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SCUM〜敗者たちの讃美歌〜  作者: 灰谷 An
第1章・兵庫県統一 編
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007:天翔会

007:天翔会

 敬次と円の出会いは、敬次が東京から兵庫に引っ越して来た1年後である。

 その時の2人は小学6年生だ。

 当時の敬次は両親と離れて過ごす事で、やさぐれており友達と呼べる人間は皆無だった。

 何なら喧嘩をするくらいだ。

 そんな時に円は太っており、イジメと言っても良いレベルのイジリをされており孤立していた。



「おい! 俺の前で胸糞悪い事やってんじゃねぇよ!」


「な なんや! 敬次には関係あらへんやろ!」


「あるわ! 泣いてる人間に追い討ちかけるような事をして、人間のクズだって思わねぇのかよ!」



 その日は敬次の虫の居所が悪かったのだろう。

 イジメをしている同級生たちに、そんなことを止めるんだと言って止めに入った。

 まぁ助けようと思ったわけでは無い。

 ただムシャクシャしていただけなんだろう。

 絡まれた同級生は、敬次を怖いと思っていたが、いきなり止められたので引く事なく突っかかって来た。

 これに敬次はイラッとしたのだ。



「喧嘩するってんなら相手になるぞ?」



 小学生ながらに喧嘩は、やる気満々である。

 これには同級生たちは「本気になってカッコ悪い!」と言って、その場から立ち去って行く。

 いじめっ子たちの背中に向かって敬次は「け!」と唾を吐いて、とてつもなくダサいと思ったのだ。

 とりあえず解決したので、敬次は立ち去ろうとする。

 その瞬間、イジメられていた円が敬次に「ちょっと待って!」と呼び止める。



「助けてくれてありがとう……」

 

「別に助けたわけじゃねぇよ。それとお前もやり返さないから、アイツらが調子に乗るんだぞ!」



 円は敬次に感謝を伝えた。

 まだ敬次の虫の居所が悪く、今度は円にやり返さないのが悪いと指摘するのである。

 これに円は「えへへへ」と苦笑いをするだけだった。

 円の態度に敬次は、またイラッとして舌打ちをしてから離れようとする。

 しかしまた円が「敬次くん!」と名前を呼ぶ。

 まだ用事があるのかと敬次は振り返って「はぁ!」と睨もうとするのだ。



「僕もお父さんと、お母さん居ないんだぁ!」


「え? お前も?」



 円は自分も両親がおらず、施設で生活をしているのだと敬次に打ち明ける。

 まさか自分と同じ人間が居るとは思わなかった。

 もちろん祖母の家で暮らしている分、自分の方が恵まれているかもしれないとも敬次は分かっている。

 その上で、こんな共通点があるとは想定外だ。

 この暴露から敬次と円の友達としての距離が近づいて、親友になって行くのである。


 そんな円が敬次に、自分もヤクザになりたいから天馬に話して欲しいと言って来たのだ。

 同じような境遇で、今日まで親しくして来た。

 親友の願いはできる限りは叶えてやりたいが、これに関しては自分自身で決められる事じゃないと考えている。

 だから玄関で土下座をしている円に居た堪れなくなる。

 このまま無理だと言っても、いつまでも食い下がるのは長い付き合いで理解している。

 もうこうなったら良い結果になるまで食い下がる。

 円とは、そういう男なのだ。



「分かったよ、親分に話だけはしてみるよ……それでも親分が無理だと言ったら、そん時は諦めてくれよ?」


「あぁそうなったら天馬親分の盃は諦めるよ!」


「その含みがあるような言い草は何だよ? 親分から貰えなかったら、何かしようとしてるだろ?」


「もし親分から貰えなかったら、敬次の盃をくれないか? もちろん五分の兄弟とかじゃなく、舎弟や子分で!」


「お前を舎弟や子分に? そんな事できるわけねぇよ……」



 どうなるかは分からないが、とりあえず天馬に話だけは伝えてみると話した。

 これで無理だと言われたら諦めるように促す。

 しかし円は敬次にそうなったら天馬の盃「は」諦めると含みのあるような言い方をした。

 直ぐに気がついた敬次は、何かを企んでいるなと聞く。

 円は天馬の盃が貰えなければ、敬次の盃を貰おうと考えていたのである。

 その際は舎弟や子分の盃だと付け足した。

 親友を舎弟や子分にするのは、どうにも敬次的には居た堪れなくて嫌だと答えた。

 とりあえずは天馬に話を通してからだ。


 そして遂に敬次が、天馬の事務所に向かう日が訪れる。

 自分の持っている服の中で綺麗で上等な服に身を包み、身だしなみには気を使う。

 時間を確認してスマホで天馬の事務所の場所を調べる。

 尾田組の組長代理をやりながら天馬自身も〈天翔(てんしょう)会〉という団体の会長をしている。

 その天翔会の事務所の場所を調べると、10分前に到着するように家を出発する。

 さすがに緊張して、勝手に早足になっていた。

 想定していたよりも早く事務所の前に到着し、時間を確認したら約束している9時よりも20分も前だった。



「いや遅刻するのは論外だけど、早く来すぎるのもダメなんじゃないか? それならここら辺を10分くらいプラプラして時間を潰すか……」



 大切な用事に遅刻するのは論外だが、早く着きすぎるのも失礼なんじゃないかと敬次はアタフタする。

 そうなれば10分くらいプラプラしてから、約束の10分前に戻るようにしようと決めた。

 事務所の扉に背を向けるようにクルッと回転した。

 すると目の前に白髪のコワモテお爺ちゃんがいた。

 瞬時に敬次は理解する。

 俺の目の前にいるコワモテお爺ちゃんは、明らかにカタギでは無いと悟った。

 悟った瞬間、敬次は深々と頭を下げていた。



「お疲れ様です!」


「われ……オヤジが言いよった、今日からの新入りやな?」


「は はい! 本日より天翔会に加入させていただく運びとなりました、花岡と申します!」


「おぉ約束の時間よりも、こんなに早う来るとは大したもんや。場合によっては失礼になるけど、そいでもうちのオヤジは、そういう奴が好きやぞ」



 どうやら敬次の考えが当たっていたらしく、このコワモテお爺ちゃんは天翔会の人間らしい。

 直ぐに挨拶をするとコワモテお爺ちゃんは、こんなに早く来るのは大したものだと褒めてくれた。

 こういう礼儀がしっかりしてる人間を、天馬は好きだと敬次に教えるのである。



「まぁオヤジの方が、誰よりも礼儀がなってあらへんけどな」


「確かに型破りって感じですね……」


「われ、分かっとーやんけ。こんなにヨボヨボやけど、わしは天翔会で若頭をしとー《平手 清政》だ」


「よろしくお願いします!」



 コワモテお爺ちゃんである平手は、年齢に合わず天馬の下で若頭をやっているらしい。

 この会のNo.2だと分かり、敬次は直ぐに腰を低くする。

 平手に嫌われれば、それこそ天翔会での生活が地獄になるのは間違いないだろう。

 とりあえずペコペコしておく。

 見どころがあると思われた敬次は、平手と握手をしてから「中に入ろか」と事務所の中に案内して貰う。



「オヤジ、花岡くんが来たましたど」


「おぉこんなに早う来るとは関心やな。ごっつい気合が入っとーみたいやな」


「はい! 本日よりよろしくお願いします!」


「おう! 早速、親子盃を交わそか」



 会長の席に座っていた天馬は立ち上がって、敬次のところに歩み寄る。

 敬次は深々と頭を下げて挨拶をした。

 今日から天翔会の組員だからである。

 親には礼儀正しくしなければいけない。

 そして天馬は来て早々だが、親子盃を交わそうと敬次の方に手を回して言うのである。

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