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SCUM〜敗者たちの讃美歌〜  作者: 灰谷 An
第1章・兵庫県統一 編
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001:花岡敬次

001:花岡敬次

 世界遺産の姫路城がある兵庫県姫路市。

 姫路市は田舎と都会が共存しているような過ごしやすい街として有名なところである。

 そんなところのはずなのに、街な中から「こらぁ!」とか「やっちゃるわ!」という怒号が響き渡っている。

 声の正体は1人の少年と、複数人を引き連れているゴツい体つきをしている少年だ。



「花岡、最近いちびっとーみたいやな! ここら辺はわしらの縄張りやって分かっとんか!」


「そんなこと知らねぇよ! いつからこの街が、テメェの縄張りになったんだよ! 調子に乗ってんのはテメェの方じゃねぇのか!」


「おぉ本格的にいちびっとーみたいやな、この数を1人で相手にでける思とんか? こっから生きて往ねる思うなや」


「逆に聞くけどよぉ……その数で俺を止められると思ってんのかよ? それこそテメェらは、タダで済むと思うなよ」


「口の減らん野郎やな……われら! さっさと花岡を、ブチ殺しちゃれ!」



 花岡と呼ばれている赤髪の少年は、屈強な男たちが複数人もいるのにビビっていない。

 その態度に相対しているゴツい男は苛立っている。

 話していても仕方ないと、ゴツい男は花岡に手下たちを向かわせるのである。

 これでボコボコにして黙らせようというのだ。

 手下たちは「うぉおおお!!!!」と声を上げながら、花岡に向かって走っていく。

 これに花岡は手の骨を鳴らして拳を構える。


 1人が先陣を切って花岡に殴りかかる。

 その男の拳を花岡は冷静に避けると、男の喉仏をグーで思い切り殴りつける。

 これには屈強な男も喉を抑えて悶える。

 しかしこれは喧嘩の時には最悪の手である。

 攻撃をして来ない男に、花岡はトドメと言わんばかりに鼻頭を思い切り殴り飛ばした。

 たった2発で1人を伸した。


 だがこれだけでは男たちの士気は下がらない。

 花岡の背後から、また「うぉおおお!!!!」と叫びながら殴りかかって来る。

 背後を取ったからには黙ってかかってくれば良いのにと花岡は思いながらも、地面に尻餅を着く。

 そんな花岡に向かって男は拳を振り下ろす。

 この拳は当たらない。

 逆に拳を振り切った事で花岡にチャンスがやって来て、そのまま寝転びながら男の足を取って膝を反対方向に捻じ曲げるのである。

 その場で男はドタバタと痛みで暴れる。

 普通なら、ここで終わるが花岡は男の顔面を踏みつけて動かなくなるのを確認する。



「ば 化け物が……」


「おい、藤田っ! こんな雑魚を差し向けないで、テメェがかかって来れば良いだろうがよ。まさかやられるのが怖いとかじゃねぇよな? それなら悪いこと言ったな、さっさと逃げても良いんだぜ?」


「おい、いちびるんとちゃうど……われみたいなクソは、わし一人で十分やわ!」


「おぉその粋だわ! こんなもんじゃあ俺を満足させる事はできねぇぞ、もっと覚悟決めて来いや!」



 花岡は男たちのトップである藤田を煽って、さっさとかかって来るように言うのである。

 安い挑発に思えるが藤田は、しっかりとかかる。

 上着を脱いで上半身裸になるのだが、その体にはタトゥーがビッシリと入っていた。

 花岡的には「だからなんだ」っていう感じではある。

 そのまま花岡に向かって藤田は突進する。

 しかし結果は藤田の惨敗だ。

 屈強な男たちが17歳の花岡の前に、ドサトサッと倒れているのである。


 喧嘩を終えた花岡は「んー!」と背筋を伸ばす。

 そして「さてと」と喧嘩も終わったから帰ろうとしたところで、背後から「敬次くん!」という声が聞こえる。

 誰かと思ってパッと花岡は振り返る。

 花岡の名前を呼んだ人間の顔を見て「お!」と言った感じで表情をパァと明るくした。

 どうやら花岡の知ってる人間みたいだ。



「敬次くん、また藤田たちと揉めたの? さすがにやり過ぎじゃない?」


「円か、何がやり過ぎなんだよ? 向こうから絡んで来たから仕方なく相手してやっただけだぞ? それにコイツらが暴れてるだけなら気にしないけどよ、コイツらこんなの売り捌いてるみたいだぞ?」


「これって……シャブ?」



 花岡に声をかけて来たのは友人の《丸山 円》である。

 花岡が藤田たちと揉めた理由は、藤田の方から絡んで来たという理由だけでは無かった。

 本当の理由は藤田たちが、姫路市内でシャブを売り捌いているのが分かったからだ。

 ただ暴れてるだけなら花岡は気にしない。

 しかしシャブを売っていると分かったら話は別だ。

 絶対に許す事ができず、今回は藤田も含めてボコボコにしてやったというわけである。



「でもマズいんじゃ無い? 藤田たちは最近〈林一家〉に出入りしてるって話だよ?」


「林一家? 林一家って司馬組系尾田組のか?」


「うん! その林一家に出入りしてるって話なんだよ、もしかしたら報復して来るかもよ?」


「そんな本職が俺みたいなカタギのガキに報復なんてして来ねぇよ。というか、来たとしても返り討ちにするから心配するなよ」



 藤田は不良の半グレであるが、最近になって本職のヤクザである林一家に出入りしているというのだ。

 林一家というのは兵庫県をシマとして、全国にも名前を轟かせている司馬組の3次団体である尾田組の幹部が総長を務める組である。

 そんなところに出入りしているのだから、もしかしたら襲われるかもしれないと円は心配している。

 しかし張本人の花岡は本職がカタギに手は出さないと笑っており、もしもの時があったとしてもブッ飛ばしてやるから心配ないと豪快に笑っている。



「そんな事どうでも良いからよ、飯食いに行かないか? 喧嘩したらよ、めっちゃ腹減って来たんだよ」


「もぉ何があっても知らないよ?」



 喧嘩をしたから腹が減って来たと円を飯に誘う。

 あまりにも緊張感の無い花岡に、円は呆れながら後ろをパタパタッと着いていくのである。

 飯屋に向かって歩き出した花岡は「あ!」と言って、その場にピタッと止まる。

 いきなり止まったので円は、花岡の背中にぶつかった。



「いて!? ど どうかしたの?」


「ちょっと忘れ物したわ!」


「忘れ物?」



 円はどうして止まったのかと思っていると、花岡は忘れ物をしたと言って倒れている藤田の方に走る。

 何を忘れたのか、何かを戦っている時に落としてしまったのかと思って花岡の動きを見つめる。

 すると花岡は藤田の懐に手を突っ込んだ。

 そして財布を取り出して、どれだけ入っているのかと手に取ってみるのである。

 その中には5万が入っていた。

 5万を手に取った花岡は溜息を吐く。



「おいおい、薬局やってんのにしけてんなぁ……まぁ無いよりかはマシか」


「そんな追い剥ぎみたいな事をしなくても……」


「これは俺に喧嘩を売って来た授業料だ、もうここまでボコボコにしたら向かって来ねぇだろ」



 5万も奪っておきながら花岡は、少ないと文句を言って気を失っている藤田の顔をペシッと叩く。

 この光景に円は追い剥ぎだと例える。

 しかし花岡的には、自分に喧嘩を売った事への授業料だと笑っているのだ。

 完全にクチャクチャにしたから向かって来ないだろうと花岡は財布をポケットにしまって立ち上がる。

 だが円は「そうかなぁ……」と心配そうに呟いた。

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