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SCUM〜敗者たちの讃美歌〜  作者: 灰谷 An
第1章・兵庫県統一 編
22/23

022:子分への誘い

022:子分への誘い

 敬次が頭を下げた事に、周総長と長富会長が驚くのは当然だろう。

 しかし藤田も口をガッポリ開けて驚いている。

 その間も敬次は頭を下げ続けていた。

 十数秒が経ってから敬次は、顔を上げると自分たちの子分になって欲しい理由について話す。



「子分になって欲しいって、どういう事ですか? わざわざ俺たちみたいな半グレに声をかけんでも」


「これは内密な話だけどよ、俺が天翔会の2代目を継ぐ事が内定したんだよ」


「なっ!? 天翔会の2代目を!?」


「そうなんだけどよ、力ある奴らはオヤジについていって尾田組に上がるんだ。そうすると俺が率いる2代目天翔会には組員が、俺を合して3人しかいない……だから有望な人材がいたら、躊躇なくスカウトしたいんだよ」



 どうして自分たちをスカウトするのかと、周総長は真剣な表情で聞いて来た。

 これに2代目を継ぐからと答える。

 自分の目の前に天翔会を継ぐ人間が居るのかと、周総長は立ち上がるくらい驚くのである。

 天翔会の組員たちが、天馬会長についていって尾田組に上がるので、天翔会の組員が居なくなる。

 そうなったら組が回らなくなるので、有望な人材が居たら組にスカウトするのだと敬次は伝えた。



「エビスグループは資金繰りが上手くて、神戸連合は武闘派として優秀……こんな有能な人材たちを、まざまざと司馬組に潰させるわけにはいかないんだよ」


「そこまで評価してもうてんのは、めっちゃ嬉しい事でっけど……ほんまにええんですか? 司馬組が狙うてるって事は、俺たちが入ったら揉めるんちゃうんですか?」


「確かに言いたい事は、よく分かるよ。確かに普通だったら、揉めるに揉めるだろうな……普通だったらな! オヤジは司馬組のやり方に納得いってないんだ、お前たちの事も俺が面倒見るように言われている」



 2つの組織の良いところを理解している敬次は、こんな有能な人材を司馬組に潰させるわけにはいかない。

 だから敬次はスカウトしに来たのだ。

 しかしそこが周総長たちからしたら、上手く腑に落ちないところだと言う。

 司馬組は敬次が口を利けるような存在では無い。

 そんな上の人間が自分たちを潰そうとしているのに、その下の敬次たちが自分を仲間にするのはマズイのでは無いかという事だった。

 だが敬次は大いに揉めるだろうが、天馬会長が司馬組や小笠原組のやり方に納得していないのだから、別に無視しても良いだろうという事だ。



「まぁ気になる事もあるだろうが、別にお前たちを悪いようにするつもりは無い。役職だって、お前たちに初めからやるつもりだ。周と長富には若頭補佐を、お前らのボスであろう辰馬には若頭をな」


「新参者の俺たちに、そんなポストまで用意してくれるんか……」


「上納金だって全体の2割で良い。厳しい月に関しては、1割までなら落としてやる」



 2人に対して敬次は、辰馬の事も合わせて重要ポストに着かせると約束した。

 それはそれは重要なポストに。

 若頭と若頭補佐の2つだ。

 さらに上納金も2割と普通よりも遥かに安く、お金に困っている月は1割まで減らすと言った。

 まさかここまで良い待遇にしてくれるとは、全くもって周総長たちは予期していない。



「嬉しい話過ぎて、理解するのに時間がかかったけど……さすがに、わしらだけでは決められまへん。辰馬さんに話を通してから答えてもええですか?」


「あぁもちろんだ、この場で今すぐに答えを出せと言うわけじゃない。そうだな、3日後にここに書いてある焼肉屋に来てくれ、そこで今日の話の答えを聞くよ」



 こんなにも良い話が出るとは思っておらず、最初の想定との差に動揺を隠せない。

 しかし良い待遇だったとしても、自分たちだけでは決定しかねると言う。

 そりゃあそうだ。

 実質的なトップは辰馬。

 それを理解している敬次は、メモ帳に明石市にある焼肉屋の住所を書いて渡す。

 3日後に、ここで答えを聞く。

 そう約束して敬次たちは、席を立ち上がって周総長と長富会長と握手をしてから部屋を出る。



「アレで良かってんですか? あの勢いなら無理矢理にでも盃を飲ませたら良かったんじゃ?」


「アイツらは何かを背負ってるみたいだからな、あのタイミングで盃を交わしても本当の意味で子分にはならない。それなら悩ませる時間を与えて、自分で子分にならせる方が後々に有効な手だ」



 あのタイミングで無理矢理、盃を飲ませる事もできた。

 しかしそんな事をしたら、いざという時に2人からの協力を得るのが難しくなる。

 だから自ら悩んで決めた方が、義理を感じて子分と親分との関係が強いものになるはず。

 そう敬次は考えたのだ。

 ここまで考えたのかと藤田は脱帽する。



「ほな3日後の楽しみにしましょう!」


「あぁそうだな。今日1日だけで済んで良かったわ……円に連絡して撤収するように言ってけ」


「分かりました!」



 全ての用事を終えた敬次たちは、3日後に備えて姫路市へと撤収するのである。

 まだ3日後と思っていたが案外、早く3日後が来た。

 待ち合わせ場所に選んだ焼肉屋は、元々は天馬会長が贔屓にしている店だ。

 そこならヤクザと半グレでも気にしないだろう。

 約束の時間である7時の1時間前に、円と藤田を連れて焼肉パーティーを前祝いに。



「ドンドン飲めよ! 今日はオヤジの奢りだからな!」


『いぇーい!!』



 ここの飲み代は天馬会長が持ってくれているらしい。

 だから大いに飲んで食べろと敬次は、メニューをドンドン食べるのである。

 やはり天馬会長が贔屓にしている店だ。

 敬次たちからしたら、美味くて美味くて堪らない。

 パーティーが始まって盛り上がり始めた40分後くらいに、焼肉屋の入り口が開く。

 正装をした辰馬を先頭に周総長と長富会長が店に入る。



「おぉ辰馬っ! 3日ぶりだな、まさかお前が2人のボスだったなんてな」


「敬次さん、せんどぶりです……っちゅうわけとちゃうなぁ。本日は、こういう席を設けて頂きおおきに」


「気にする事は無いさ、こっちに座って話をしようや! その前に飯を食ってから……」


「いえ、単刀直入に言わして貰います。嬉しいご提案やったけど、今回の件はお断りさせて頂きます」



 入って来た辰馬たちに、こっちに座って飯を食いながら話そうと誘う。

 それを手を前に出し、断って来た。

 どういう事かと円と藤田は、ピクッと動きを止める。

 しかし敬次だけは、どうにも想定していたかのように落ち着いている。

 無駄な会話をせず、単刀直入に誘いを断った。



「まぁそうだろうな……それで断る理由は?」


「理由ですか、ほったら入りとうあらへんからです。ヤクザちゅうものが好かんからですかね」


「嫌っていうのが、本当の理由ならここに来る前に断らせれば良いんじゃ無いのか? 司馬組とやり合うだけの根性と気力があるんだから、それくらいできるはずだろ?」


「確かにそら考えたけど、ほんなら……」


「義理を欠くからだろ? でも、その言い分だと根っからヤクザが嫌いってわけじゃないだろ……お前たちが嫌いなのは、司馬組じゃないのか?」



 断られながらも落ち着いた様子で、自分の誘いを断った理由について聞く。

 理由を聞かれた辰馬は、ヤクザが嫌いだからと答える。

 しかし断る理由に違和感を感じ、ヤクザが根本から嫌いなのではなく、辰馬たちが嫌いなのは司馬組なんじゃ無いかと切り返す。



「まぁ確かに元を辿ったら司馬組ですけど……わしらが好かんのは、小笠原組ですから」


「やっぱりそういう事か」



 辰馬たちが嫌っているのは、ヤクザではなく小笠原組であると明かしてくれた。

 そしてそれは敬次の予想通り。

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