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SCUM〜敗者たちの讃美歌〜  作者: 灰谷 An
第1章・兵庫県統一 編
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010:定例会

010:定例会

 敬次が天翔会の会長付きになってから3日が経った。

 少しずつ会長付きとしての仕事が、ほんの少しづつ体に馴染んでくるのである。

 そして3日前に仕立てて貰っていたスーツが完成する。

 それを取りに天馬会長と平手若頭を連れて、みさき通り商店街の仕立て屋に向かう。

 どうして今回は平手若頭が着いて来るのか。

 答えは敬次のスーツを受け取った後に、真っ直ぐ尾田組での会合があるからである。



「どや? われ専用に作ってもうたスーツの感想は?」


「えぇこんなに良いものなんですね……とても気に入りました、これを着て寝たいくらいです」


「おいおい、そんな事をしたらスーツがクシャクシャになるやろぉ〜」


「はははは! そうですよねぇ」



 敬次は自分用に仕立てて貰ったスーツを着て、こんなにスーツというのは良いものなのかと感動する。

 一瞬にして敬次は、スーツを気に入った。

 これはずっと着ていたいから、寝る時も着ようと冗談を言うのである。

 この冗談に天馬会長は、ツッコミを入れて笑う。

 前に約束したように、このオーダーメイドのスーツの代金はタダにして貰った。

 仕立て屋のお爺ちゃんに感謝をして店を後にする。



「オヤジ、このまま尾田組の事務所に向かって良いんですよね?」


「あぁこのまま事務所に向かってくれ、今回は重要な定例会になりそうだし楽しみやな。そう思うやろ、平手」


「はい、尾田組の将来を占うといっても過言ではあらへんでしょうね」



 このまま尾田組の事務所に向かうのであるが、天馬会長は今回の定例会は大きな事が起きるといった。

 そうだろうと平手若頭にも共感を求める。

 返事をした上で、これからの尾田組の命運を占う事になると2人は語った。

 どんな事が起きるのかと敬次は思ったが、自分が知るところでは無いと聞く事を止めた。

 そして尾田組の事務所に到着する。

 事務所の入り口の前に車を停めて、天馬会長と平手若頭を降ろすのである。



「会合が終わるまで、ここで待っとってくれ。1時間くらいで終わる思うからや」


「はい、分かりました」



 敬次は車を停めると、そこまで役職は高くないので尾田組の事務所の中には入れない。

 だから車を停めている駐車場で待機する。

 暇つぶし用にタバコを貰っているので、ライターで火を付けてタバコを蒸すのである。

 落ち着いていると、車の窓がコンコンッと叩かれた。

 誰かと思ってパッと窓の外を見る。

 そこには敬次と同い年くらいの少年が、ニッコリ笑顔で立っていたのである。



「ど どうも……」


「あんたが噂になっとー天翔会の若衆やろ? まさか坊ちゃんから初日で会長付きになれるなんて凄いなぁ!」


「えぇまぁ……どうも。それでどちら様ですか?」


「自己紹介せなあかんかったな。わしは尾田組で部屋住みをさせてもうてる《加賀 寿郎》って言うんや、よろしゅうな!」


「あっ、オジキですか……」


「いやいや! わしも君とおんなじ若衆やから、そんなオジキとか呼ばんでええわ」



 敬次に話しかけて来たのは、尾田組で部屋住みの若衆をしている寿郎という人物だった。

 立場で言えば敬次の方が下で、寿郎はオジキになる。

 しかし寿郎はオジキなんて言われるのは、ムズムズするからしなくて良いと笑いながら言う。

 だがそう言うわけにはいかない。

 天馬会長は礼儀を重んじる人なので、それを破るわけにはいかないので断ろうとした。

 それでも寿郎は引き下がらない。



「分かったよ、今からタメ口にするよ……」


「よし! これで仲良うできそうや!」



 敬次と寿郎が仲良くなっている裏で、尾田組の定例会場には幹部たちが揃っていた。

 その幹部の中で組長代理である天馬会長を除いて、異彩な雰囲気を放っている人間が4人いる。

 1人目は天馬の実弟で悠誠一家の総長である《尾田 悠馬》若頭であり、やはり兄弟という事もあって天馬会長と似ているが、悠馬若頭はメガネをかけておりインテリヤクザ感が漂っている。

 2人目は佐久間組の組長である《佐久間 信也》本部長であり、垂れ目で髪をオールバックにしている渋い男だ。

 3人目は柴勝連合の総長である《柴崎 勝栄》若頭補佐であり、ガチガチのムキムキな男である。

 4人目は米英会の会長である《米沢 英樹》若頭補佐であり、他の3人に比べたら影は薄いが頭脳は1番だ。



「おっ! 全員、揃うとーみたいやな。それじゃあ定例会を始めよか」



 全員が揃っているところに、天馬組長代理が最後の最後に入って来る。

 そしてそのまま定例会を始めようと言いながら、組長の席に着席するのである。

 この瞬間、幹部たちはビリッと緊張感が走る。

 天馬は終始ニヤニヤしている。

 最初に声を上げたのは、尾田組若頭でありながら天馬の弟である悠馬だった。



「おい! こら何の冗談や? そこは組長の席やろが、われみたいな奴が座ってええ席とちゃうんやで!」


「代理、頭の言う通りです。体調を崩しとーオヤジに不謹慎や思います」


「その親父からの伝言や! 体調が優れん故に、引退して隠居するとの事や」


『な なんやて!?』



 現在の尾田組々長は体調不良で、長期休暇をしている最中であり、天馬組長代理の悪ふざけのような行為に幹部たちはピリッとするのだ。

 悠馬若頭に同調するように、佐久間本部長も天馬組長代理に注意するのである。

 しかしこれには天馬組長代理の狙いがあった。

 それは体調が一向に良くならないので、引退した上で隠居し治療に専念するという事らしい。

 つまりほぼ確実に代が変わるのだ。



「代理、オヤジの容体はどんなもんなんですか?」


「大腸癌のステージ4と診断されとー、もう余命いくばくもあらへん状態や。そやからこそ組長は、生きとーうちに代を譲りたいって事なんやろな」



 あまりの事実に幹部たちは言葉を失ってしまう。

 まさか組長が、そんな瀬戸際に立たされているとは思ってもいなかった。

 天馬組長代理が言うには、組長は自分が死ぬ前に後進に道を譲ろうと考えたみたいだ。

 それを聞いてさらに雰囲気が暗くなる。



「それで後進に道を譲る言うても、2代目の指名はあったんですか? それがあるとなしじゃあ話が変わるわい」


「組長から2代目についての話と、わりかしの人事については話を受けとー」


「2代目に指名されたのは誰ですか? まぁ何とのう分かっとるけど」


「組長が指名したのは2代目組長と、組長代理についてや。まず組長に関しては、このわしが指名された。組長代理については悠馬、われが指名されたど」



 組長を指名されたと聞いた瞬間、幹部たちはザワッとしたがおおよその想像がついている。

 天馬組長代理の口から指名された人間を発表する。

 2代目に関しては天馬組長代理が選ばれ、天馬組長代理が務める組長代理の後釜には弟の悠馬若頭が選ばれた。

 これに文句をつけた人間がいる。

 悠馬若頭である。



「ちょっと待てや! なんでわれが2代目やねや、筋で言うたら若頭のわしが2代目やろがい!」


「筋がなんやって? われは先代が言うた事を曲げて、自分の方が相応しいって言うんけ? それこそ筋違いやろがい!」



 若頭だった自分こそが2代目に相応しいと主張するが、天馬組長代理はそれを主張すること自体が筋違いだと言って一蹴するのである。

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