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偽伝 本能寺の変

作者: 秋鷽亭

此処から周囲を見る事が出来るな。

ああ、あの方角から火の手が上がっているな。

ふむ、確か、あそこには本能寺があったはず、さすれば、あ奴が討たれたか。

明智が仕留める事ができるか。


野心を持つ羽柴を嗾け、気を病んでいた明智を唆し、不満の溜まった三河武士を煽り、公家公卿どもに恐怖を植え付けたが、さて、誰が踊ったのかな。


「殿」

「泰朝か」

「はっ」


泰朝が登ってきたか、流石に大声で話をすることも出来ないな。

手の物を指揮して物見をしてきてくれたか。


「で、何があった」

「桔梗の幟を見ました」

「ほう、では明智が踊ったか」

「そのようです」

「行先は、本能寺か」

「その通りでございます」

「ふふふ」


泰朝の回答には笑うしかない……が、今は夜が暮れている。

下手に大声で笑えば、怪しまれる、残念だ。


「気を病んで、狂うたか、明智よ」


下手に野心があり、気が病めば付け入る隙も多くなるというもの。

公家や公卿も権益が奪われる恐怖を植え付けてやれば、動くと思ったが、明智を動かしたかな。

鞠にいる気狂いも動いたか。


思えば、父義元が討たれて二十数年が過ぎた。

多くの家臣が去って、泰朝など少数だけが付いてきてくれた。

家康の元に行く時は、北条に残って動いてくれたが、信長に会って、その家臣を見て付け入れると感じて、色々動いてもらった。


甲斐の山猿に寝返った者たちには恨みがあるが、今更だな。

力無きものが何を言ったところで。


雪斎の爺には、あの世に行った時に文句を言うしかないか。

家康を鍛え過ぎだと、いや、それを言えば、こちらが軟弱者と叱られるな。


信玄も若いころ、父によって苦い思いをした事だろう。

その意趣返しが私に来るとはな……因果応報は、父に行くべきではないのか、納得いかない。

義兄弟の義信を殺害してまで、駿河に侵攻する冷酷さ、冷徹さには勝てぬ。

豊かな地に住んでいれば、甲斐の貧困さは聞きしても、理解は出来ぬし、そこにある強さも。


あれから北条を頼ったが、氏康殿が健在であれば頼れたが、氏政では先を考える事は出来まい。

いや、氏康殿であっても無理か、北条は京に繋がりがあれど、日ノ本を見ずに、相模以東の旧体制にしか目を向けてなかった。

何れ、織田や徳川に潰されていただろうし、そうでなくば、京を押さえた者に滅ぼされるだろう。


しかし、上手くいきすぎだな。

父の仇の信長を討つことが出来るとは、いや、まだ、分からぬか。


明智には、私以外にも煽ったやつもおろうな。

羽柴と違い、やつは其処までの強い向上心と、強い野心はない。

ただ、歳を取り、信長の過剰な要求に心が付いていかなくなっていたな。

早く隠居できればよかったが、子が幼過ぎたな。


さて、信忠まで討てれば、織田家は崩壊する。

周囲の大名たちも息を吹き返すだろう。


明智がこのまま京をおさえ、朝廷を取り込むことが可能か。

娘婿の細川忠興や組下の筒井はどう動くか。


織田家臣たちも信長の敵を討つ為に、明智討伐に動くだろう。


北の柴田は、上杉がいるから動けまい、無理に動けば上杉も動くだろう。

西の羽柴は、毛利をどうするのか。鞠が動いていれば、毛利に要請するだろう。

東の滝川は、北条が動けば、まだ、統制しきっていない上野や信濃の諸将は離れるだろう。

四国に向かう丹羽は、信孝次第だが、池田も近くにいる。即動くとすればこの者たちか。だが、明智の娘婿の信澄がいるが、もし、内通を疑い殺害すると軍中が落ち着かなくなり、しばらく動けまい。


周囲がごたついていれば、明智が朝廷と鞠の協力を得て、体制を固めるか。

いや、そうだとしても、兵も足りず、謀反と言う瑕疵は、国人たちの信用を得れまい。得るためには、信長を討った正当性と所領の安堵、加増がなければ無理だな。

これは、詰んだな……まあ、私には関係はないか。

父の敵は討てた。


後は、家康が討ち取られれば、満足なんだがな。


「織田家臣の動きと、徳川の動きを知れべて欲しい」

「しばし待てば、手の者から情報が来ると思います」

「よろしく頼む」


はてさて、天下はどうなるかな。

私には関係はない、色々楽しませてもらおうか。

※この物語はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。

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