016:半グレ狩り
016:半グレ狩り
敬次と藤田は気配を消しながら、裏道の奥に進んでいくのである。
冒険気分でテンションが上がっている。
海外の船が来やすいという事は、それだけ海外からの違法薬物とかが入って来やすいという事だ。
だからきっと神戸市内でも満映しているはず。
敬次を先頭に藤田が背後を警戒しながら、どんどん奥に進んでいくと敬次は藤田に「止まれ!」と指示する。
「アレを見てみろ、俺の作戦は正解だったろ?」
「確かに早速やっとるね」
「あぁあの男を捕まえて、エビスグループの周って男のところまで連れてって貰おうか」
敬次は指を指して、裏路地の奥を見るようにする。
言われるがままに藤田は、目を少しだけ出して指を指した方向を見るのである。
するとそこには20歳くらいの若い男が、髪色が派手なホスト風な男に何かを渡していた。
どうみても薬物売買の現場だ。
敬次と藤田は、アイツを引っ捕まえてやると決める。
互いに顔を見合ってから「うん!」とタイミングを合わせ、物陰から飛び出すのである。
そのまま男たちに向かって猛ダッシュする。
少し近づいたところで、男たちはハッとして逃げようとするのである。
とりあえずホストの方は良いから売人に狙いを定める。
逃げ出そうと売人の男は、2人に背を向け走り出す。
そんな売人の背中に敬次は、ドロップキックをかます。
綺麗にドロップキックが入ったので、売人の男は地面にズザーッと転んだ。
「テメェ、何を逃げようとしてんだよ。悪い事してるって実感があんだろ?」
「アンタ、誰どいや! サツとちゃうやろ!」
「おぉサツじゃ無いぞ? サツならドロップキックなんてかまさないだろ?」
「ほな誰どいや!」
「俺は5代目司馬組系天翔会で、会長付きをやってる花岡ってもんなんだけどよ。お前ってエビスグループの人間だろ?」
転んだところを敬次が馬乗りになって、逃げないように取り押さえる。
売人の男はジタバタしながら暴れる。
だが敬次が、全く離さずに取り押さえている。
どこの誰なのかと売人の男は聞いて来て、サツではない事を言ってから天翔会の人間だと伝えた。
すると男は「司馬組!?」と動揺するのである。
そして続けてエビスグループであるかと聞く。
「良いか、誤魔化そうとするなよ? 後からエビスグループの人間だってめくれたら、タダじゃ済まさねぇからな」
「分かった、分かったど! 話すから話しとくれえな!」
「よし! じゃあ話してやるよ、逃げれると思うなよ?」
「分かっとる! 逃げようなんて思とらんよ!」
敬次は嘘を吐いたと、後で分かったら許さないからと前を気をしてから話を聞こうとする。
売人は分かったから手を離して欲しいと言ってくる。
どうやらキツめに拘束していたので痛いらしい。
逃げられない事を忠告してから手を離し、男を地面に座らせ敬次はヤンキー座りをして話を聞く。
「それで聞くけど、お前はエビスグループの人間か?」
「あぁそうやで……まぁ末端も末端やけどな」
「そりゃあそうか。幹部クラスが、こんなところで売人なんてやらないか」
男に聞いてみると、この男は予想通りにエビスグループの人間だと分かった。
しかしこれまた予想通りに末端も末端だと言う。
半グレ集団とは言えども大きな組織であるエビスグループの幹部が、こんなところでリスクの高い売人なんてやらされないだろう。
そう思った敬次は溜息を吐く。
そして次に「アジトは知ってるか?」と聞く。
男は首が取れるんじゃないかと思うほどに、首を横に振って知らない事を敬次に伝える。
「そうかそうか、お前はアジトを知らないか……本当に知らないのか?」
そういうと敬次は、男の人差し指を握ると折るつもりで上に向けるのである。
痛みを与えようと思っているのだから、男は「いたたたたた!!!!」と痛みで悶える。
痛いと言っても敬次は止めない。
本当は知っていても知らないと言っているかもしれないと、敬次は考えているからだ。
何なら折るところまで行っても良いだろうと考える。
「本当や! 本当に知らんのや!」
「本当か? どんな情報……いや、この際 噂話でも俺は気にしないぞ? ほれ、話してみろよ」
「わ 分かった! 噂話で良いなら知っとる!」
もう折れるといったところまで行っても知らないと言うので、きっと本当に知らないのだろう。
この際、敬次としては噂話でも良いと促す。
それを聞いた男は、噂話で良いなら知っていると大きな声で敬次に言った。
ここでようやく敬次は、指をパッと離した。
「アジトについての噂話ってどんなのだ?」
「ほんまに噂話レベルの話やで? それで後から殴るとか止めてくれや?」
「おぉそれは約束してやるよ、それで良いからさっさと噂話を教えろよ」
「こ こらあくまで噂話でっせ! うちの総長……周総長は神戸市内の高級ホテルのスイートにおるって聞いた事あります!」
男が話した周総長のアジトに関する噂話は、多額の金を得ている周総長は高級ホテルのスイートでいるというもので、それを聞いた敬次は「確かにな」と腑に落ちる。
「そのホテルってのは、どこの事かは知らないのか?」
「そこまでは知らんっす。これ以上は勘弁して下さいよ」
「藤田、円に連絡して情報を集めさせろ。アイツなら、どこのホテルかは調べられるだろ」
「分かりました、直ぐに連絡します」
敬次は藤田にホテルで待機している円に連絡して、どこのホテルにいるかを調べるように言えと指示する。
円の情報収集能力ならば、きっとどこのホテルに滞在してるかを調べられるだろうと考えている。
直ぐに電話をかけてくると、藤田は急いでスマホを取り出し円に連絡を入れる。
「アジトは知らないにしても、少し上の人間くらいなら呼び出せるんじゃないか? お前よりも上なら誰でも良いからさ」
「わしよりも上の人間ですか? ほったらわしら売人を、まとめる人やったら呼べる思いますけど……」
「ソイツで良いから呼び出せ。ソイツが来たら、お前の事は解放してやるからな」
アジトや幹部の人間は知らなくても、自分よりも上の人間なら居るだろうと言った。
すると売人を取りまとめている人間がいるらしい。
ソイツなら今からでも呼び出せるかもしれないと言うので、呼び出させる事にした。
まとめる男が来たら、売人の男を解放すると約束した。
売人の男はスマホを取り出し、その売人のリーダーらしき男に電話をかける。
客と揉めたから助けて欲しいと頼んだ。
リーダーの男は、少し面倒くさそうにしていたが来てくれると言うので電話を切った。
あとは男が来るのを待つだけだ。
その間、敬次はタバコを取り出し、売人の男にも「ん」と言って1本分けた。
「それでお前は、何で言うんだよ?」
「ワシですか?」
「お前以外に誰がいんだよ! こんな出会い方でも縁は縁だからな、名前くらいは聞いておいても良いだろ」
「わしは《三好 辰馬》です」
「おぉ辰馬か、下っ端やらされてるのは可哀想だなぁ。うちに来ないか?」
「いやぁ……遠慮しときますわ」
タバコを蒸かしながら雑談をする。
この雑談で分かったのは、この売人の男の名前が辰馬といったところだけである。
そのまま十数分待つ。




