第060話 八百長依頼:悪役令嬢に「無様に負けろ」ですって? ……面白い、最高の「ピエロ」を演じて差し上げます
試合後、VIPルーム。
ゴルドーは、今にも血管が切れそうな形相でわたしに怒鳴り散らしていた。
「貴様ァッ!! 勝ちすぎだと言っているんだ!! これ以上勝たれては、胴元が破産する!!」
「あら、勝てるもんなら勝てと言われたから勝っただけですわよ?」
「黙れ! これはショーだ! ビジネスだ! お前が勝つだけの試合など、誰も望んでいないんだよ!」
ゴルドーはバンと机を叩いた。
「次のメインイベント。相手は絶対王者『獣王ガルフ』だ。……いいか、この試合、貴様は負けろ。無様に、一方的に痛めつけられてな!」
彼はモニターを指差す。そこには、どうやってもちこんだのか魔導暖房付き座卓に肩までもぐって、すっかり堕落しきってくつろぐアリスたちの姿があったが、ゴルドーはそれに気づいていないのか、あるいは無視しているのか、脅し文句を続けた。
「断れば、人質の命はない。……指の一本ずつから送ってやろうか?」
――来た。
わたしは扇子で口元を隠し、内心で喝采を叫んだ。
(キタキタキタァァ! 卑怯な運営による理不尽な敗北命令! これぞヒールが最も輝くための土壌!!)
わたしは震える声(演技)で答えた。
「……わかりましたわ。人質の命には代えられませんもの」
「フン、分かればいい。……ガルフは強いぞ。手加減などできんからな」
「ええ……。仰せのままに」
うつむくわたしの顔は、絶望ではなく、歓喜に歪んでいた。
さあ、最高の「負け役」を演じてあげようじゃないの!
来ました、「八百長破り」のフラグ……ではなく、今回はあえて「負けシナリオ」を飲む展開です! ヒールにとっては最高の見せ場への招待状。次回、デカゴンに悲鳴とブーイングが響き渡ります!
悪役令嬢の「負け演技」にワクワクしてきた方は、ブックマークをしてお待ちください!




