015:半グレ集団
015:半グレ集団
小笠原組に行ってから2日後。
敬次は姫路市ではなく、神戸市内を訪れていた。
ほとんど姫路市内から出ない敬次的には、都会にやって来て少し浮かれている。
しかしテンションが下がる状態とも言える。
どうしてなのか。
それは敬次と共に子分となった円と、舎弟になりたいとやって来た藤田がいるからである。
「どうしてお前たちまで着いてくるんだよ! 今回はオヤジが俺に任せてくれた仕事なんだぞ!」
「そんなこと言ってもオヤジは、半グレたちの情報を知らないでしょ? そこで僕が来たわけですよ!」
「お前にオヤジとか、言われると鳥肌が立つな……っていうか、どうして藤田もいるんだよ!」
「まぁええとちゃいますか、兄貴っ! 今回は人手が多いほどええ思うし、そもそも林のとこは追い出されたんで」
今日は天馬会長に任せて貰った仕事をしに来たのだ。
その仕事とは神戸市内にある3つの半グレ銃弾を、敬次の傘下に納めろという事だった。
どこで聞きつけて来たのかは分からないが、2人は手を貸したいという事でやって来たらしい。
帰らせたいところだが、後からヤンヤン言われそうなので、仕方なく手伝いさせる事にした。
「それで半グレ集団について知ってんのか?」
「やっぱりオヤジは調べて来てないんだね……僕たちが着いて来て正解ですね!」
「そんなんは良いから、さっさと教えろ」
手伝わせるからには戦力になって貰おうと、半グレ集団について知っている事はあるかと聞いた。
円は予想をしていた。
敬次なら何も調べて来ないだろうと。
そしてその予想が正解していて、やっぱり自分たちが着いて来て正解だったと満面の笑みで言うのだ。
まだ始まっていないのに疲れたと敬次は溜息を吐く。
敬次に促されるように、円は神戸市内に存在している半グレ集団の情報を教える。
「まず1つ目は《周 鶴洋》が総長を務める〈エビスグループ〉です。ここは他の2つに比べて圧倒的な資金力が特徴です」
「資金力? 半グレ集団の資金力なんて、高が知れてるんじゃないのか?」
「それが売春、薬物売買、恐喝、金塊の密輸などを効率的に回して数億の売り上げを出しているとかって話です」
「そんなに稼いでるのか、ソイツらを仲間にできれば資金面で心配する事は無くなりそうだな」
三大半グレグループの1つ目はエビスグループ。
ここは異様なまでの資金収集能力があり、年の利益は億を余裕で超えるレベルだと円は話す。
そこまでの資金力があるなら、仲間にした時のシノギに関して心配が無くなりそうだと敬次は言った。
「そして2つ目は武闘派で知られる《長富 忠雄》が総長を務める〈神戸連合〉です。ここは武闘派の長富総長が仕切っている通り、かなり凶暴な人間たちが揃っているみたいです」
「ソイツらが居れば、俺を先頭に戦闘部隊を作れそうだ。中々に面白そうな奴らかもしれないな」
2つ目は神戸連合。
武闘派の長富が総長を務めるチームで、3つの中で最も最恐と恐れられているチームだ。
こんなチームを傘下に収められれば、敬次を筆頭に最強の武闘派集団を作れるとワクワクしている。
「最後の1つなんですが……」
「どうしたんだよ、最後の1つが何だ?」
最後の1つを教えようとした時に、円は何かを言いたそうにモジモジしている。
何がどうしたのかと敬次は聞いた。
敬次の質問に円は「えぇと」とか「んー」とか、そんな感じで渋っているのだ。
それにイラッとした敬次は「おい! 早く言え!」と円の胸ぐらを掴んで言わせようとする。
さすがの円も「すみません!」と言って話し始める。
「最後の1つである〈2代目須磨ライアン〉なんですが、初代がライアンというハーフっていうこと以外は全くの謎に包まれてる集団なんです」
「謎に包まれた集団? そんなに謎なのか?」
「はい、リーダーから構成員……全てが謎に包まれた集団なんですが、話によれば3つの中で最も幅を利かせている集団だと聞いた事があります」
最後の1つである2代目須磨ライアンというチームは、構成員からリーダーの顔まで謎に包まれている。
だから円は何も言えなかったのだ。
自分の捜査力を疑われると思ってしまったら、会に入れて貰えないかもしれないと思った。
それを聞いた敬次は「はぁ……」と溜息を吐く。
情報が無い奴らを調べなきゃいけないなんて、面倒くさそうだと始まる前から憂鬱になる。
「こんなところで、愚痴ってても仕方ないか……とりあえず動き始めるとするか」
「そうしましょう!」
「お前は別行動だぞ?」
「えっ!? どうして僕は別行動なんですか!」
もう愚痴ってても仕方ないと敬次は、行動を始めようとする。
円も気合が入っているみたいだ。
しかし敬次はケロッとした感じで、円は別行動であると言ったのである。
せっかく気持ちを入れていたのに、どうして自分だけが別行動なのかと困惑する。
「お前は武闘派って言うよりも、情報収集の方が得意だったりするだろ? また誘拐されたりして、こっちの弱みになるのは避けなきゃわいけないしな」
「そ それは確かにそうかもしれないですけど……」
「円はホテルで、スマホとかを使って半グレ集団の情報を集めてくれ」
「分かりました……」
円は闘う方よりも情報を集める方が得意だろうと考え、ホテルに身を隠しながら情報を集めて欲しいと頼んだ。
また誰かに捕まっても困るし、これが得策であると敬次は考えているのである。
敬次の案に納得せざるを得なかった。
トボトボといじけるように、近くのホテルを取りに歩いて行った。
なんか少し心がチクッと痛くなった気がする。
まぁ気を取り直そうと敬次は、深呼吸をしてから頬を叩いて「藤田、行こうか」と言う。
「兄貴、半グレ集団を傘下に収める考えはあるんですか? めっさハードルが高い気ぃするんですけど」
「確かにな、何も策なしでやれるほど甘くは無い……かと言って、策があるわけじゃない! まずは薬物売買している売人を捕まえて、ソイツから辿る」
「確かにエビスグループは、薬物売買で金を稼いどーみたいですし、下手したら近道になるかもしれまへんなあ」
「そうだと良いんだけどな、とにかく繁華街の裏側にでも行ってみようか」
敬次に何か考えがあるわけでは無かった。
しかしある作戦だけ考えていて、それはエビスグループが生業としている薬物売買の売人を捕まえて居場所を吐かせようという事だ。
それを聞いた藤田は確かに作戦としては何とも言えないが、それでも下手したら近道かもしれないと賛成した。
そして2人は神戸市内の繁華街に向かった。
繁華街の裏道に行けば、売人がいるだろうと敬次は考たからである。
「それにしても神戸っていうのは、けっこう栄えてるんだなぁ。こんなに栄えてるなんて思わなかったよ」
「そらあそうですわい! 神戸は港町として世界中と貿易をしとーわけですから栄えるわけですわい!」
栄えている神戸の街並みに、敬次は驚いていた。
藤田は自分の住んでいる街かというほどに、自慢げに神戸市を褒めるのである。
何となく凄いんだろうと敬次は感じた。
しかし特にそれ以上は、何も感じずに藤田を連れて繁華街の裏道に入っていく。




