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SCUM〜敗者たちの讃美歌〜  作者: 灰谷 An
第1章・兵庫県統一 編
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021:スカウト

021:スカウト

 敬次は自分が投げ飛ばしたガチムチの男を、神戸連合の長富総長と呼んだのである。

 これに藤田は困惑して「え?」と溢す。

 どうして困惑したのか。

 それはエビスグループと神戸連合は、周りから噂されるほどの敬遠の中の関係だ。

 そんな組織のトップの2人が同じ部屋にいる。

 しかもエビスグループのアジトにだ。



「兄貴、それってどういう意味ですか? エビスグループと、神戸連合は敵対しとー組織のはずじゃ!」


「まぁそうなるよな、それは仕方ない事だ。それで本当にお前は長富なのか? 神戸連合の総長をしている」



 頭に疑問ばかりが浮かんでいる藤田は、どういう意味で長富総長と言ったのかを聞く。

 これに困惑しても仕方ないと敬次さカバーした。

 その上で本人に聞いた方が早いだろうと、敬次は倒れている長富総長に聞くのである。

 自分の考えは合っているのかと。



「わしが長富やけど……なんでわしが長富やと分かった!」


「そもそもおかしいと思ってたんだ。エビスグループは金を作るのは上手いが、明らかに武力という点で弱すぎる。神戸連合の方は武闘派にして素晴らしいが、逆に金や運営に関していえばスカスカだろ?」


「確かに気になる言うたら気になるとこではあるんですけど、その考えをするには材料が……」


「藤田の言いたい事も理解できる。だから俺は、お前には言わずに心の奥に留めていたんだよ。だがこの男が襲いかかって来た瞬間、全てが繋がったようにピーンッと分かったんだ……この2つの組織は繋がっているってな」



 敬次がどうしてガチムチ男を長富総長だと思ったのか。

 それはエビスグループと神戸連合の2つを比べた時に、違和感を感じたところから始まった。

 エビスグループは金を作れる反面、武力に関していえば何と言っても等しい。

 神戸連合は逆に武力こそあれど、金や組織の運営に関していえば雑魚と呼んでも言い過ぎでは無い。

 ならば2つの組織はどうやって生きて来たのか。

 そうそれこそ2つの組織は持ちつ持たれつなのだ。



「さ さすがは兄貴や! そんなとこまで気ぃつくなんて、普通は分からんですよ!」


「そんな事はねぇよ、オヤジたちなら直ぐに気がついていたはずだ。しかしまぁここに用件のある2人が揃っているんだから、ちょうど良いってところか」


「おい、われら! さっさと席に着け、兄貴が話を始めるど」



 まさかそこまで考えているとは思っておらず、藤田は敬次の推理力に感服する。

 本人の敬次は全く凄くないと謙遜した。

 何なら天馬会長なら自分よりも早く、さらにもっと確証がある証拠を手に入れると言うのだ。

 とりあえず話を先に進めようかと言う。

 ここに用事のある2人がいるのなら、ちょうど良い。

 確かにと思った藤田は、捕まえている周総長と倒れている長富会長を起こしあげて椅子に座らせる。

 これで話の席が出来上がる。



「色々としたい話はあるが、とりあえずお前たちの話をしようか。お前らは表では対立してても、裏では同じ組織ってわけだな?」


「はぁ……まぁそういう事になりますわな」


「お前たちが存在を隠していたのは、もう1つの組織である2代目須磨ライアンと対立しているからか? いや、そうじゃ無いな……」



 敬次は2人に同じ組織である事を確認した。

 確認を受けた2人は、もう隠しても仕方ないと認める。

 どうして存在を隠していたのかを敬次が考えた時、可能性として2代目須磨ライアンと対立しているからじゃないかと理由を考えてみた。

 その瞬間、2人の表情が緩んだ。

 この2人の感じと、今に至るまでの直感で敬次はある仮説を組み立てるのである。



「もしかして本当は3つの組織とも、裏では繋がっているんじゃ無いのか?」


「い いや、そんな事は……」


「そうやそうや! わしらは敵対しとるんや!」



 もしかしたら3つの組織が、裏で繋がっているんじゃないかと指摘してみた。

 すると2人は面白いくらいに動揺している。

 周総長は言葉が吃り、長富会長は勢いで押し切ろうとしているのである。

 この反応からしても繋がっているのは確かだろう。



「これに関しては何の確証もなく、俺が勝手に考えてる事だけどよ。もしかして2代目須磨ライアンの代表の名前って《三好 辰馬》って言わないか?」


「な なんで代表の名前を!?」


「長富っ! そんな反応をしたら!」



 またまた敬次の推測が当たった。

 敬次が考えていたのは、2代目須磨ライアンの代表が辰馬であるという事だ。

 辰馬とは敬次が神戸にやって来て、1番最初に話を聞く為に捕まえた薬物の売人の男である。

 そんな人間が代表では無いと思っていた。

 しかし2人の反応からして、辰馬が須磨ライアンの代表であるのは確かであろう。

 まさか当たるとは思っていなかった。



「兄貴、それってどういう意味ですか……全くもって話が見えて来んのですけど」


「アイツと戦った時に違和感を感じたんだよ」


「違和感ですか?」


「あぁ一見して雑魚のように見える、しかも簡単に捕まえられたから引っかかったわ。最後の最後に、アイツの拳を見た時……そう、その時に違和感を感じたんだ。人を殴らなそうに見えるのに、拳には何個もの人を殴った時にできる傷があった。そして掌にはナイフタコもあった」



 別にこの時に辰馬が、須磨ライアンの代表であると思ったわけでは無い。

 単純に違和感を感じただけなのだ。

 しかしここに来て、もしかしたらと思って点と点を繋げてみたら素晴らしいくらいに繋がっていた。

 敬次の推理を聞いていた2人は驚きの顔をしている。



「まぁそういうのは別に気にしないけどよ、とりあえず本題に入ろうか」


「アンタらは俺たちを潰しに来たんちゃうんですか? さっき司馬組って言うてましたやんな?」


「さっきも言ったけどな、立場上は司馬組系天翔会の人間だと自己紹介はしたが潰しに来たわけじゃ無い。どちらかと言うと、全く逆な話だ」


「逆な話って何ですか? 潰しに来たんちゃうなら、一体なにしに来たんですか」


「お前たちをスカウトしに来たんだ」



 改めて話を本筋に戻す。

 周総長は司馬組と言っていたから、潰しに来たんじゃないのかと自分の考えを述べた。

 これに真っ向から否定する。

 司馬組と名乗ったのは、立場的に天翔会が司馬組の傘下であるからであり、別に潰しに来たわけでは無いと敬次は2人に伝えた。

 何なら逆にスカウトしに来たんだと敬次は話す。

 2人は互いの顔を顔を見合ってから「スカウト?」と首を傾げて疑問符を頭に出した。



「お前たちは司馬組に狙われてるんだ、このままだったら本職の奴らが潰しにかかる」


「そんなん分かってまっせ! やさかいわしらの子分になれって言いたいんですか? そんなん願い下げでっせ、こっちは最後の最後まで戦うつもりです!」


「こっちが上から傘下に入れって言いたいわけじゃねぇんだよ。俺の方こそ、お前たちに子分になって欲しいんだ」



 敬次は2つの組織が司馬組と揉めている事を掛け合いに出した上で、このまま本職のヤクザが本気を出したら潰されてしまうと言った。

 これに周総長は子分になるのはお断りだと返した。

 最後の最後まで戦うつもりだと宣言する。

 しかしそんな周総長と長富会長に対し、敬次は自分の方から頼みたいのだと言うのだ。

 そのまま頭を下げた。

 これにその場にいる人間たちは困惑する。

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