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双子姫の心情

【Side 双子の姉妹】


「ふぅ、トイレには間に合ったね」


「全くよ。 本当にしつこいんだから……」


 私こと高岡(たかおか) 奈々(なな)は、双子の妹である佐奈(さな)と共に教室に入る。

 昼食を食べ終え、トイレへ向かおうとした矢先に男子から呼び止められたのだ。

 しかも、一度断った男子たちだった。

 何度も言わさないでとキツイ言葉を浴びせて、そこから去り、チャイムが鳴る前にそそくさにトイレへと駆け込んだ。

 そして、無事に済ますことが出来て、安心した所で今に至るのだ。


「彼、ちゃんといるね」


「うん。 今度こそ彼に話しかけたいね」


 私達が見ている先は、二宮(にのみや) 正樹(まさき)君という男子。

 その名前は、小学生四年生の途中まで一緒に遊んでくれた男の子と同じ名前で、特に佐奈がよく彼にくっついていた。

 クラス替えの名簿を見た時に、私達は驚き、遠くで実際に見た時には間違いはないと確信し、話しかけようにもそれが叶わなかった。

 何せ、彼に話しかけようと考えているタイミングで、他のクラスや他の学年の男子から呼び出しを食らっているのだ。

 さっきも言ったが、いずれも私達への告白なので、ゲンナリしているのだ。


 何でそんな事になってるのかというと、私達が【双子姫】と呼ばれているためだ。

 私達は、どうも他の人にとっては可愛いアイドルのような存在らしい。

 そのために、告白する人たちが後を絶えなかった。

 佐奈も私も、好きな人がいるからと告白を断っているのだが、それでもしつこくして来る人もいるのだ。


 なお、ボブカット寄りのセミロングの佐奈は【元気姫】、ロングヘアの私は【清楚姫】とも呼ばれているみたいだ。

 これも不愉快なんだけどね、本当は。


「はーい、席に着いてくださいねー」


 私達がそう言いながら席に着くと同時に、春日井(かすがい) 早紀(さき)先生が教室に入る。


「さて、今回は来週の校外学習の為の班決めとコミュニケーションタイムとします」


 五限目を使って、どうも来週の校外学習での班決めを行うようだ。

 チャンスがあるとしたら、多分ここだろうね。

 チラッとみると、正樹君は頭を抱えているようだ。

 校外学習すら、嫌なのかな……?

 そこで、早紀先生から衝撃の発言を始めたのだ。


「ですが、二宮くんについてはご両親からの通達が学校に届いており、その関係で今年の校外学習は不参加となります。 なので、班決めは二宮くんを除いてください」

 

 この瞬間、私の頭は真っ白になった。

 佐奈も、驚き固まっている。

 両親の通達で、校外学習は不参加?

 何で……!?


「二宮くんは、保健室でお休みして、チャイムが鳴ったらそのまま下校してくださいね」


「はい。 ご配慮ありがとうございます」


「あ……!」


 早紀先生がそう言うと、正樹君は頭を下げてから教室を出る。

 佐奈が何か言いかけたようだが、それも叶わなかった。


「佐奈……」


 呆然自失の状態になる佐奈を見る事しか出来ない私。

 校外学習でというチャンスが、瞬く間に潰されたからだ。

 この7年間で、正樹君は変わり果ててしまったのか?

 何が、彼をここまで変えてしまったのか……。


「二宮君はクラスで常に一人だったよ。 授業が終わったらすぐに教室を出るし」


「そうなの?」


 呆然とする私達に、委員長である田井中(たいなか) 柚子(ゆず)さんが話しかけてくる。

 ここまでの彼の様子を教えてくれたようだ。

 まさか、クラスでは一人だったなんて……。


「うん。 顔を青ざめた様子でね。 先生が彼の両親が不参加にという通達が学校に来たっていうの、それも関係してるんじゃ?」


 そういえば、ここ最近の彼の様子は日に日に酷くなっていた。

 まるで、人と接するのが怖いというそんな様子が。

 昨日も誰かが近づくと口を押えてすぐにトイレへと走っていったのを見たし、一昨日も彼の席の周りである危険人物の二人とクラスメイト達が揉めていた。


 でも、何が原因であんな事に?


「もしかしたら、過去のニュースで出たあの小学校のいじめの被害者、彼だったんじゃ?」


「「え!?」」


 そこで私達は、過去に起こったニュースを思い出した。

 約7年前に地方の小学校でいじめがあったようだが、学校や教育委員会は『ポピュラーな遊び』だとしていじめがあった事を否定し、炎上した。

 しかし、その後はその小学校や教育委員会と警察がグルだった事やいじめを否定したことについて批判した不特定多数を情報開示請求という暴挙をかました事が、『週刊文冬』で明らかになった。

 それもあってか、最近になってようやくその小学校は廃校に、その地方の警察や教育委員会も人員がごっそり変わったのだとか。


「そういえば、彼の傍にいる二人の発言にも『ポピュラーな遊び』という単語が出てたね」


「じゃあ、正樹君が……、あの小学校の犠牲に……!?」


 私が彼の傍に居る男女二人の発言を思い出していると、佐奈がワナワナと身体を震わせる。

 佐奈は、幼いころから正樹君の事が好きだったんだよね。

 そのいじめによって、想い人が変わり果てたって気付いて、ショックを隠せないのだろう。


「とにかく、今は私達でグループとして組もう。 3~5人でっていう配慮があるから、最悪私達三人で……」


「そこの美少女たち、あんな陰キャの事なんか放っておいて、俺達と組もうぜ」


 私と佐奈、そして田井中さんで決定しようとしていたら、不快な声が聞こえて来た。


「何か用?」


「だから、俺達と班になろうぜって言ったのさ。 あんな陰キャの事なんか放っておいてさ」


「そうそう。 陰キャが居ないからこっちは助かるんだぜ」


 佐奈のドスの効いた声にも臆せず、飄々として私達を誘ってきた見た目イケメン陽キャの二人。

 確か、悪野(あくの) 影男(かげお)葛宮(くずみや) 益男(ますお)だったかな?

 中身が不快な男二人が、私達にとっての危険人物の二人が私達を誘いに来たのだ。



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