双子姫と母親の誕生日②
「では、我が妻の紗友里と娘の奈々、佐奈の誕生日をお祝いして、乾杯!」
「「「かんぱーい!!」」」
さて、他にも来客は来る予定らしいが、それぞれ用事の合間を縫って来るそうなので、先に俺達で祝っている状態だ。
乾杯の音頭は、京也さんがとっている。
未成年の俺達も来ているし、小学生の和哉くんもいるので、コーラかオレンジジュースでの乾杯となる。
「父さん、やっぱりこのケーキはあそこので買ったんだね」
「定番だからな。 不味かったか?」
「ううん。 むしろあの店のケーキの方が美味しいよ」
佐奈が切り分けられたケーキを口にした後で、京也さんに話しかける。
このケーキは、あるケーキ屋さんで買った代物だそうだ。
道理でふんわりしてて美味しいはずだ。
「ひょっとして、あの【パンナコッタ】というケーキ屋さんか?」
「そうだよ。 よく知ってるね」
「うちも去年のクリスマスとかで兄さんや家族とケーキを食べたので」
「二宮家も利用しているケーキ屋さんって事か」
やはり、あの【パンナコッタ】という有名なケーキ屋さんのケーキだった。
このケーキ屋さんは、今の時代でもかなりの人気を誇っており、あるコンビニとも提携している。
ふんわりした生地の柔らかさと美味しさが人気の秘訣らしく、今の二宮家でもクリスマスなどでよく食べているほどだ。
「それで、父さん。 後で来る人達にまーくんのトラウマは伝えてるの?」
「ああ、伝えてる。 春日井家の所は紗友里からも伝えて貰うようにしておいた」
「冬さんとかは、私の方で伝えた方がいいからね。 あと、そうなった要因も含めてね」
「あれはねー。 件の学校が廃校になってくれてよかったと思うよ。 【文冬バズーカ】からのSNS拡散のおかげでね」
(そうか。 あの小学校は今はなくなってたのか……)
俺が引っ越した先の小学校。
転入前に父さんがひき逃げされて死んだあと、そこにいる者全てにいじめられた忌むべき小学校。
警察にも教育委員会にも相談や通報しても対応して貰えないばかりか、むしろ学校とグルだったという事実にショックを受けたあの日。
奈々の言うように、【週刊文冬】のスクープ記事やそこからのSNS拡散がなければと思うとゾッとする。
それが今はすでに廃校となっているようだった。
その情報を聞いたのは、まさに初めてだったのだ。
(さて、これ以上考えてもしょうがないし……)
折角の誕生日パーティーだ。
下手して主役の三人に迷惑をかけないようにしたい。
そう思いながら、コーラを飲む。
すると、京也さんがみんなにあるものを配っていた。
「これは……。 そうか、今でもあのコンビニの名物なんだよな」
「あー、最近ゆず胡椒味が出たみたいだけど、こっちの方が美味しいんだよね」
「定番ですよね、この【セカチキ】は。 確かさっきの【パンナコッタ】とも提携してますよね」
「そうだ。 【セカンドマート】のスイーツもあの【パンナコッタ】で作られた奴だ」
「ああ、道理でコンビニスイーツのレベルが高いなって思ったら」
差し出されたチキンは、コンビニの【セカンドマート】で販売されている有名なチキンの【セカチキ】だった。
最近はゆず胡椒味が出ていると、佐奈が言っていたが、軍配は今のベーシックなチキンになるようだ。
また、さっきの【パンナコッタ】も提携先の【セカンドマート】に向けたスイーツも作ってるらしい。
道理で、あそこのスイーツのレベルが高くなったわけだ。
「和哉くんはどうだい? おいしいか?」
「うん。 美味しいよ」
「あらら、和哉くん、お口にクリームが付いてるよ」
そして、和哉くんにも声を掛ける。
もきゅもきゅとケーキを美味しそうに食べている様子を見て微笑ましく思うが、真由が口の周りにクリームが付いているのを見つけ、それを拭き取る。
「ごめんね、真由姉」
「いえいえー」
「真由ちゃんにとってもカズくんは、可愛い弟分なんだよね」
「みたいだなぁ」
真由に拭き取ってもらって、お礼を言う和哉くんの様子を佐奈と俺は、微笑ましく見ていた。
やはり、下の弟や妹が欲しかったのだろうなぁ、真由も。
そう思っていたら、玄関のインターホンが鳴ったようで、京也さんが対応しに行ったようだ。
さて、誰が来たのだろうか……?
次回は明日の昼以降に更新します。
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