第074話 【サンルーチャ編完結】出航:アディオス、アミーゴ。……次は「和風ファンタジー(東の島国)」へ殴り込み!?
騒乱から数日後。
サン・ルーチャ王国は、生まれ変わろうとしていた。
カルテルは解体され、構成員たちは自ら進んで街の清掃や復興に汗を流している(サボろうとすると、どこからともなく椅子の影が見えるらしい)。
エル・ソルも、罪を償った後は一から出直すと誓い、まずは子供たちにレスリングを教えるボランティアを始めていた。
そして、わたしたちは。
「……本当に行っちゃうの、姐さん?」
港で、レオが寂しげに尋ねる。
彼は今、新しいチャンピオンとして、子供たちのリーダーとして、小さな胸を張って生きていた。
「ええ。ここはもう暑すぎるもの」
わたしは海風に髪をなびかせ、笑った。
「それに、わたしは『悪役』よ? 平和になった国に、悪役の居場所はないわ」
「……そっか」
レオは鼻をすすり、そしてニカッと笑った。
「ありがとう、姐さん。……俺、もっと強くなるよ。いつか、姐さんみたいにカッコいいルチャドールになるよ!」
「期待しているわ。……その時は、また一番前の席で見てあげる」
船の汽笛が鳴る。
アリスとミリアが、タラップの上から手を振っている。
「レヴィちゃーん! 早く早くー! 朝ごはんの準備できてるよー!」
「レヴィーネ様! 今回の旅で仕入れたスパイスを使った新作カレーですよー!」
わたしは苦笑しながら、レオに背を向け、歩き出した。
別れの言葉はいらない。
ただ、背中で語るのみ。
「アディオス、アミーゴ」
呟きと共に、わたしは船へと乗り込んだ。
船が港を離れていく。
見送る人々の歓声と、陽気なマリアッチの音楽が、潮風に乗って聞こえてくる。
その音色は、来た時とは違う、本当の喜びに満ちていた。
「さて……次はどこへ行きましょうか」
わたしは甲板で、世界地図を広げた。
東の果て。味噌と醤油の故郷。そして、カタナとサムライの国。
「……やっぱり、『東』かしらね」
アリスが横から覗き込み、目を輝かせた。
「賛成! お米が食べたい! 温泉に入りたい! それに、サムライとかニンジャとか、素材の宝庫だよ!」
「私もです! 新商品のアイデアが湧いてきそうです! 噂に聞くナットーとかあるんでしょうか!?」
ミリアも賛同する。
どうやら、次の目的地は決まりのようだ。
わたしは「漆黒の玉座」に腰掛け、東の空を見つめた。
そこには、また新しい理不尽と、へし折り甲斐のある強敵たちが待っているはずだ。
「行くわよ、相棒。……世界征服の旅は、まだまだこれからよ!」
最強の悪役令嬢を乗せた船は、白い航跡を残して、大海原へと進んでいった。
平和になった国に悪役の居場所はない。レオとの別れを経て、一行は次なる目的地へ。目指すは東の果て、ミソとショーユとカタナの国! 第8部・ルチャリブレ編、完結です!【第8部完結】
第8部も最後までお付き合いいただきありがとうございました! 次章、いよいよ和風な国での大暴れにご期待いただける方は、評価とブックマークを何卒よろしくお願いいたします!




