・いったいどれ程歩いたのだろうか。

相変わらず水は見付からず、生き物の気配はしなかった。

しかし草丈はますます高くなり、俺が埋もれてしまうほどだった。

そして、薄暗かった森は漆黒に染まりつつあった。

完全に真っ暗になってしまう前に野宿の準備をしなくてはいけないだろう。


(今日はもう無理か・・・。明日また歩くしかないのか・・・。)


今日のうちに水が見付からなかったのは痛手だ。

しかし、焦っても仕方がない。

希望は最後まで持つべきなのだ。







そう思っていた時だった。


(あれは光か!?もしかして人がいるのか?)


一際高い草を掻き分けると、草の隙間から僅かに、淡い光が見えた。

こうまで暗くなってしまった状況では、

俺はその光が太陽や月とは思えなかったのだ。


俺は疲れを忘れ、一目散に光へと走り出した。

一歩一歩進むたびに光は強くなり、そして草が薄くなってきた。


そしてついに俺は最後の草を掻き分け・・・

・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・楽園を見つけた。


そこは楽園としか言い表せない場所だった。

まず目の前には、今まで必死に探し求めていた水があった。

家を数百建てることができるであろうほどの広さでだ。

しかも、その水は今まで見たことがないほど澄んでおり、底を容易に見ることができた。

その水は

波一つ無く、

音一つ起てる事無く、

本当に水なのかと疑うほどであった。

一掬い水を飲んでみた。

美味いとしか表現が出来ず、腹の中でその水がいつまでも残っている気がした。


その水の中央には、いままでいた森の木々が小さく見えるほどの大樹が強い存在感を放っていた。


水面にはハスのような葉が所々浮いていた。

その葉の少し上には、光の玉が空中に佇んでおり、一つ一つが辺りを淡く照らしていた。

その光景は、理解が及ぶようなものではなく、幻想的で神々しかった。

俺はしばらくその光景をただ見つめることしか出来なかった。


しばらくして、その美しい光景から目を無理矢理放し、水の周辺を見た。

そこには、ありとあらゆる見たことのない花や木々があった。

銀の光を放つタンポポのようなもの。

空に浮き、重力がないかのように振る舞う大きなカモミールのような花。

幹が異常に太く、そして丈が非常に低い木。

そこには、白・黒・青・赤など様々な色をした綺麗な玉のような実が無数に生っている。

恐る恐る近づき、その実には毒があるかもしれないのに、そんな考えが浮かばず、一つ橙色の実をもぎ取り、一かじりした。

とても甘く、果汁たっぷりでおいしかった。

今まで食べてきたものが霞んでしまうほどだった。

心なしか、身体の疲労が取れた気もしてくる。

夢中になってそれを食べ、他の実も食べていく。

どれもおいしく、食べるたびに身体に力が湧いてきた。








俺はこの楽園に辿り着けたことを感謝し、そこを拠点にさせてもらい、森を散策していくことにした・・・。



情景描写って、難しいですね・・・。

しかも短いし・・・。

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