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SCUM〜敗者たちの讃美歌〜  作者: 灰谷 An
第1章・兵庫県統一 編
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017:誘い出し

017:誘い出し

 敬次は売人の辰馬とタバコを蒸かしながら雑談する。

 呼び出したリーダーの男が来るのを待つ為で、無言のまま時間が過ぎるのは耐えられない。

 だから軽い雑談をしながら敬次たちは待つ。

 すると十数分で辰馬のスマホに、連絡が入ってどこに居るのかと聞いて来た。

 タバコを捨てて場所を伝えてから準備をする。

 そしてそこにリーダー的な男がやって来るのである。



「あっ! 鈴木さん、わざわざ来てもうて申し訳おまへんでした……ちょっとこのお客さんが」


「たくっ! 三浦さんからの頼みで雇うたのに、ここまで使えん奴やったとはな……それでお客さん、何そんなに文句をつけてくれとんねや?」


「おぉ客人に対して、そんな口ぶりとはプロのブローカーとして失格だな……テメェを呼んだのは、周って野郎の居場所を知ってると思ったからだ」



 辰馬は呼んだリーダーに深々と頭を下げて謝罪する。

 やって来た男は明らかにチンピラといった感じで、こんなのがリーダーなのかと敬次はガッカリした。

 普通は上に立つ人間になればなるほど、見た目を気をつけるものだろう。

 しかしこんなチンピラの見た目なら期待はできない。

 ちょっとガッカリしながら周総長の居場所について、それを聞きたいから呼んだんだと明かした。

 それを聞いたリーダーの男は「なに!?」と動揺する。



「辰馬、われまさか! わしを嵌める為に、わざわざ呼んだんとちゃうやろな!」


「おい、絡む相手を間違ってるぞ? テメェを呼ぶように言ったのは俺だ」


「われ、どこの誰や! 何の為にわしを呼んだ!」


「天翔会の花岡だ!」



 男は辰馬の方に向かって歩き出す。

 自分を嵌めた人間への落とし前を付けようとしている。

 しかし男を呼んだのは自分だから、絡む人間を間違っていると敬次は睨みながら言う。

 狙い通りに男は、狙いを敬次の方に向ける。

 そしてどこの誰が、自分の事を呼んだのかと敬次の胸ぐらを掴んで問いただす。

 敬次はチッと舌打ちをする。

 胸ぐらを掴まれている方の手首を掴んでからグイッと体の外側に捻る。

 痛みで男は「いたたた!」と叫ぶ。

 だがそんな事は聞き入れて貰えず、敬次は男の顔面に1発決め込んだ。

 イラッとしていたのもあって、それなりの力になってしまったのは言わずもがなだ。



「それでテメェは、周総長の居場所を知ってるか?」


「知っとーわけあらへんやろ……あんな上の人を」


「何とも情けない言い草だなぁ、これがリーダーなんて俺だったら嫌だわ。じゃあテメェよりも上で、呼べる人間はいるよな? ソイツを今すぐに呼ぶか、会う席を設けて貰おうじゃねぇか」



 倒れている男の襟をグイッと掴んで、周総長の居場所は知っているかと問いただす。

 しかし男は知ってるわけないと答える。

 周総長の事を完全に上な人だと判断し、成り上がるつもりが無いのが手に取るように分かる。

 そんな言い分に敬次は反吐が出る。

 こんな奴に聞いても仕方ないかと思いながら、周総長を知らないなら別の上の人間を呼ぶように言った。

 だが男は首を横に振った。



「わしよりも上の人間なんて幹部しかおらんねやから、会うた事も見た事もあらへんわ! こっちは履歴の残らん通話アプリで、電話のやりとりしかしとらんのや!」


「結局はテメェも末端も末端か……じゃあ仕方ねぇから、お前の根城に案内しろ。あるんだろ? 売人たちを集めて根城にしている場所が」


「なんでわしが、アンタを連れてかなきゃあかんのや!」



 この男も末端も末端なので、幹部の人間とは連絡しか取り合った事が無いらしい。

 やはり男ですらも末端も末端である事を、敬次は思い知らされるのである。

 頭を抱えながら別に切り替えようとする。

 そこで良い事を思いついた。

 敬次は男たち、末端の人間たちが根城にしているアジトまで案内するように言った。

 しかし男は断るのである。

 どうして自分が案内しなければいけないのかと、敬次の頼みを真っ向から断ろうとした。



「お前は本当にバカなのか? こんな薬局の売人をやらされるだけの人生で、このまま死んでも良いのか?」


「殺すて? ほんまに殺せるんけ? たかだかチンピラが、人を殺すなんてでけるわけあらへんやろ」


「ほぉ本当にそう思うか? それなら試してみるか……まずは指を数本折ってからじんわりと行こう」



 敬次はアジトに案内するだけの頼みを断って、こんな薬局の売人をやったまま死ぬなんてアホかと言った。

 だが男は敬次が、自分の事を殺せるのかと笑う。

 それなら仕方ないと敬次は実際に、殺せるという事を示してやろうと躊躇なく人差し指を折った。

 痛みで男は地面をゴロゴロと、のたうち回る。



「それでもう1回聞くけどよ? さっさとお前ら売人のアジトに案内してくれるか? もし断るなら、今度は全部の指を折ってから爪を剥ぐぞ」



 のたうち回っている男を、サッカーボールを止めるように敬次は足で止める。

 そのまましゃがんで髪の毛を鷲掴みする。

 また断ったら、今度は1本だけじゃなく指を全て折ってから爪を剥ぐと脅す。

 これは脅しでは無いと怯える。

 明らかに敬次は、やる目をしていると全身の震えが止まらないでいるのである。



「わ 分かった! しっかりと連れていくんで許してくれてや!」


「おい、まだ分からないのか? 誰に向かって、タメ口を使ってるんだ?」


「す すんまへんでした! お連れするんで、どうか許して下さい」



 諦めて敬次をアジトまで連れて行くと約束する。

 それだけでは敬次は納得できず、男の頬を軽く叩いてからタメ口である事を指摘した。

 このままではやられてしまうと、直ぐにタメ口を止めて敬語に切り替えるのである。

 敬次は「よし」と言ってから手を離す。

 立ち上がり手をパンパンッと払ってから「さぁ案内して貰おうか」と男を立ち上がらせる。

 案内して貰う前に敬次は辰馬の方を振り向く。



「辰馬、もう帰って良いぞ。またどこかで会うかもしれないな、その時はよろしくやろうや」


「でける事やったら、もう会いとうあらへんです」



 辰馬を解放すると敬次は言うのである。

 そしてまたどこかで会うかもしれないから、その時はよろしく頼むと言った。

 辰馬としては、もうできる事なら会いたくないと溜息を吐いて項垂れる。

 そんな様子に敬次は大笑いする。

 辰馬に見送られながら敬次は、男に案内して貰う。

 もちろん藤田も着いて来ている。



「藤田、まだ円から連絡は来てないか?」


「さすがにまだとちゃいますか? 連絡して30分も経っとらんですし」


「そりゃあそうか、じゃあ円からの情報が来るまでアジトで、ゆっくりしようか」



 敬次は藤田に、円からの連絡はまだかと聞いた。

 苦笑いしながら藤田は、さすがにまだじゃないかと敬次に言うのである。

 円に連絡してから、まだ30分しか経っていない。

 だからさすがの円でも、そんなに早くは情報を集められないだろうと藤田は円を援護する。

 それに納得した敬次は、今ここで焦ったところで仕方ないかと敬次は、売人たちのアジトに行って、ゆっくりしようと言うのである。

 そうしようと藤田は、敬次に賛同する。

 敬次と藤田は雑談をしながら歩いていると、10分くらいでアジトのアパートに到着した。

 しかしそのアパートは、ボロボロで敬次は引いた。

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