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別の枝に移りし者  作者: 冷たい風
少年は枝を移った
1/3

プロローグ

人生には無数の分かれ道がある。


この世に生を受けるか否か...。


男か女か...。


過去に、己の意思で選ぶことの出来ぬものであろうが、出来るものであろうが、そうした選択を幾度も繰り返した結果が今である。


そして我々が生きているこの世界でさえ、無数にあった別れ道を一つ一つ辿ってきた結果生まれたものである。


重力が存在しない可能性があった...。

空気が存在しない可能性もあった...。


地球には大地のみが存在し、水に関わるものが存在しなかったかもしれない...。

それとは逆に、水に全てを覆われていたかもしれない...。


生物が存在しなかったら?

人がいなかったら?


そして、今我々が足を下ろしている地球がそもそも生まれなかったならば、世界はどういったものであったのだろうか...。








今、こうして存在している世界があるということは、選ばれなかった道があるということでもある。


しかし、本当に選ばれなかったのだろうか?

その道は閉ざされて、潰れてしまったのだろうか?


もしかしたら、別の選択を選び、そして成った世界が数多に存在するのではないだろうか?


そして、それらの世界は我々が気づかないだけで、すぐそばに存在しているのではないのだろうか?












世界は無数に存在すると誰かが言った。


我々はその無数の内の一つに生きる存在にすぎないと...。


無数の枝分かれを経た細い枝の先に生きているのだと...。







幾度も枝分かれを繰り返した先の枝同士に、隙間は殆ど存在しない。

ちょっとした風でくっついてしまうほどに...。







§§§§§§§§§§§§§§







見渡す限り、全ては赤く染まっていた。


そして、俺の目の前には小さな子供が呆然と立っていた。

その瞳は前を見ているようで、何も映していないようにも思えた。


(あぁ、またこの夢か・・・。)


視点は、子供が見ているものへと移った。

そこには、赤い塊が二つあった。


(これで何回目なんだろうな・・・。)


一つは頭が無く、皮を全て剥がされた"ひと"の形をした何かであった。

そして、もう一つは身体のパーツが、顔を除いて、バラバラに分解されていた。

その顔は、少年の......俺、葛ノ葉枝葉の最愛の母のものであった・・・。













§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§


(眩しい・・・!)


目を覚ますと、先ほどまで悪夢を見ていたとは思えないほどの陽気な日の光が差し込んでいた。


俺の気持ちを無視した天気に恨めしさが少し芽生えたが、陰鬱な気分を払ってくれるかもしれないと考え、すぐにその気持ちを消した。


俺は、ベッドから陰鬱な気分を引きずったまま起き上がり、挨拶をした。


「おはよう。父さん、母さん。」


その返答はなかった。

あるはずがなかった。

俺は、10年前の7歳の時に両親を失い、一人暮らしをしているのだから・・・。






§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§





あの日、俺は両親を失い、親戚の人に引き取られた。

その頃の事はあまり記憶にないが、その人は俺を気遣い、

優しくしてくれていたことは漠然と覚えていた。


初めのうちだけであったが・・・。


ある日を境に態度は一変し、俺の事を辛辣に扱い始めた。

恐らく両親の遺産をもらい、俺を気遣う必要がなくなったのだろう。


食事はまともに食べさせて貰えず、風呂にもろくに入れなかった。

そのせいで俺はいじめを受け、心休まる時は無く、その日その日を生き抜くのに必死だった。


中学生を卒業した時、俺は金を持ち出し家を出た。


高校は親戚の家から遠い場所を選び、寮を借りることにした。


そして、今にいたる。




今こうして考えると、皮肉にも親戚の辛辣な態度によって生きるのに必死になったおかげで、俺はあの日のことを意識の片隅に追いやることができ、気が狂わずにすんだのだろう。

さらに、ひどい環境で育ったためか、精神的にタフになった。


寮生活を始めてしばらく、高校が心休まる場所になった頃、あの日を夢に見るようになった。


今では慣れてしまったが、初めて見た時は気が狂いそうだった。

過去に起こった事なのだと、最初は受け止められなかった。



俺はあの日の事を、高校へ入学してから1年半かけようやく現実として認めた。


しかし、今でも考えずにはいられない。


あの日がなかったら、俺は両親と幸せに生きていたのではないかと・・・。








§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§







授業を終え帰宅した後、俺は夕飯の材料を買いに出かけた。


「よし!足りないものはないなっと!」


今朝とは違い、陰鬱な気分はすっかり消えていた。


仲の良い友人達とじゃれあっているうちに、いつの間にか消えたのだ。


「やっぱり、友達って良いよな~。仲の良いやつがいるだけでこんなに楽しくなれるなんて、昔じゃ考えられなかったよ。あいつらのおかげで笑えるようになったしな!」


あらためて、友人の有り難さを声に出して噛みしめつつ、道を歩いていた時の事だった。


一瞬視界が歪んだと思ったら、周りが森になっていた。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・はぁっ!?」
















俺は何が起こったのかがまるっきり理解出来なかった。







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