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SCUM〜敗者たちの讃美歌〜  作者: 灰谷 An
第1章・兵庫県統一 編
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019:幸先の良さ

019:幸先の良さ

 敬次と藤田はタクシーで、センチメンタルホテル神戸までやって来た。

 あまり周りをキョロキョロしながら歩いていると、周りから怪しいイメージを持たれてしまう。

 その為、堂々とホテルの中を歩く。

 そして敬次たちはエレベーターに乗り込む。



「兄貴、このまま上に上がっても……どないするんですか?」


「ん? そんなの決まってるだろ、まずは偵察すんだよ。どこの部屋に周がいるのかを判断しなきゃいけねぇし、そもそも本人なのかを確認する必要がある」


「そやからまずは怪しまられへんようにスイートルームの階に行くわけですなぁ!」


「そこからは、どれくらいかかるかは分からないが情報を集める。まずは周がいるっていうのを確かめないと、動きたくても動けないからな」



 ここからは時間や根性の勝負だ。

 そもそもこのスイートルームに周たちが居るのか、居るとして何番の部屋なのか。

 色々と調べなければいけない事がある。

 とりあえず今回は、このホテルのスイートルームにいるかを確認しようと敬次は言った。

 そんな話をしているとピーンッと言って止まった。

 敬次たちは、そのままエレベーターを降りる。



「このままだと目立っちまうから、避難口のところに身を隠して客を探すぞ」


「はい! 分かりました!」



 部屋を見張るにしても普通にしてたら目立つので、2人は避難口のところに身を隠す。

 ここからなら普通には見つからず、何かあったら直ぐに避難口から逃走する事ができる。

 身を隠しながら全ての部屋を監視する。

 交代交代で見張ろうとしたが、藤田は舎弟である自分が見張ると敬次を休ませる。

 その言葉に甘えて敬次は壁に背をつけて座る。

 ここからどれくらい時間がかかるだろうと、敬次は腕時計を見て溜息を吐く。

 覚悟はしていたが、気が遠くなる作業だ。



「藤田、疲れたら交代するからな」


「いえ、大丈夫です! まだまだいけますわ!」


「そうか、それなら良いけど」



 2時間が経ったところで、敬次は交代を申し出るが藤田は拒否して監視を続ける。

 凄い根性してると敬次は感心した。

 すると藤田が小さな声で「あっ!」と声を上げた。

 どうしたのかと敬次は、藤田に身を寄せて何があったのかを聞くのである。



「アレを見て下さい! この階の宿泊者にしては、ごっつい若うてカジュアルな格好をしとーみたいです!」


「確かに若い上にカジュアルだな……ちょっと話を聞いてみようじゃねぇか」



 藤田が指を差している方向を敬次は見てみる。

 そこには高級なスイートルームに違和感を感じるくらいに、カジュアルな格好をしている若い男たちが部屋から出て来たのである。

 これは何かあるかもしれないと敬次は感じた。

 だからスッと立ち上がって、少し話を聞いてみようと若い男たちの背後を尾行する。


 近すぎてもダメだが、遠すぎては話し声が聞こえないので絶妙な距離で尾行する。

 敬次たちは、そんな風に気にしている。

 しかし男たちは道の真ん中を、我が物顔で女を侍らせ大笑いしながら歩いていた。

 その為、話し声がまんま敬次たちに筒抜けなのだ。

 これには敬次も呆れる。



「なぁこれからどこに飲みに行くん? そんなに金持ってあらへんど?」


「そんなん気にせんでええわ! 鶴洋総長が、こんなに金をくれたんやからな!」


「さすがは鶴洋総長や! エビスグループに入って良かったな!」



 話の内容は敬次たちが期待していたものだった。

 敬次たちは互いの顔を見合ってからニヤッと笑う。

 深呼吸をして落ち着くように促すジェスチャーを敬次は行なって、藤田の耳元で作戦を伝える。



「良いか? アイツらをボコって、ホテルに戻るぞ。アイツらが扉の前に居たら扉を開けんだろ」


「そやけど、周りにおる女たちはどぉしますか? 攫うてまいますか、あんな女ならおらんくなっても困らん思いますよ」


「それでも関係ない人間に手を出すな、それをやったら極道じゃなくギャングやマフィアになっちまう。女たちには体良く金でも握らせてれば良いだろ」


「そうですなぁ、その通りです。不謹慎な事を言うてもて申し訳おまへん!」



 2人で男を襲った上で、ホテルに戻り扉を開けさせる。

 それが敬次の指示であり、藤田は周りにいる女たちをどうするのかと聞いて来た。

 藤田の考えでは股の緩い女なんて、どこに行っても困らないだろうと言った。

 その発言に敬次はムッとする。

 関係のない女子供を巻き込むのは極道じゃないと叱る。

 自分の発言の不味さに気がついた藤田は、ハッとして敬次に謝罪するのである。

 とりあえず女たちには金を握らせると言った。

 作戦が決まった。


 敬次たちは、ゆっくりと背後に近寄る。

 そして男たちに「エビスグループの幹部か?」と声をかけた。

 2人いるうちの1人が「あ?」と言って振り返る。

 その瞬間、藤田は鼻っ柱に1発パンチを入れた。

 殴られた男は地面に膝をつき、もう1人の男と周りの女は「うわぁ!?」と困惑する。

 やってやったという顔を藤田はしていた。

 しかしそんな藤田の頭を敬次は殴る。



「お前は馬鹿か! これから連れていくのに、こいつの顔に傷がついてたら周が警戒するだろ!」


「あっ!? そ そうか、そらあそうや……ほんまにすんまへん!」


「はぁ……もう良いよ」



 これから周総長のところに行くのに、コイツらが怪我をしていたら警戒するだろと敬次は注意した。

 その事に気がついた藤田は、またまた頭を下げて敬次に謝罪するのである。

 この光景を、ほんの数秒前に見た。

 敬次は頭を抱える。

 しかしこんなところで、モタモタしているわけにはいかないので溜息を吐きながら話を進める。

 膝をついた男の側まで寄って、敬次はしゃがみ込む。



「お前らエビスグループの人間だろ? しかも周のアジトに入れるって事は、それなりに地位のある」


「わ われは誰や! こんな事して許されるとでも……」


「許されなかったら、どうなるんだよ? 教えてくれよ、こんな状況で強気に出るなよ」



 素直に敬次はエビスグループの人間かと聞いた。

 するとやはり素直に答える事なく、自分たちはエビスグループの人間である事は言わず、こんな事をして許されるわけが無いと敬次を脅すのである。

 そんな脅しに敬次たちが屈するわけが無い。

 何ならイラッとして、その男の脇腹にパンチを叩き込んで四つん這いにしたくらいだ。



「良いか、藤田。こういう時はな、顔じゃなく目立ちずらい体に罰を与えんだよ、こうやってな!」


「さすがは兄貴です! 勉強になりますわぁ!」



 敬次は男の脇腹を何度も殴りつけ、こうやってやるんだと藤田に教える。

 これに勉強になると藤田はピシッと立って感謝する。

 藤田の態度に敬次は「うんうん」と頷いて納得してから視線を、この男の方に戻す。

 さっきまでは微笑ましい顔をしていた。

 しかし今は鬼のような形相をしている。



「もう1度聞くぞ? お前らはエビスグループの人間であり、周に会える人間なんだよな?」


「は はい……その通りです」


「そうか、素直に答えてくれて感謝するよ。それじゃあ今からホテルに戻って、あそこの扉を開けて貰おうか」



 敬次の顔にビクビクして、これは逆らったら殺される奴だと察知して男は素直に答えてくれた。

 その素直に敬次は感謝をしてから、男の頭をポンポンッとして褒めるのである。

 話を聞けて良かったと敬次は立ち上がる。

 そして男たちに「ホテルに戻るぞ」と言った。

 この現場を見ていた女たちに、敬次と藤田は懐から財布を取り出して10万円くらい渡す。

 女たちはそれを受け取って立ち去っていった。

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