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「おう、お疲れさま」


「あ、ミルにぃお帰り。

 何か……、すごい汚れたね?」


「あはは、ミルにぃ汚い」


「何していたの?」


「何なに?」


「え?」


 言われて見てみると、確かに服のそこかしこに泥がついている。あ、市場でたまに嫌な眼を向けられていたのは髪色じゃなくてこっちが原因か? いや、まあ両方という可能性が高いけれど。いろんな人が出入りしている分、いろんな視線が増えているから気にしないようにしていた。


「ミルフェ、帰る間に湯浴びてこい。

 報酬はその間に用意しておくから」


「え、でも」


「いいから」


 ほら、と背を押されてしまえば断ることはできない。結局圧に負けて俺は湯を浴びていくことにした。気を使ってくれたのか、チビたちも一緒に浴びていいと言ってくれたのをいいことにみんなで湯を浴びに向かった。


「湯を浴びられるなんて久しぶり!

 ミルにぃのおかげだね」


「俺と言うよりもロアンさんのおかげだけどな」


「それにしてどうしてそんなに汚れたの?」


「ミルにぃやんちゃ?」


「ミルにぃ暴れた?」


「暴れてねえよ。

仕事してたの。

 馬小屋で馬たち相手にしてたら汚れたの」


「ふーん」


 こ、こいつら……。俺がどれだけ頑張ったかも知らずに! そんな話をしていると、浴室へと着いた。慣れたもので、手早く大きな桶に沸かした湯を入れて、そこに水を混ぜて適温にする。ぼんやりしていると湯が冷めてしまうから、服を脱ぐとすぐに石鹸で頭と体を洗った。それを湯で思い切り流すととても気持ちいい。森でもやろうと思えばやれるけれど、いろいろと面倒だからやらないんだよな。どうせならパルキも一緒に浴びられたら良かった。


 チビたちも真似をして体を洗う。皆一仕事終えた後ということもあって心地よさそうだ。体がきれいになったら、外においてある洗い立てのタオルで体を拭く。それからここに来る前に受け取った新しい服を着るとすっかりきれいになった。新しい服までもらってしまって申し訳ない限りだけれど、お礼を言うと端布で作ったものだから、と返ってくる。そんなはずないのに気遣いが嬉しくて、そのまま受け取ることにしていた。


「湯、ありがとうございました。

 服も」


「ああ、お帰り。

 うん、すっかりきれいになったな」


 笑うロアンさんにお礼を言うと、さっそく今日の報酬を受け取る。どうやら俺たちが湯を浴びている間に報告書を読んでいたようだ。


「え、なんだか多くないですか?」


「大活躍だったみたいだからな」


 そういってにやにやとした笑みを浮かべながら、報告書をぺらぺらと仰ぐ。そんなに活躍したか? でももらっていいというならありがたくもらっておこう。


「来れたら明日も来い。

 今度はパルキも一緒にな」


「うーん、パルキの進み具合次第ですかね?

 今が一番売れるだろうし、あれだったら明日はパルキを手伝おうかと」


「ああ、そっちも助かるな。

 まあ来れたらでいいよ」


「それじゃあ、ありがとうございました。

 また」


 おう、と手を振ってくれたロアンさんに頭を下げて部屋を出る。ちょうどいい。帰りにいろいろと買いこもう。自分たちで自足自給できる分はいいのだが、どうしても用意できないものの方が多い。調味料やパンもそうだし、たまには魚もいいかも。あとチビたちの服も買わないと。今が育ちざかりだからな。


 今は市場も活発だ。つまりそれだけ多種多様な品がそろっているということ。ちょうど多めにお金も受け取ったし、いいチャンスだ。


「シャレット、帰りに買い物してくぞ」


「はーい」


「買い物⁉」


「ミルにぃ買い物してくの?」


「おう。

 ラン、リリ、何か好きな服選んでいいぞ」


 そう言って、そっくりなようで違う双子の頭を撫でる。あの家の最年少2人はくるくると変わる表情でみんなから愛されている。今もやったー! と喜ぶ様子が可愛らしい。それから、とその隣にいるポールにも目を向ける。


「もちろんポールも」


「え、僕も?」


「もちろん。

 みんな頑張っているからな。

 ただ食材も買いたいから、荷物持ちは頼んだぞ」


「うん!」


「え、ミルにぃ俺は?」


「シャレットももちろん。

 あ、だけど皆一着ずつな。

 ロアンさんからももらったし

 あとは布でも買うか」


「ミルにぃとパルにぃは?」


「ん?

 俺もパルキもいらないよ」


 別に布があれば作れるし、ルータさんが残したものもまだある。それに時々こうしてロアンさんにももらっているし。今回のはご褒美的な意味合いが強い。


「うん……、分かった」


 どこか気まずそうにこっちを見ているけれど、本当に気にしなくていいんだが。俺もパルキも別に服にこだわりないし。ひとまずにぎわう市場に足を向けると4人にそれぞれ好きなものを選ばせる。シャレットに適当にお金を渡すと、俺は先に食材の方へと足を向けた。


 俺たちの次に年上なこともあって、ついついシャレットにはいろいろと任せがちだ。それでも率先して年下の面倒を見てくれている姿は嫌そうではない。よな? うん、ごめんだけど、頼らせてもらおう。



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