第099話 決戦!関ヶ原レッスルマニア:数万の軍勢? 関係ありません、この戦場(リング)は私たちが支配します!
天下分け目の地、関ヶ原。
そこには今、東軍(幕府・洗脳兵)五万と、西軍(レヴィーネ・ノブナガ連合軍)三万が対峙していた。
東軍からは、妖刀の瘴気に当てられた暗い殺気と、「死」を望む虚ろな祈りが漂っている。
対する西軍からは、タカニシキを食べて養った英気と、しかし「同胞を殺さねばならないのか」という迷いの空気が漂っていた。
「……空気が重いわね」
両軍の中間地点。わたしは腕組みをして、ピリピリとした戦場を見渡した。
隣には、白い巫女服をアレンジしたアイドル衣装のアリスが立っている。
「うん。……向こうの人たち、みんな『死ぬ気』だよ。こっちの人たちは『殺したくない』って思ってる。……これじゃ、ただの悲劇になっちゃう」
「ええ。脚本家の筋書き通り……なんて、癪に障るわ」
わたしは鉄扇をパチンと閉じた。
これまで各地で「アリーナ」や「ブーダカン」を展開してきたが、この規模の軍勢、そして広大な盆地全体を覆うには、わたしの影だけでは足りないかもしれない。
その時、アリスがハッとしたように懐を探り、一冊の古びた書物を取り出した。
西国巡礼の折、荒廃した古社で見つけたという「古文書」だ。
「レヴィちゃん! ……やっぱり、これだよ!」
アリスがページを開き、わたしに見せる。
そこには、古代の文字で記された「国創りの神話」の一節があった。
『光と闇は、反発する双極にあらず。
闇は「器」を作り、境界を定め、理を敷く。
光は「中身」を満たし、命を育み、安らぎを与える。
二柱の女神は背中合わせに座し、世界という揺り籠を回す――』
「大陸の教会じゃあ、『光と闇は相容れない敵対属性』だって教わってきたけど……嘘だったんだよ!」
アリスの瞳が、確信に輝く。
「光と闇は、喧嘩なんかしてない! 本来は『隣り合う関係』……ううん、二人で一つのシステムだったんだよ!」
「……なるほどね」
わたしはニヤリと笑った。
腑に落ちた。
なぜ、わたしとアリスが、これほどまでに息が合うのか。
それは前世を同じくするからというだけではない。
なぜ、わたしの作る「過酷な環境」と、アリスの「癒やし」がセットになると、人が劇的に強くなるのか。
わたしが「枠」を作り、逃げ場をなくす。
アリスが「中身」を守り、死なせない。
それは、究極の「マッチポンプ」であり――最強の育成機関だ。
生命を育てる大いなる循環なのだ。
「だったら、遠慮はいらないわね」
「うん! もう手加減なしだよ!」
わたしとアリスは、背中合わせに立った。
敵軍が、黒い波となって押し寄せてくる。数万の殺意。
「生意気ね。たかだか数万程度の観客で、わたしたちのステージを埋め尽くせると思って?」
わたしは両手を広げた。
足元の影が、アリスの光を受けて爆発的に膨れ上がる。
「アリス、合わせなさい! ……会場のグレードを上げるわよ!」
「了解! ……フルパワーで行くよ!」
わたしの影が、大地を侵食し、物理的な質量を持って隆起する。
ただの壁ではない。関ヶ原全域を覆い尽くす、巨大な屋根、堅牢な柱、そして何万人もの重量に耐えうる観客席。
イメージするのは、前世の記憶にある最大級の屋内競技場。
『ブーダカン』を超え、数多の伝説を生んだ『ドーム』へ!
「逃がさないわよ。……この空間すべてが、わたしの『掌の上』だわ!」
ズゴゴゴゴゴゴゴォォォォッ!!!!
大地が鳴動し、空が閉ざされる。
関ヶ原という盆地そのものが、巨大な漆黒のドーム球場へと変貌していく。
影魔法・領域結界『ザ・ドーム』。
同時に、アリスが杖を掲げる。
「聖なる光よ、隅々まで満たして! この中にある全ての命を、傷も痛みも疲労も……『死』という概念そのものを否定して!!」
カァッ!!!!
ドームの天井(影)に、無数の光の星が灯る。
それは人工の太陽となり、ドーム内を昼間のような明るさで照らし出した。
アリスの光魔法が、わたしの作った閉鎖空間に充満し、濃密な「生命のスープ」のような環境を作り出す。
光魔法・領域結界『常世の楽園』。
敵兵たちが、呆然と空(天井)を見上げ、武器を取り落とす。
「な、なんだここは……?」
「体が……軽い? 傷が消えている?」
わたしはドームの中央、高くせり上がったリングの上で、マイクを握りしめ、アリスと共に叫んだ。
「数万だろうが、数十万だろうが関係ないわ!!」
わたしの声が、アリスの声が、ドーム内の空気を震わせる。
「「この場所は――わたしたちが『設営する』ッ!!!」」
その宣言こそが、新たな世界の理となった。
1.このドーム内では、人は死ねない。
2.脱出条件は、完全燃焼(満足)することのみ。
3.全ての争いは、エンターテインメントとして処理される。
「「ルールはただ一つ!! 『不殺』!!!!!」」
アリスが叫ぶ。
「安心して! どんな怪我しても治してあげるから!!」
わたしが吼える。
「どんな物理も弾き返してみせるから!!! さあ、試合開始よ!!」
わたしは「漆黒の玉座」をハンマーのように振り回した。
「「死ぬ気で……いえ、死ぬほど元気に!! 全力でやり合いなさいッッ!!!」」
カーン!!!!
開戦のゴングが、関ヶ原の空に鳴り響いた。
「う、うおおおおおおおおっ!!」
「死なねえんだな!? ならば思いっきり行けるぞ!」
西軍の迷いが消えた。東軍の死への渇望が、「全力の闘争本能」へと上書きされた。
ドームのありとあらゆる場所で、兵士達が組み合い、殴り合う。
武器を振り回しても傷は立ち所に塞がるので、飛びつかれ、組みつかれ、かえって不利だ。
そうなれば頼れるのは己の四肢のみ。
体力の続く限り、殴り、組み、投げ、極める。
武将も雑兵も関係ない、あるのは怪我なき痛みのみ。
悲劇の戦争は終わった。
ここにあるのは、史上最大の「大運動会」だ。
その熱狂を見下ろしながら、ノブナガが腹を抱えて笑っていた。
「カッカッカ! 見ろ! まさに天下分け目の『大祭り』よ!」
光と闇の最強タッグが作り出した奇跡の空間で、トヨノクニの歴史が大きく動こうとしていた。
天下分け目の関ヶ原。ドーム化&不殺ルールで、戦争を巨大なスポーツイベントに変えました。光と闇の最強タッグ、ここに極まれり。
この超展開を楽しんでいただけましたら、ぜひ評価ポイントをお願いいたします!




