佐奈と奈々の住むマンションへ②
「失礼します」
奈々と佐奈に促されて、彼女達が住む310号室に入る。
「久しぶりだね。 正樹君」
「7年ぶりよね。 大きくなったわね」
「お久しぶりです。 京也おじさん、紗友里おばさん」
入ると双子の父親である京也さんと母親の紗友里さんがいた。
ひとまず佐奈と奈々が、間に立ってトラウマが発動してないかを見張っているが、今のところは大丈夫みたいだ。
「父さん、カズくんは?」
「和哉は、今はお友達と遊びに行ってる。 いずれは会わせないといけないがね」
「とにかく上がってね。 お茶を用意するから」
「あ、はい。 お邪魔します」
佐奈が和哉という子はと聞いたが、京也さんは友達と遊びに出かけているところらしい。
その子も見た覚えがあるようなないような……?
ひとまず、紗友里さんに促されたのて、それに従うようにお邪魔させてもらう。
「和哉の事は覚えてないよね。 まーくんが引っ越しした当時はまだあの子は3歳だったし」
「ああ、そうか……」
よく遊んだ佐奈と奈々はともかく、和哉という子にあまり覚えがないのは、俺達が7歳の頃に産んだ二人の弟だからだ。
保育園に預かることがよくある為に、あまり覚えていないのは仕方がなかった……のだろうか?
キッチンのテーブルの席に着き、両隣には奈々と佐奈が座る。
向かい側には京也さんとお茶を用意した紗友里さんが座っている。
「正樹君が引っ越しした後のあらましを佐奈から聞いた。 辛い目に遭っていたとはね……」
「前のお父さんが事故で死んで、さらに7年前の途中から流れたニュースの渦中にあった小学校で酷いいじめを受けていたなんて……」
「事実です。 母親の親族にも協力して貰いましたが、警察も教育委員会も学校もグルでしたから」
「会見でポピュラーな遊びと平気で言い放ったみたいだからね。 聞いてて腹が立ったよ」
佐奈から聞いたという俺のあの後にまつわる話を京也さんと紗友里さんが振って来た。
事実なので、隠さずに俺は答えていく。
「一応、その際に母さんは、今のお父さん……同い年の妹となった連れ子の父親と再婚したのをきっかけにあの学校を離れました。 半年も持たなかったですね」
「不幸中の幸いとはよく言ったものだな」
「でも、その半年の酷さのせいで、まーくんは人と接する事が怖くなったみたいでね。 幸い、ボクと奈々、まーくんの義理の妹さんとその恋人で友人の男子とは話せるみたい」
「あんな仕打ちを受けたらな。 そうなるか……」
「病院には通ってるの?」
「一応、週一回は」
「そうか……」
京也さんと紗友里さんには、ここまでの事情を色々と打ち明けた。
父さんの事故死、その後にあのニュースにもなった小学校でのいじめに遭った事と、母さんの再婚など。
佐奈も真由から聞いた話を元に、俺の話の補足的な部分を話してくれる。
7年前のいじめによって人と接することに恐怖を感じるようになった事も。
一応、そのために病院に今でも週一回は通っている事も打ち明けた。
「引っ越してから今まで連絡ができなかったのも、そういう環境にあった事で精神的に余裕がなかったので……」
「引っ越し先の連絡も出来なかったのもそれが理由か。 追い詰められればそういう余裕もなくなるか」
「はい」
余裕があれば引っ越し先から高岡家に連絡する事は可能だった。
しかし、父さんの死といじめの影響でその余裕はなくなった。
母さんの再婚で多少余裕は生まれたが、その時には俺のトラウマがあったため、通院の優先と新たな学校への転校があったからな。
「佐奈が正樹君を支えると決めたのも納得がいく。 ここまで酷くなってたらな」
「再婚先の人達が色々動いてくれたのが救いでしたね」
「これからは、私達も君を支える事にしよう。 何かあったら遠慮なく言って欲しい。 佐奈か奈々経由でも構わないから」
「はい。 ありがとうございます」
京也さんからも俺を支えると言ってくれた。
紗友里さんも首を縦に振っている。
この人たちと話してもトラウマが発症しなかったので、大丈夫だろう。
なので、お言葉に甘える事にした。
その過程で、佐奈が俺の背中を優しく撫でてくれてたのはありがたいしな。
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