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悪野達の襲撃(後編)

「死ねやあぁぁぁ! 陰キャあぁぁぁぁ!!」


「佐奈ちゃん! 兄さんを連れて逃げて!!」


「まーくん、こっち!!」


 ナイフを持って悪野達がまっすぐにこっちへ向かってくる。

 真由が佐奈に俺を連れて逃げるように指示。

 佐奈はすぐに俺の腕を取って、俺を引っ張るように校舎内へと逃げ込む。


「逃がさねぇよぉぉ!!」


「貴方たち、邪魔!」


「ぐわっ!」


「ぎゃっ!!」


「あぐっ!!」


 校舎内に逃げ込んだ俺と佐奈は遠くから久留里校長がナイフを持つ手を叩いてナイフを落としてから蹴りで相手を沈めていた。

 そこに警察が駆け込んで、悪野達を逮捕しようとする。


「兄さん!」


「佐奈! まーくん!!」


「二人とも大丈夫か!?」


「うん。 すぐにここに逃げ込んだから。 今、警察が動いてるんだよね」


 久留里校長が全てを任せてくれたのか、真由や奈々、啓介もこっちに来た。

 見たところ、悪野達は警察に取り押さえられている。


「念のため、保健室まで移動しようか。 まーくんの顔色が悪くなってる」


「あっ!」


「そうだね。 兄さん、歩ける?」


「ああ、何とかな」


 佐奈に指摘されるまで、気付かなかったみたいだが、どうも俺の顔色が悪くなってるらしい。

 トラウマを飯のタネにしていじめて来た奴らだからか、発症したみたいだ。

 とりあえず、佐奈に抱えられながら保健室に向かう。


「行かせねぇぞ! 陰キャぁぁぁぁ!!」


「え!?」


「悪野!?」


「警察から振り切ったの!?」


 そこに警察の確保から振り切った悪野が再度ナイフを持って襲ってきた。

 どうしても俺を殺したいのか、こいつは……!


「死ねよやぁぁぁぁぁ!!」


「不味い!」


「兄さん!!」


 逃げようにも佐奈に抱えられてる状況。

 下手したら、佐奈にその刃が刺さってしまう。

 そう思った瞬間、俺の頭が真っ白になった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


【Side 真由】


「あああああああっ!!」


「兄さん!?」


 悪野の凶刃が兄さんと佐奈ちゃんに迫る中、何があったのか兄さんは、佐奈ちゃんを振りほどいてから叫びながら悪野に蹴りを入れた。


「ぐぼおぉぉぉっ!?」


 その蹴りが見事に悪野の腹部にヒットし、ナイフを落として蹲る。


「うぐうっ!!」


「まーくん!!」


 兄さんもすぐに、口を押えて蹲る。

 トラウマを発症したまま、悪野に蹴りをいれたのだ。

 本当に無茶をしてくれるよ……。


「悪野を確保! 警察に連行します!!」


「正樹くん!」


 警察が駆け寄り、悪野を確保し。

 奴はそのまま警察に連行される。

 同時に久留里校長が兄さんに声を掛ける。


「トラウマを抱えてるのに、無茶をするね……」


「すみません……。 下手したら、佐奈さんが刺される可能性もあったから」


「まーくん……」


 エチケット袋を持参して兄さんを支える佐奈ちゃんと久留里校長に対して兄さんはそう言った。

 幸い、嘔吐はしていないが、かなり状態が悪い。

 それでも、佐奈ちゃんに抱えられている状況では、下手したら佐奈ちゃんが刺されていた可能性もあったという。

 そこで、多分意識が飛んだんだろう。

 蹴りも無意識で繰り出したように思えてならない。

 それだけ、兄さんにとって佐奈ちゃんが大切だから……。


「悪野と葛宮、そして粕原の三人はより重い罪になるでしょう。 ナイフを所持していた事と明確に向こうから襲ってきたし、公務執行妨害もありますからね」


「対処していただいてありがとうございます」


「いえ、こちらの尾行を振り切ってまで明確な殺意を抱いてたのは驚きましたがね」


 警察の人が久留里校長に話をしている。

 確かに今の警察は、かなりまともな人員が動いてくれていたようだ。


「さて、事後処理もあるし、今日は休校にするね。 これから、放送で伝えるから、それまで保健室で一息いれるようにね」


「はい」


「兄さん、行こう」


「ああ……」


 少しだけ落ち着いた兄さんを私と佐奈ちゃんで支えつつ、保健室へ向かう。

 今回のような事件があったので、今日は休校になると教えてくれた。

 他のみんなには、放送で休校を伝えるとの事だ。


 保健室にて一息入れている所で、休校の報告と理由を伝える放送が流れ、私達もそのまま下校することになったのだった。


次回は明日の昼以降に更新します。


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