表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢の兇器はドス黒い鈍器《パイプ椅子》です ~前世は病弱、今世は物理最強。魔法もチートも私には勝てません~  作者: 月館望男
【第10部】東の島国・トヨノクニ開国(物理)編 ~悪役令嬢、黒船になる。鎖国? ならば「開国(物理)」して、美味しいお米と温泉をいただきますわ~
92/176

第092話 黒鉄隊、爆誕:農具は武器、筋肉はエンジン! ミリア式「魔導農業外骨格」で大地を耕せ!

 オワリでの同盟締結から数日。

 わたしたちは、来るべき決戦――そして何より、この国の食糧危機を救うための土台作りに着手していた。


 オワリ領内の広大な荒地。

 かつては戦場となり、あるいは妖刀の瘴気に当てられて放置されていた不毛の大地だ。

 そこに集められたのは、相撲大会でわたしの「物理」に魅了された力自慢たち、食い詰めた浪人、そして「腹一杯飯が食える」という噂を聞きつけた痩せこけた農民たちだ。

 総勢、五百名。


「いいこと? よくお聞きなさい!」


 わたしは急造の朝礼台(大岩)の上に立ち、彼らを見下ろした。


「あなたたちは今日から、ただの兵士でも農民でもない。……わたしの直轄部隊、『黒鉄隊(くろがねたい)』よ!」


 どよめきが走る。彼らの多くは飢えと戦乱で体力を失っており、「俺たちに何ができるんだ」という不安な目をしている。

 無理もない。(くわ)を振るう腕力さえ残っていない者もいるのだから。


「安心しなさい。……今のあなたたちが弱くても関係ないわ。あなたたちには、最強の『翼』を授けるもの。ミリア、アレを!」


「はいッ! お任せください!」


 ミリアが巨大リュックから図面を取り出し、リョウマが手配したオワリの「カラクリ職人」たちに合図を送る。

 そして、運び込まれた木箱が開けられた。


 そこに入っていたのは、木と鉄、そして微弱な光を放つ魔石回路で構成された、奇妙な骨組みのような装具だった。


「名付けて『魔導農業外骨格・豊穣壱型(ハーベスト・ワン)』です!」


 ミリアが眼鏡をクイッと押し上げ、熱っぽく解説を始める。


「私の実家、コーンフィールド男爵家は『帝国一の農業技術』を持ちながら、開発に金をかけすぎて貧乏になった家系です……。今も領地で研究を続けている父から送られてきた『究極の農具理論』に、トヨノクニの精巧な『カラクリ技術』、そして無人島のダンジョンで解析した『古代文明の動力伝達機構』を融合させました!」


「が、外骨格……?」

 農民の一人がおずおずと尋ねる。


「はい! 簡単に言えば『着る農具』です! 背中の魔石エンジンが筋肉の動きを感知し、バネと歯車の力で出力を十倍に増幅します!」


 ミリアは一番ひ弱そうな老人を指名し、外骨格を装着させた。

 背負うような形で装着し、腕と足に木製のフレームを固定する。見た目は少々武骨だが、関節部分は滑らかに動くようだ。


「さあ、その(くわ)を振り下ろしてみてください! 軽くでいいですよ!」


「こ、こうか……?」


 老人が恐る恐る鍬を振り上げる。

 すると、ヒュンッ! と風切り音が鳴り、背中の魔石エンジンが唸りを上げた。


 ブロォオォン!!

 ズドォォォォンッ!!!


 鍬が岩盤混じりの地面に深々と食い込み、周囲の土を一気に跳ね上げた。

 老人はふらつくこともなく、キョトンとしている。


「な、なんじゃこりゃ!? わしは力なんて入れとらんぞ!?」

「鍬が……勝手に動くようだ!」

「すげぇ! 俺でも岩が砕けるぞ!」


「すごいですわね、ミリア。これなら、体力が落ちている彼らでも即戦力よ」


「はい! しかもこの外骨格、鍬を槍に持ち替えれば、そのまま『強化兵』として戦えます。……父も常々言っていました、『農作業の動きは武術に通ずる』と!」


 農具は武器。筋肉はエンジン。

 その概念を具現化したミリアの発明に、男たちの目が輝き出した。

 それは、失われていた「自信」と「希望」の光だ。


「これなら……俺たちでもやれる!」

「飯を食うために、耕すぞ!」


 五百人の黒鉄隊が、一斉に魔導外骨格を装着する。

 カシャン、カシャンと、小気味よい駆動音が荒野に響き渡る。

 それはまるで、新しい時代の足音のようだった。


「総員、構え!」


 わたしの号令に合わせ、機械仕掛けの農民たちが鍬を構える。


「耕せェェェッ!!」


 ズドガガガガガガッ!!!


 地響きが鳴り響く。

 それは農作業ではない。大地への絨毯爆撃だ。

 荒地があっという間に掘り起こされ、リョウマが海外から調達した肥料「グアノ」が混ぜ込まれ、豊かな黒土へと変わっていく。


 その光景を見ながら、わたしは確信した。

 この「工兵集団」がいれば、どんな荒地も農地に変え、どんな城壁も粉砕できると。


「……いいわね。これなら、国中の荒地を農地に戻せるわ」


 武器を捨て、外骨格(パワードスーツ)を纏え。

 それが、わたしたちの新しい戦い方だ。


◆◆◆ 幕間:脚本家の憂鬱 ~ジャンル違いも甚だしい~


 エド城、天守閣の最上階。

 薄暗い部屋で、妖刀『魂喰(たまくらい)』を通じ、将軍ムネノリの身体を乗っ取った存在――「脚本家(スペクテイター)」は、水晶玉に映るオワリの光景を眺め、優雅にワイン(に見せかけた生き血)を揺らしていた。


「ククク……。愚かな。農民などに武器を持たせたところで、何になる。烏合の衆が精鋭に蹂躙され、死屍累々となる……それこそが『戦乱の悲劇』の醍醐味よ」


 彼は、予定調和の虐殺劇を期待して、水晶玉を覗き込んだ。

 だが、そこに映っていたのは――。


 『ズガガガガガッ!!』

 『うおりゃあぁぁぁ! 岩盤ごと粉砕だァァ!』


 背中に奇妙な機械(外骨格)を背負い、蒸気と魔力を噴き出しながら、音速で鍬を振るう農民たちの姿だった。

 彼らは岩を砕き、木をなぎ倒し、時には襲ってきた野党や魔獣を「ついで」のように農具で撥ね飛ばしている。


 ガシャン。

 脚本家の手から、グラスが滑り落ちた。


「……は?」


 彼は水晶玉を二度見、三度見し、そして絶叫した。


機動歩兵(パワードスーツ)とかズルいだろォォォッ!!?」


 彼はテーブルをバンバンと叩いた。


「ここは何時代だ!? 中世ファンタジー風の戦国時代だぞ!? なんで農民がSF映画みたいな動きをしているんだ!? ジャンルが違うだろうが!! 私の書いた『竹槍で突撃して散る儚い命』のシナリオを返せぇぇッ!!」

まさかのパワードスーツ農法。ミリアの発明が火を噴きます。農民たちの逆襲が始まります。


「SF農法」にロマンを感じた方は、ブックマークをお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ