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SCUM〜敗者たちの讃美歌〜  作者: 灰谷 An
第1章・兵庫県統一 編
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008:親子盃

008:親子盃

 天翔会の事務所にやって来た敬次は、来て早々に親子盃を交わすべく会長室に入る。

 客用に用意してあるソファに敬次たちは座り、天翔会の若い衆が日本酒と盃を用意した。

 見届け人は平手若頭が務める。

 日本酒が注がれた盃に、天馬会長が一口飲む。

 そしてそれを敬次の前に持って行き「頂戴いたします」と宣言をしてから三口半で飲み干し懐にしまう。

 親子が成立したところで拍手をして終わりである。



「よし! これで敬次は正式に、ウチの組員や。しっかりと働いて貰うどぉ〜」


「はい! それはもちろんです。その……いきなりなんですが、オヤジに頼みたい事がありまして」


「わしに頼みたい事? 別にええけど、どんな事や?」


「2日前に林一家の事務所で揉めましたよね? その時に人質になっていた円ってのを覚えてますか? ボコボコにされて病院に運んで貰った」


「あぁあの子ぉか! その子ぉ、どうかしたのか?」



 親子盃が成立した事で、敬次は正式に天翔会の組員となったのである。

 しっかりと働いて貰うと天馬会長は笑った。

 その上で敬次は言いづらそうに、頼みたい事があるのだと天馬会長に持ちかけた。

 敬次は円の事を覚えているかと聞く。

 どうやらボコボコにされていたのを見ているので、円の事を天馬会長は覚えていたらしい。

 しかしそんな子を持ち出して、どうしたのかと聞く。



「そいつにもオヤジの盃を降ろして貰えませんか! この通りです、お願いします!」


「おい、敬次っ! オヤジの盃は、そんな軽うあらへんのやぞ! ポイポイと盃なんて降ろせるか!」


「それは百も承知の上です! その円って奴は、昔からの連れで決心したらしく引く気が無いんです!」


「そやからって、誰某構わず盃を降ろしとったらしゃあないやろ! そう簡単に貰えあらへんのが親子の盃ってもんだ!」



 敬次は円にも盃を降ろして欲しいと頼んだ。

 すると天馬会長が反応するよりも先に平手若頭が、そんな簡単にオヤジの盃を降ろせるわけないだろと叫ぶ。

 しかしそれは承知で敬次は土下座をして頼み込む。

 その真剣さを見た平手若頭は、ストンッと椅子に座ってそれでも簡単に貰えるわけ無いだろうと促した。

 俺はダメかと悔しがる。



「平手の言う通りや、そう簡単に親子盃を交わすわけにはいかん。わしが盃を降ろすんは気に入った人間にだけや」


「はい……無理を言って申し訳ありませんでした」


「そいでも! どないしても盃が欲しいって、その円っちゅうんが言うんやったら……われのを降ろしちゃれや。ほったら認めちゃってもええど」


「え!? 俺のだったら良いんですか?」


「わしが認めた男が認めた男やったら、少なくとも見どころがあるって事やろ? わしの盃を降ろすわけにはいかんが、われが盃を降ろすっちゅうなら組員として認めちゃる」


「ありがとうございます!」



 天馬会長は平手若頭が言った事を支持し、自分が認めた人間にしか盃は降ろさないと宣言した。

 もう無理だと敬次は諦めて謝罪をする。

 しかし諦めた瞬間、天馬会長は円がどうしても盃が欲しいと言うのなら敬次が盃を降ろせと言った。

 敬次は思わず「え!?」と顔を上げる。

 どうしてなのかと思ったら、天馬会長は敬次の事を気に入って盃を降ろしたのだ。

 ならばその敬次が気に入った人間なら、それなりに見どころがあるだろうと考えたのだ。

 だから敬次が盃を降ろせば、円を組員として認めると言ってくださったのである。

 また敬次は頭を地面に着けて感謝を伝えた。



「それでこれからの敬次の役割についてなんやけどな」


「はい! ヒットマンでも何でもやらせてください!」


「おいおい、そう簡単にヒットマンなんて飛ばしとったらしゃあないやろ? われはおもろいな」


「ははは、そうですね」



 話が落ち着いたところで天馬会長は、敬次の役割について説明する。

 敬次はヒットマンでも何でもやると宣言した。

 しかし天馬会長は笑いながら、そんな簡単に飛ばしてたら地獄だろとツッコミを入れる。

 それに敬次と平手若頭は笑って和やかな雰囲気になる。



「敬次は運転免許を持っとーか?」


「運転免許ですか? 来月で18なんで、まだ持ってません……ですが昔から無免許で運転したりしてたので、免許を持ってる人と遜色なく運転できますよ。何なら普通の人間よりも上手い自信はあります」


「そうか、まだ運転免許を持っとらんか……ほなこれを用意してーて良かった!」


「これは何ですか?」


「偽造した運転免許や。これから敬次には、わしの組長付き兼運転手として修行して貰う」



 天馬会長は敬次に、運転免許を持っているかと聞いた。

 しかし敬次はまだ17歳で、来月にやっと18歳になる為、まだ免許が取れていなかった。

 するとそれを聞いた天馬会長は懐から何かを取り出す。

 これは何かと敬次は出したものに顔を近づける。

 テーブルに置かれたのは、天馬会長が特注で用意したという偽造の運転免許証だ。

 敬次の役職が決まった。

 組長付きの運転手からのスタートである。

 普通の組員とは違って、最初から組長付きと運転手という役職を貰った。

 これはかなり期待してくれている証拠だ。



「とりあえず、その格好で横に立って欲しないな」


「す すみません! ど どうしたら良いでしょうか?」


「まずは敬次専用のスーツを作りに行くど。わしらが贔屓にしとー専門屋があるからな」


「はい! よろしくお願いします! 直ぐに車を回して来ます……って車は、どちらに?」


「ほれ! この鍵を持って、裏の駐車場に行きなはれ」



 役職も決まったところで、天馬会長は敬次の服装を見て横に立って欲しくないと言った。

 直ぐに謝ったが、どうしたら良いのかと困惑する。

 ニコッと天馬会長は笑って、敬次専用のスーツを作りに行くと言ってくれた。

 そして早速、敬次の運転手としての初仕事だ。

 平手若頭から鍵を貰って、事務所の裏にある駐車場に走っていくのである。

 そこに止まっていたのは高級車だった。

 さすがに高級車は運転した事が無いので、緊張しながら乗り込んでエンジンをかける。

 そして天馬会長が待っている事務所の入り口に向かう。



「お待たせしました!」


「敬次、車を回して来たら直ぐに車から降りるんや。ほて親分が乗る後部座席の扉を開けるんや」


「あっ! はい!」



 敬次は天馬会長がいうように、車から降りると天馬会長が乗る方の扉を開けて乗り込むまで待つ。

 そして乗ったのを確認したら優しく閉める。

 それから運転席に戻って運転を開始する。



「それで目的地は、どこでしょうか?」


「みさき通り商店街に向かってや。そこにわしらが贔屓にしとー仕立て屋があるからな」


「みさき通り商店街ですね? 承知しました、最速で向かいますので!」


「安全運転しろよ、お巡りは少しでも難癖付けて逮捕しようとするからな。そうなったらそう簡単に出て来られへん」


「分かりました! 安全運転で向かわせて頂きます!」



 親分を乗せているので、敬次は直ぐに目的地に着くようにしようとした。

 だが天馬会長は安全運転するように教える。

 それは警察がヤクザが運転している車に、難癖を付けて逮捕しようとするからだ。

 そうさせないように安全運転が必要である。

 理屈を聞いて確かにと思った敬次は、安全運転で向かわせて貰うと車を発進させた。

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