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風も静まった夜に、屋根から屋根へと、宙を斬るように飛んでいく。
かすかに風の音が伝わってくる。
ある路地に着地した。
「此処等なんだが・・・」
あたりを見渡しても人気がない。場所を間違えたかと思ったが、どうやら此処が正しいようだ。
「みぃつけた!」
勢いよく走り出すと、数少ない工場の窓の中に1つの黒い点が見える。
それは何か大きなものに囲まれていて、よく見えなかったが、あれは人だった。
音もなく忍び寄る。本人は忍んでいる気ではないんだが。
「・・・第7地区脱獄犯NO.16862確認」
脱獄犯は、とある工場跡地で発見した。
複雑に入り組んだ工場の中を巨大な機械に囲まれて身を縮めている。
迫る恐怖におびえていた。
「畜生・・・何で俺がこんな事・・・」
順風満帆、計画通りに進んでいるな、と鼻を鳴らし、寂れた工場の中に入るった。
此処は来飽きている。地図が頭に入っているくらい。
脱獄者は脱獄後よく此処で身を潜める。
何故かは彼らにしか分からない。
まぁ、こっちからしたら好都合だ。
「勝手に死んでてくれるなよー」
ため息混じりにつぶやいた。
足音が近づいてくる。
もう逃げ道は無かった。
「も、もう・・・終わりだぁ!」
固く目を瞑り、背中を丸めた。
鼻水をすすりながら来るべき人を待つ。
大きくなっていた足音が止まった。
「おい、お前」
絶望に打ちひしがれている脱獄犯の前に立つ。
返事は無い。
「死んでねぇだろうな?」
敢えて言う。
ある種の嫌味のような言葉だ。
「・・・フゥ、立てよ?」
鋭い眼光で見下ろす。
しかし、立とうとしない。
「お前の家に帰るぞ」
「・・・嫌だ!何が家だ畜生!!」
ガッと顔を上げ、睨み返す。
それを見て嗤う。
「お前ら犯罪者はムショ以外帰る所なんざねぇんだよ」
その眼には感情がなかった。