Encounter with a father
いちばん教会でクライヴと騒いでいると、一人の神父が2人の元にやって来た。
見たところ、どこの教会にもいそうな紳士だった。
歳は・・・40代だろうか。
「やぁ、坊やたち。よく来たね。お祈りしに来たのかい?」
その神父は微笑み、様子を伺う。
「ぼ、坊やじゃねぇ!」
ジェンが顔を赤くして紳士を睨みつけた。
子ども扱いされるのは嫌いだ。
自分だって一人で生きられる。大人の助けなど要らない。
クライヴはいつも通りのジェンに小さく溜息を漏らした。
「おやおや、すまないね。坊やじゃなかった。・・・名前は何というのか い?」
「何で知らないオッサンに名乗らないといけないんだよ?」
ジェンは神父から視線を逸らし出口に向かって歩き出した。
神父は苦笑しジェンの後姿を追った。
「おい!ジェン!」
慌ててジェンを留まらそうと声を上げた。
「すみません、神父さん。失礼しました!」
クライブは神父に深々とお辞儀をし、ジェンを追った。
教会を出ると太陽の光が眩しく、おもわず手で目を覆った。
すぐに目は慣れ、開かれた視野でジェンを探す。
大通りには人があふれ返っていて、なかなか見つけられない。
人と人の間を縫う様にして進む。
「何処に行ったんだよ、もう」
ジェンは人ごみが嫌いだ。きっと、避けて行ったに違いない。
辺りを見回し、人が少ない方向へ向かって進む。
すると、建物の壁に背中を預けながらしゃがみ込むジェンの姿が見えた。
慌てて駆け寄る。
「どうしたの?急にキレちゃって」
クライブもしゃがみ、ジェンの顔を覗き込んだ。
ジェンはクライヴに顔を見られまいと、顔を膝に埋めた。
「・・・泣いてるの?」
ジェンの肩に手を乗せる。
「帰る」
クライヴの手を払い、自分の唯一の居場所へと歩き出す。
それは今まで差し伸べられてきた手を払うかのように。
クライヴは、もう後を追わなかった。
涙の理由を彼は知らない。
施設に戻ったジェンは周りの視線なんて気にも留めずに、自分の部屋に入った。
自分の部屋といっても、5人部屋だ。
ここが唯一の彼の居場所。
ここにしか帰ることが出来ない現実に腹が立った。
もう一度、あの日々に戻りたい。
優しかった父と母と・・・。
「ふっざけんなよ!・・・大人なんてもう、信じねぇ」
同じ部屋にいた数人がジェンの声に驚き、部屋を出て行った。
その様子を見てジェンは目を閉じた。
その夜、妙な夢を見た。
ジェンは寂れた大きな建物の中にいた。
様々な巨大な機械が置いてあり、うかつに触ると危なさそうだ。
出口を探そうと歩みを進めるが見当たらない。
すると、黒い靄が突然、辺りを覆ってくる。
抜け出そうと試みるが、あえなく視界が闇に染まる。
「何だ?」
・・・何かが聞こえる。話し声だ。
何て言ってるんだ?良く聞こえない。
ん?話し声じゃない。俺に向かって喋ってる。
「ずっと・・・待ってたよ」