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序人物語  作者: 喉仏
現生世界 中学生編
8/9

第七話 往来の遺言

暑い日差しが全身に差し込む。

体がじわじわと美味しくされていくのが体に伝わる。

風が吹いても暑い体が心を蝕んでいく。

喉が渇いて、汗水垂らす。セミが鳴いてうるさいが

心地のいい音だ。

要するに夏が来たのだ、日本の夏が。


今日はプール当日。

カバンには水着と着替え。往復分のお金だけを突っ込んで電車に乗り込む。

数駅を超えて到着。そこから暑いミンミンロードを

汗水垂らして、「これから冷たい、プールにつかれんだぞ!働けカス共!!」なんてブラック企業の上司が言っていてもおかしくない働きぶりでプールまでの道のりを歩く。


今日のメンバーは原田と稲田、それに上代だ。

人数は少なめ。別のグループもプールに来ているだろうと考えてあえてこの人数にした。

考えたのは俺ではなくら原田だけど、まぁ提案者は俺だから多少威張っても問題ないと思いたい。


それと、夏休みに入ってから、朝のランニングを始めた。筋トレだけやると意味ないんじゃないかな、なんて思ったりしたのだ。将来の夢は明確に決まっている訳では無い。でも何かに役立つと思っている……


――――――――――――――――


「はぁ〜……やっと着いた…どれだけ長かったんだ?」


「言うても500mくらいだ。大した距離じゃない。」


「もういいからはよ入ろう。俺は暑くて死にそうなんだ。原田の頭には入ってるだろ?もう俺たちが限界なこと」


「あぁ、わかってる。それじゃ…入ろっか。」


着替えてシャワーを浴びた。そのまま一旦プールに飛び込んだ。


「ぁぁぁぁぁぃ!気持ちいいぃぃぃぃ!夏だー!」


「おいあんまり騒ぐなよ夢叶。」


「女の子を追いかけるのが今日のミッションだ。見つかったら最後だ。俺たちは警察送りになるやもしれん。各自注意して掛かれ!」


「YES原田」


「YES原田」


「YES原田」


「ダメだー障害ばっかだ」


プールで女の子を追いかけまくった。

あまりに露骨に見すぎて女の子達が逃げ出したこともあった。あんなエッな水着を着るのが悪い。

そもそも見られたいからあんな水着着るんだ。

ならもういっその事……さすがにダメだ。


「いやぁ!プール楽しかったなー!」


「お前が女の子見すぎて帰られたけどな笑」


「まぁ俺は4ケツtouchしてきたから収穫ありだ。」


「いやぁこの後どうすっかだなー」


「みんなどっか行くのか?」


「え?どこも行かないのか?原田どうするんだ?」


「うーん夢叶次第だねー」


「どうする夢叶?」


「今日は解散でいいんじゃないか?」


「まじかーまぁまだ夏休み始まってすぐだもんなー」


「まぁそんなこんなで解散だな……今日おつかれだー」


「うーん!またねー稲田もバイバイんじゃー」


「夢叶もバイバイんじゃー」


「上代様からも一言やろう!バイバイんじゃー」


「バイバイんじゃー」



――――――――――――――――――


帰り道。それは月明かりが顔を出し始めた。


空は紺色。もう夜が訪れを告げていた。

星々は光り、真っ直ぐとこちらを見ていた。

俺はその夜空の中1人寂しく歩いていた。

みんな知らない通り道。俺だけが知っている抜け道だ。

これが青春と言わずなんというのだろうか、そんなことを思っていた。

そして未来のことなんかを思っていたら前から人が歩いてきた。背が高く髪が長い。こんな夜道俺は怖くなった。誰も知らないはずの抜け道に人がいる。


でも、俺はなんだか安心感を覚えていた。顔はまだ見えない。知り合いにそんな人がいたか、脳内で全力往復していたが、見当たらない。


顔が見えた。風がなびくその髪は美しく俺の中では宝石にも見えた。


あぁこんなに美しいのに俺は何をしているんだろう。


その人は同じクラスの女の子だった。その子のことなんか気にも止めていなかった。目立つ子でもない。俺はその子のことを覚えていなかった。


「あ、神谷、」


小さくそう呟いたのが俺には聞こえた。

俺は彼女を覚えていなかったけれど、彼女は俺の事を覚えてくれていたのだ。


声をかけるべきか否か、迷っているうちに海岸線に膝掛けていた。


俺はこの道が好きだ。少しばかり家に帰るには遠回りだけれど、なんというか雰囲気が好きだ。

誰も知らないと思っていた。

けれど彼女知っていた。俺はそれに興味が湧いた。

そんな瞬間彼女は言ってくれた。


「神谷もこの道知ってるんだね。ここの道なんだかいいよね。」


「そうだよな…」


どうしようか、隣に言って話しかけるべきか帰るか…迷いが生じる。


「神谷も…横、来る?」


「あぁ少しお邪魔になるよ。」


良かった。気まずい雰囲気は嫌だからな。


「そういえば、おれ下の名前知らないんだ。教えてくれないか?」


「優香…よ。」


「そうか、優香かぁいい名前だね。」


「そんなこともないわ。私は親が嫌いだから名前はあまり気に入ってはいないわ。」


「なんで親のことが嫌いなんだ?」


「親しくもない人に教えるわけないでしょ…」


「そうか、また仲良くなったらきかせて欲しいな。」


「そういえば。なんでここを知っているの?」


「なんだか、少し前に美しい風景を題材に物語が進む小説を見たんだ。そのとき衝動的に…」


「その本、[ふりがなが振られる理由]って奴でしょ?」


「知ってるの?そう、その中に出てくる星空が上手く見渡せる海岸線を探そうと思って、そしたらこんな場所があったんだ。」


「私もこういう場所が好きなの。落ち着いていられるから。」


「そんな理由があったんだね。まぁ人それぞれ何かあると思うけど、いつか恵まれた日が来ると信じて俺は生きてるよ。」


「あなたも…いや、あなたそんなにロマンチストだったのね。意外だわ。」


「そんなことないよ。俺はこういう雰囲気の場所が好きなんだ。なんというか、世界の美しさを身に染みて実感できるから…なのかな?」


「そうね。それを世間ではロマンチストと言うのだけれど…?」


「えっ!?そうなんだ。物知りだね優香は。」


「そんなこともないわ…今日は時間も遅くなってきたし帰るわ…」


「待って!連絡先…交換しないか?」


何を言っているんだ俺は?あの女の子に何がしたい?あまりに出しゃばったことを言うんじゃない。


「あぁそうね。そういえばあなたと関わりなかったわね。はいこれid」


「ありがとう。また会おうね。」


「ええ。っていうか夏休みが開ければまた学校で会うでしょ?」


「あはは。そうだね。」


「それじゃあ」

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