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SCUM〜敗者たちの讃美歌〜  作者: 灰谷 An
第1章・兵庫県統一 編
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003:林一家

003:林一家

 いきなり敬次の目の前に現れた美形の青年は、敬次の腕っぷしを認めて舎弟にならないかと言って来た。

 その上から目線の態度に、敬次はイラッとする。

 ドカドカッと男の目の前まで歩いて行くと、ガンをつけながら「はぁ?」と言ってやった。

 この時も男はニコニコしている。

 しかし後ろに立っている子分なのか、舎弟なのかは分からないが男たちが敬次を取り囲む。



「ええ加減にしろよ、ガキ」


「兄貴がせっかく認めてくれたっちゅうのに、その態度は何やねや?」


「あぁ? テメェらはみたいな下っ端に用はねぇんだよ、調子に乗ってしゃしゃってくんなや」



 男たちは敬次に絡むのである。

 自分たちの兄貴分が、目の前で馬鹿にされているのだから怒る理由も分かる。

 普通の人間ならビビってしまう。

 しかし敬次は引く事なく男たちにも、ガンを飛ばして一触即発の雰囲気になる。

 それを男が「まぁまぁ」と止める。



「われらは少し黙っとれ。わしは少年と話をしよるんやど」


「兄貴、すんまへん……そやけど! こんなふざけた奴を舎弟にするなんて、兄貴の格が落ちまいますよ!」


「おい、われは日本語が分からんのか? わしは黙れって言うたんやぞ?」



 男は男たちに向かって喋るなと指示をした。

 注意されたのは理解した上で、舎弟たちは敬次を舎弟にする事を反対する。

 この行為に男は殺気を放ちながら喋るなと、2度目の注意をして黙らせるのである。

 男の殺気に敬次もゾッとしてしまう。



「いやぁ、不細工なとこ見して悪かったな」


「い いえ、それは別に良いっすけど……っていうか、アンタは誰なんすか?」


「おぉそかそか、名乗っとらんかったな。こらわしのミスやわ、かんにんかんにん」


「で、誰なんすか?」


「わしは5代目司馬組系尾田組で、組長代理をしとー《尾田 天馬》っちゅうもんだ」



 敬次は驚いた。

 少し前に話していた尾田組の組長代理を名乗る人間が、自分の目の前にいるからだ。

 あまりの衝撃に言葉を失ってしまう。

 まさか目の前に本職のヤクザであり、名前の通った組織の代理がいるなんて思ってもみなかった。

 しかしビビるのは別の話である。



「尾田って事は、当代の実子かなんかすか?」


「おぉそうや! 今の組長がくたばったら、実子のわしが跡目を継いで組を大きゅうしようって思いよー」


「そんな人が、どうして俺なんかを舎弟に?」


「わしはな、昔から元気のある奴がめっさ好きなんや。もちろん元気があるだけとちゃうぞ、しっかりと芯がある奴じゃなきゃあっかい」


「それで俺を気に入ってくれたと……」



 今の尾田組々長が引退したり死んだら、自分が尾田組を継ぐんだと天馬は笑っている。

 敬次的には全くもって笑い事では無い。

 そして続けて自分が舎弟にするのは、芯があって元気のある人間だと説明してくれた。

 それには納得する事ができた。

 しかし舎弟になるかは別の話で、ヤクザの舎弟になるのは「嫌だなぁ」と思っていた。



「それで舎弟になるか?」


「そうですね……ちょっと考えても良いっすか?」


「まぁ確かに、いきなりヤクザの舎弟になるなんて選択肢は即答できんよな。また話聞きに来るから、その時に答えを聞かしてくれや」


「どうも、すんません……」



 敬次は舎弟になるかという誘いに対し、今すぐに答えを出す事はできないと答えた。

 それを聞いた天馬は、一瞬ピクッとなったが、またニコッとして話を聞きに来ると言った。

 直ぐに答えられなくてすみませんと謝罪をする。

 そのまま敬次に何もする事なく、天馬たちは立ち去って行くのである。

 周りの男たちは敬次を睨んでいる。

 こっちを見ずに立ち去るのだろうと思ったが、ピタッと歩くのを止めて天馬は敬次の方をクルッと向く。



「こんな事を言われても困る思うけど。今は若いからええけど、いつかは選択せなあかん時が来るからな? ほったら腕っぷしで成り上がるのもええ思うど?」


「そうですね、それを踏まえて考えさせて頂きます」



 それを言い残した天馬は、またニコッと笑ってから立ち去って行くのである。

 その後ろ姿を敬次は見送る。

 いろんな気持ちがグルグルしながらだ。

 そのまま食事の事を忘れ、敬次は「うーん」と唸りながら家に帰って行った。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 尾田組の傘下である林一家の事務所に、1人の組員がやって来るのである。

 その人物とは敬次がボコボコにしたヤクザだ。

 フラフラになりながら、そのヤクザは自分の事務所まで帰って来たのだ。

 事務所の中に入ったところで力尽きて地面に倒れる。

 同じ組の人間たちが駆け寄る。



「ど どないしてん! どこの誰にやられてん!」


「分からん、どっかのガキにやられた……まさかあそこまで強いとは思わなんだ」


「素人のガキか? われもヤクザやったら素人にやられるなよ、そんなんオヤジに知られ……」


「わしが知ったら、なんか不都合な事でもあるんけ? 親分であるわしに秘密があるなんて、ごっついわれらも偉なったもんやな」



 敵対組織とかならば、やり返してやろうと組員たちは躍起になる。

 しかしやられたのが、カタギのガキだと知って驚く。

 こんな事が林一家の総長である《林 秀利》にバレてしまったら、どんな事をされるか分からない。

 だから黙っておく必要があると組員は言った。

 しかし既に秀利総長は背後に立っていたのである。



「何があったのか、誰か説明してくれるか?」


「いや…あのこれは……」


「わしは何があったか聞いてんだ!」



 秀利総長は何があったのかを組員たちに聞いた。

 だがマズイ事をしているので、何も言い返す事ができずにアタフタしてしまっている。

 直ぐに答えられなかった組員の顔面を、秀利総長は蹴り飛ばすのである。

 蹴られた組員は地面に倒れて顔を押さえて悶える。



「われらも分かっとーな? わしらはねぶられたら、この家業で生きていけん……この意味は理解しとーな?」


「はい……理解しとります」


「ほな何があったかを説明しろ、その全てをな」



 倒れている組員の髪の毛を鷲掴みし、自分の顔の近くに持ってくる。

 そしてヤクザというのは舐められたらやっていけない。

 そういうと組員たちは納得したと言って、全てを秀利総長に話したのである。

 敬次にやられたと。

 しかし林一家の組員たちは、誰にやられたのかを分かっていないとも説明した。



「藤田のガキもやられたって言うしな、アイツを組員にするんは止めた方がええかもな……さっさとやられたっちゅうガキを探し出せ、きっちりと借りを返すんや」


『はいっ!!!!』



 秀利総長は、しっかりとやられた分を返すように組員に指示をしてから自分のデスクに座る。

 そして「はぁ……」と溜息を吐きながら顎を触る。

 そんな秀利総長のところに、顔がソックリな男が目の前に置いてある客人用のソファに座った。



「兄貴、今日はごっついイライラしとーみたいやな。なんかあったん?」


「貞勝か……うちの子分や見習いらが弱うて困っとるんや。どこの誰だか知らんガキに、ねぶられとーみたいやしな」


「なんや兄貴、そんな事ならわしに任しとくれえな。いつでも兄貴の手足となって働くわい」


「われが出るには、まだ早いんやわ。もっと使い所っちゅうんがあるからな」



 この秀利総長と顔がソックリな男は、総長の実の弟で武闘派として知られている。

 実際に林一家では舎弟頭を務めている。

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