表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢の兇器はドス黒い鈍器《パイプ椅子》です ~前世は病弱、今世は物理最強。魔法もチートも私には勝てません~  作者: みやもと春九堂@月館望男
【第11部】トヨノクニ黄金狂時代(ジパング・ラプソディ) ~技術と筋肉の力技で、数百年分の文明開化を「強制執行」しますわ~
116/197

第116話 黄金のトライアングル完成。最強の悪役令嬢と、最高の共犯者たち。

 神仏の名を借りて私腹を肥やす輩が、よくもまあ抜け抜けと。


「……あら」


 わたしは小首をかしげ、心底不思議そうに尋ねた。


「特に信仰を持たない悪役令嬢にも、そんなサービスがあるの?」


「は……?」


 僧兵長が呆気に取られた、その一瞬の隙。


 わたしは踏み込んだ。


「だったら、チップを弾んであげなくてはいけませんわね!!」


 ドォォォォンッ!!!


 わたしの右足が、石畳を踏み砕く。


 身体強化フルパワー。


 わたしは足元の影から『仏罰(物理)』を取り出した。


 すなわち、相棒『漆黒の玉座(オリジン)』。


「これがわたしの『お布施』よッ!!」


 ズガンッ!!!


 横薙ぎに一閃された玉座が、僧兵長の構えた薙刀を飴細工のようにへし折り、そのまま彼の横っ面を捉えた。


 彼はコマのように回転しながら吹き飛び、山門の太い柱に激突した。


 メリメリメリッ……ズドーン!


 轟音と共に柱がへし折れ、立派な山門が屋根ごと崩落する。


 土煙が舞い上がる中、わたしは瓦礫の上に「玉座」を置き、優雅に足を組んで座った。


「ひ、ひぃぃッ!?」


「山門が……一撃で!?」


 残りの僧兵たちが腰を抜かす。


 わたしは鉄扇を開き、ニッコリと笑った。


「さて。……『仏罰』とやら、まだ在庫はあるのかしら? うちは『年中無休』で引き受けますわよ?」


『補足。……抵抗する場合は、衛星軌道上からの「質量弾投下」によるピンポイント爆撃もオプションとして用意されています』


 イリスが無慈悲な提案を付け加える。


「い、いやぁぁぁ! 助けてくれぇぇ!」


「悪魔だ! 本物の羅刹だぁ!」


 僧兵たちが武器を捨てて逃げ惑う。


 勝負ありだ。


「……ミリア、アリス。あとは任せたわ」


「はいッ! 回収班、突入します! 隠し財産、1ベルたりとも見逃しません!」


 ミリアが黒鉄隊(運搬係)に指示を飛ばし、雪崩れ込んでいく。


「も~、レヴィちゃんったら派手すぎだよぉ……。怪我人は……そりゃいるよね。治癒魔法かけとくよ~」


 アリスが苦笑しながら、気絶した僧兵たちに杖を振るう。


 こうして、悪徳寺社の「物理的浄化」は、滞りなく(破壊的に)遂行されたのだった。


 ◆◆◆



 その夜。


 オワリ城下の一等地にそびえ立つ、V&C商会仮設本店。その最上階にある役員専用テラスは、心地よい夜風と、勝利の美酒の香りに包まれていた。


 眼下には、復興が進むオワリの城下町が広がっている。


 かつては漆黒の闇に沈んでいた街並みも、今は魔導ランプの明かりが星の海のように煌めき、夜遅くまで笑い声が絶えない。


「……随分と、様になってきたわね」


 わたしはテラスの手すりに寄りかかり、手にしたワイングラスを軽く揺らした。


「うん。……みんな、笑ってるよ」


 隣に並んだアリスが、ホットミルクの入ったマグカップを両手で包み込みながら、嬉しそうに目を細めた。


「もう、飢えに苦しむ子供の声は聞こえない。……お母さんが子供を売らなきゃいけないような、悲しい夜は終わったんだね」


 アリスの声が、少しだけ震える。


 彼女が立ち上げた「豊穣慈愛講」は、今やトヨノクニ全土に支部を持ち、孤児院や寺子屋を通じ、万に届くほどの子供たちを保護・育成している。


「ええ。収支も完璧ですよ。……今日の『回収』だけで、向こう三ヶ月分の運営費が賄えます」


 反対側から、パチンと魔導計算機(電卓)を弾く音が響いた。


 ミリアだ。彼女は分厚い革表紙の帳簿を愛おしそうに抱きしめ、眼鏡の奥の瞳を鋭く光らせている。


「寺子屋で読み書き算術を覚えた子供たちは、将来V&C商会の優秀な店員になります。体力をつけた若者は黒鉄隊や建設作業員となり、給料を得て、また我々の商品を消費する。……『情けは人のためならず』とは、実に合理的な経済循環の真理ですね」


 ミリアがニヤリと笑う。


 彼女の手腕がなければ、アリスの理想はただの夢物語で破綻していただろう。


 そして、その頭上には、青白い光の粒子が集まり、古代知性体(人工知能)イリスの姿を形作っていた。


『報告。現在のトヨノクニにおける幸福度指数は、過去100年で最高値を更新。犯罪発生率は98%減少』


「ふふ、イリスも随分と『人間くさい』データを取るようになりましたね」


『否定。私はあくまで効率を……訂正。マスターたちの活動が、数値以上の結果を出していることに興味があります』


 イリスもまた、わたしたちのチームに欠かせない頭脳だ。


 わたしは、グラスの中のワインを飲み干し、ふっと笑った。


「……ねえ、二人とも。それにイリス」


 わたしは空いたグラスを置き、くるりと向き直った。


 アリスとミリアが、不思議そうにこちらを見る。


「正直に言うわ。……わたし一人じゃ、ここまで来られなかった」


 わたしは自分の手を見つめた。


 この手は、敵を殴り、山を崩し、岩盤を穿つことはできる。


 けれど、傷ついた子供の心を癒やすことはできない。複雑な経済の糸を紡ぎ合わせることもできない。


「わたしが『切り開き』、アリスが『種を撒き』、ミリアが『収穫する』。……この役割分担(トライアングル)があったからこそ、この国は救われたのよ」


 わたしの言葉に、二人は顔を見合わせた。


 そして、照れくさそうに、けれど誇らしげに笑った。


「もう、レヴィちゃんったら。……切り開くっていうか、『更地にする』って感じでしょ?」


 アリスがいたずらっぽく笑う。


「そうですね。……私が収穫できるのは、レヴィーネ様が害虫(悪党)を完全に駆除し、(市場)を守ってくださるおかげです」


 ミリアもまた、帳簿を閉じて微笑んだ。


「それに、私一人では計算だけで終わっていました。アリスさんの『想い』がなければ、人は動きません。レヴィーネ様の『暴力』がなければ、理不尽に潰されていました。……私たちは、三人で一つの『会社』なのです」


 そう。誰が欠けてもいけない。


 武力だけでは恐怖政治になる。理想だけでは無力な慈善事業になる。利益だけでは冷酷な搾取になる。


 三つの異なる色が混ざり合い、補い合うことで、初めてトヨノクニという巨大な絵画が描かれているのだ。


 わたしは、近くにあったワインボトルを手に取り、三人のグラス(とカップ)に注いで回った。


「じゃあ、誓おっか! ……これからも、三人で! この国をもっともっと、美味しくて楽しい場所にするって!」


 アリスがカップを掲げる。


「ええ、いいわね。……邪魔する奴は、神様だろうが運命だろうが、全員星にしてあげる」


 わたしがグラスを掲げる。


「はい! その際に発生する修理費と慰謝料は、私が敵から骨までしゃぶって、倍額回収します!」


 ミリアもグラスを掲げる。


 カチン!


 澄んだ音が、夜空に響き渡った。


 それは、ただの乾杯ではない。新しい時代の覇者たちによる、鉄の結束の誓い。


 わたしたち「黄金のトライアングル」は、こうして完成したのだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ