第092話 黒鉄隊、爆誕:農具は武器、筋肉はエンジン! ミリア式「魔導農業外骨格」で大地を耕せ!
オワリでの同盟締結から数日。
わたしたちは、来るべき決戦――そして何より、この国の食糧危機を救うための土台作りに着手していた。
オワリ領内の広大な荒地。
かつては戦場となり、あるいは妖刀の瘴気に当てられて放置されていた不毛の大地だ。
そこに集められたのは、相撲大会でわたしの「物理」に魅了された力自慢たち、食い詰めた浪人、そして「腹一杯飯が食える」という噂を聞きつけた痩せこけた農民たちだ。
総勢、五百名。
「いいこと? よくお聞きなさい!」
わたしは急造の朝礼台(大岩)の上に立ち、彼らを見下ろした。
「あなたたちは今日から、ただの兵士でも農民でもない。……わたしの直轄部隊、『黒鉄隊』よ!」
どよめきが走る。彼らの多くは飢えと戦乱で体力を失っており、「俺たちに何ができるんだ」という不安な目をしている。
無理もない。鍬を振るう腕力さえ残っていない者もいるのだから。
「安心しなさい。……今のあなたたちが弱くても関係ないわ。あなたたちには、最強の『翼』を授けるもの。ミリア、アレを!」
「はいッ! お任せください!」
ミリアが巨大リュックから図面を取り出し、リョウマが手配したオワリの「カラクリ職人」たちに合図を送る。
そして、運び込まれた木箱が開けられた。
そこに入っていたのは、木と鉄、そして微弱な光を放つ魔石回路で構成された、奇妙な骨組みのような装具だった。
「名付けて『魔導農業外骨格・豊穣壱型』です!」
ミリアが眼鏡をクイッと押し上げ、熱っぽく解説を始める。
「私の実家、コーンフィールド男爵家は『帝国一の農業技術』を持ちながら、開発に金をかけすぎて貧乏になった家系です……。今も領地で研究を続けている父から送られてきた『究極の農具理論』に、トヨノクニの精巧な『カラクリ技術』、そして無人島のダンジョンで解析した『古代文明の動力伝達機構』を融合させました!」
「が、外骨格……?」
農民の一人がおずおずと尋ねる。
「はい! 簡単に言えば『着る農具』です! 背中の魔石エンジンが筋肉の動きを感知し、バネと歯車の力で出力を十倍に増幅します!」
ミリアは一番ひ弱そうな老人を指名し、外骨格を装着させた。
背負うような形で装着し、腕と足に木製のフレームを固定する。見た目は少々武骨だが、関節部分は滑らかに動くようだ。
「さあ、その鍬を振り下ろしてみてください! 軽くでいいですよ!」
「こ、こうか……?」
老人が恐る恐る鍬を振り上げる。
すると、ヒュンッ! と風切り音が鳴り、背中の魔石エンジンが唸りを上げた。
ブロォオォン!!
ズドォォォォンッ!!!
鍬が岩盤混じりの地面に深々と食い込み、周囲の土を一気に跳ね上げた。
老人はふらつくこともなく、キョトンとしている。
「な、なんじゃこりゃ!? わしは力なんて入れとらんぞ!?」
「鍬が……勝手に動くようだ!」
「すげぇ! 俺でも岩が砕けるぞ!」
「すごいですわね、ミリア。これなら、体力が落ちている彼らでも即戦力よ」
「はい! しかもこの外骨格、鍬を槍に持ち替えれば、そのまま『強化兵』として戦えます。……父も常々言っていました、『農作業の動きは武術に通ずる』と!」
農具は武器。筋肉はエンジン。
その概念を具現化したミリアの発明に、男たちの目が輝き出した。
それは、失われていた「自信」と「希望」の光だ。
「これなら……俺たちでもやれる!」
「飯を食うために、耕すぞ!」
五百人の黒鉄隊が、一斉に魔導外骨格を装着する。
カシャン、カシャンと、小気味よい駆動音が荒野に響き渡る。
それはまるで、新しい時代の足音のようだった。
「総員、構え!」
わたしの号令に合わせ、機械仕掛けの農民たちが鍬を構える。
「耕せェェェッ!!」
ズドガガガガガガッ!!!
地響きが鳴り響く。
それは農作業ではない。大地への絨毯爆撃だ。
荒地があっという間に掘り起こされ、リョウマが海外から調達した肥料「グアノ」が混ぜ込まれ、豊かな黒土へと変わっていく。
その光景を見ながら、わたしは確信した。
この「工兵集団」がいれば、どんな荒地も農地に変え、どんな城壁も粉砕できると。
「……いいわね。これなら、国中の荒地を農地に戻せるわ」
武器を捨て、外骨格を纏え。
それが、わたしたちの新しい戦い方だ。
◆◆◆ 幕間:脚本家の憂鬱 ~ジャンル違いも甚だしい~
エド城、天守閣の最上階。
薄暗い部屋で、妖刀『魂喰』を通じ、将軍ムネノリの身体を乗っ取った存在――「脚本家」は、水晶玉に映るオワリの光景を眺め、優雅にワイン(に見せかけた生き血)を揺らしていた。
「ククク……。愚かな。農民などに武器を持たせたところで、何になる。烏合の衆が精鋭に蹂躙され、死屍累々となる……それこそが『戦乱の悲劇』の醍醐味よ」
彼は、予定調和の虐殺劇を期待して、水晶玉を覗き込んだ。
だが、そこに映っていたのは――。
『ズガガガガガッ!!』
『うおりゃあぁぁぁ! 岩盤ごと粉砕だァァ!』
背中に奇妙な機械を背負い、蒸気と魔力を噴き出しながら、音速で鍬を振るう農民たちの姿だった。
彼らは岩を砕き、木をなぎ倒し、時には襲ってきた野党や魔獣を「ついで」のように農具で撥ね飛ばしている。
ガシャン。
脚本家の手から、グラスが滑り落ちた。
「……は?」
彼は水晶玉を二度見、三度見し、そして絶叫した。
「機動歩兵とかズルいだろォォォッ!!?」
彼はテーブルをバンバンと叩いた。
「ここは何時代だ!? 中世ファンタジー風の戦国時代だぞ!? なんで農民がSF映画みたいな動きをしているんだ!? ジャンルが違うだろうが!! 私の書いた『竹槍で突撃して散る儚い命』のシナリオを返せぇぇッ!!」
まさかのパワードスーツ農法。ミリアの発明が火を噴きます。農民たちの逆襲が始まります。
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