第061話 熱演:会場に響く「くっ、殺せ!」。……もっと罵りなさい! 観客のブーイングこそが悪役の栄養源です!
メインイベント。
会場は、これまでにない異様な熱気に包まれていた。
これまでの連勝でわたしのファンになった者たちと、金を吸われ続けてわたしを憎むアンチたち。その両方の視線が突き刺さる。
わたしは再びデカゴンのマットに立った。
対面に立つのは、身長3メートルはある巨漢、獣王ガルフ。全身が剛毛に覆われ、目は赤く光っている。
ゴングが鳴る。
ガルフが咆哮と共に突っ込んでくる。
「グォオオオオッ!!」
丸太のような腕が振り下ろされる。
いつもならデコピンで迎撃するところだが、今回は違う。
(――受けるッ!)
わたしは身体強化の出力を極限まで落とし、筋肉の鎧をあえて緩めた。
そして、その一撃を身一つで受け止めた。
ドガァッ!!
派手な音が鳴り、わたしは後方へ大きく吹き飛んだ。
金網に激突し、がっくりと膝をつく。
「ぐっ……! な、なんて重い一撃……!」
わたしは口の端を切って(自力で噛んで)血を流し、苦悶の表情を浮かべた。
観客が沸く。「おい見ろ! あの女が吹っ飛んだぞ!」「ざまあみろ!」「ガルフ、もっとやれ!」
(ふふっ、いいわ。今の受け身、完璧だった! ダメージはゼロだけど、見た目のインパクトは十分!)
ガルフが追撃してくる。
蹴り、踏みつけ、投げ。
わたしはそれら全てを「あえて」食らい、悲鳴を上げ、ボロボロになっていく(フリをする)。
コスチュームが破れ、バンダナが飛び、美しい金髪が乱れる。
ガルフがわたしの髪を乱暴に掴み、強引に引き起こす。
「これ以上ない屈辱的な負け方をさせろというオーダーでな。まだまだ嬲らせてもらうぞ」
ガルフが嗜虐的な笑みを浮かべて囁く。
ああ、なんて三流な悪役台詞。最高だわ。
わたしは涙目で、震える唇を開いた。
「……くっ……! 私を……辱める気……? くっ、殺せ……! 辱めを受けるくらいなら、いっそひと思いに……殺しなさい!」
会場が一瞬、静まり返る。
そして次の瞬間、爆発的な歓声と罵声が渦巻いた。
観客たちは、強者が地に落ち、プライドをへし折られる瞬間に酔いしれている。
最高だ。このドロドロとした欲望の渦こそが、わたしが求めていた「熱」だ。
(完璧……! 今のわたし、最高に「悲劇の悪役」してるわ! もっとブーイングを! その野次がわたしのエネルギーになるのよ!)
牢屋のモニターで見ていたアリスが「レヴィちゃん、ノリノリだなぁ……」と呟き、ミリアが「あの角度! 一番美しく、かつ儚げに見える計算された倒れ方です! さすがレヴィーネ様!」と絶賛しているのが目に浮かぶようだ。
さあ、溜めに溜めたヘイト。
そろそろ、解放の時が近い。
完璧な「くっ殺」ムーブでしたね(?)。観客の憎悪と熱狂が最高潮に達したこの瞬間こそ、カウンターの絶好機です。溜めに溜めたフラストレーション、次回一気に解放します!
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