↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
せっかく転生したのだから最強の悪役を目指します! 〜あらゆる理不尽は、このパイプ椅子でぶっ飛ばしてさしあげますわ〜  作者: みやもと春九堂@月館望男
【第10部】東の島国・トヨノクニ開国(物理)編 ~悪役令嬢、黒船になる。鎖国? ならば「開国(物理)」して、美味しいお米と温泉をいただきますわ~
94/314

第094話 霊峰フガク山頂ライブ! 全国規模の浄化魔法「豊穣フェス」!

「ううぅ……寒いよぉ、高いよぉ……」


 霊峰フガクの五合目。


 わたし、アリスは杖を杖代わりに(ややこしい)つきながら、急な山道を登っていた。


 息が切れる。空気が薄い。


 でも、弱音を吐いている場合じゃない。レヴィちゃんが最前線で戦っているんだもの。相棒の私が、ここで踏ん張らなきゃ女が廃る!


「アリス様、もう少しです! ……頂上の祭壇が見えてきました!」


 先導するカエデちゃんが、忍びの健脚で軽々と岩場を飛び越えていく。


「アリスさん! 栄養補給です! 特製ドリンクをどうぞ!」


 ミリアちゃんが、自分の体より大きなリュックを背負っているのに、平然とした顔で水筒を差し出してくる。


「ありがとう……! 生き返るぅ……」


 甘い蜜の味。疲れが吹き飛ぶ。


 私たちはついに、雲海を見下ろす頂上へとたどり着いた。


 そこには、古びた石の祭壇があった。かつてはこの国を守護する神々が祀られていた場所。


 けれど今は、どす黒いヘドロのような瘴気に覆われ、石像はひび割れている。


「……ひどい」


 私は胸が痛んだ。


 耳を澄ますと、聞こえてくるのは風の音だけじゃない。


『腹減った……』『力が出ない……』『もう無理……』


 そんな、弱々しい神様たちの嘆きの声が、大地から響いてくる。


 将軍家の持つ妖刀『魂喰』は、人だけでなく、土地神様たちのエネルギーまで吸い上げていたんだ。


 神様たちが弱っているから、大地は枯れ、作物が育たない。負の連鎖だ。


「……許せない」


 私は『星光の聖杖』を強く握りしめた。


 レヴィちゃんが怒るのも無理はない。みんながお腹いっぱい食べられないなんて、そんな悲しい世界、私も大っ嫌いだ!


「ミリアちゃん! 準備をお願い!」


「はいッ! 『タカニシキ』の米粉と、オワリの赤味噌で作った特製饅頭、展開します!」


 ミリアちゃんがリュックを開けると、そこから湯気を立てるセイロが現れた。


 蓋を開けると、ふっくらとした茶色いお饅頭がぎっしり。


 甘じょっぱい味噌の香りが、頂上の冷たい空気に広がる。


「神様たちー! ご飯の時間だよー!!」


 私は杖をマイクのように構え、空に向かって叫んだ。


 詠唱? 祝詞? アイドルライブ?


 今はそんなのはナシ! レヴィちゃん流に行くよ!


「元気がないなら、美味しいものを食べよう! 悲しいなら、甘いものを食べよう! 私たちが作った、最高のお供え物だよ!」


『星光の聖杖』で霊峰フガクのマナを、そして瘴気すらも吸収してエネルギーに変換していく。


 杖から腕へ、腕から身体へ、そしてわたしの「根源」にある「光」へと繋ぎ、また杖へと回し、杖の先端から、光の魔力を放出させる。


 それは攻撃魔法じゃない。


 お饅頭の匂いと、私たちの「食べて元気になってほしい」という祈りを乗せた、暖かな波動。


『……いい匂いじゃ』


『これは……味噌か?』


『懐かしい……人の祈りの味がする……』


 瘴気の奥から、小さな光の玉がいくつも現れた。


 土地神様たちだ。彼らはフラフラと引き寄せられ、祭壇に置かれた饅頭に吸い付いていく。


「おかわりもたくさんありますよ! 沢山食べてくださいね!」


 ミリアちゃんが神様(光の玉)にお饅頭を食べさせてあげている。


 パクパク、モグモグ。


 神様たちが食べるたびに、その光が強くなっていく。


 くすんでいた色が、鮮やかな金色や緑色に戻っていく。


『うまい……!』


『力が……湧いてくるぞ!』


『なんという生命力じゃ! この米、タダモノではない!』


 神様たちが復活していく。


 タカニシキに込められた、レヴィちゃんの不屈の魂と、ミリアちゃんの執念が、神様たちの胃袋(?)を満たしたんだ!


「さあ、お腹がいっぱいになったら、お仕事の時間だよ!」


 私は杖を高々と掲げた。


 今こそ、あの大技を使う時。


「トヨノクニ西の地の神様、全員集合! ……みんなの元気を、私に貸して! 


 ――超広域・浄化儀式(グランド・フィナーレ)!! 『国土豊穣(ハーベスト)大結界(フェスティバル)』ッッ!!」


 カッッッ!!!!


 フガクの頂上から、太陽よりも眩しい光の柱が天を貫いた。


 その光は成層圏で弾け、巨大なドームとなってトヨノクニの西側半分を覆い尽くす。


 光の雨が降り注ぐ。


 龍脈に力が戻り、枯れた大地に緑が蘇り、濁った水が清流に変わり、人々の心にかかっていた「諦め」という名の靄が晴れていく。


 そして。


 行き場を失った黒い瘴気は、東へと押しやられ――すべて、エド城の一点へと集束していく。


「やった……! これで、将軍は丸裸だよ!」


 私はへなへなと座り込んだ。魔力切れだ。


 でも、心地よい疲れ。


「あとは頼んだよ、レヴィちゃん。……黒幕の横っ面に、特大の一発をお見舞いしてやって!」


 東の空、黒い雲が渦巻く彼方へ、私は祈りを込めてエールを送った。




 ◆◆◆ 幕間:脚本家の絶望 ~管理者権限(アドミン)が応答しない~


 関ヶ原を突破され、レヴィーネ・ノブナガ連合軍が東海道を爆走してくる。


 その勢いは止まらない。


 海からは謎の黒船(ヴィータヴェン号)が艦砲射撃を行い、陸からは黒鉄隊が道を切り開き、空には花火が上がっている。


「ええい、認めん! こんな『喜劇』は認めんぞ!」


 脚本家は玉座から立ち上がり、妖刀を振りかざした。


 彼はこの世界における「演出家」だ。災害を起こし、進軍を阻むことなど造作もないはずだった。


「強制イベント発動! 『東海道・大地震』ッ!!」


 ……シーン。


 何も起きない。鳥が鳴く声だけが聞こえる。


「……あ、あれ? おかしいな」


 彼は冷や汗を流しながら、再度叫んだ。


「ど、土砂崩れだ!! 箱根の山よ、崩れ落ちて彼らを埋め尽くせ!!」


 ……シーン。


 山は微動だにしない。むしろ、アリスによって浄化された土地神たちが「ようこそおいでなさいました」と道を整えている気配さえある。


「や、山火事!! 洪水!! 隕石!! ……な、なぜだ!? なぜ発動しない!?」


 彼は妖刀を見つめた。刀身の輝きが消えかかっている。


 モニターの隅に、警告文が表示されているのが見えた。


『ERROR:アクセス権限がありません。現在の管理者=【光と闇のタッグチーム】』


「りゅ、龍脈を……あいつらに抑えられているだとぉぉぉッ!?」


 脚本家は膝から崩れ落ちた。


「私の……私の世界が……! 物理と筋肉と食欲に乗っ取られていくぅぅぅッ!!」


 そして、遠くからドゴォォォン!! と城門が物理的に粉砕される音が響いた。


 主役(悪役)の到着である。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
西日本とか日本列島とかになってますけど…トヨノクニでは…?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。