佐奈、キレる
「え!? これは一体!?」
「奈々ちゃん、ひとまず兄さんを奴から遠ざけて」
「え!?」
「そういう事ね。 百合原が絡んできたのね」
タイミング悪く田井中さんと奈々が女子トイレから出て来た。
そこで、奈々は佐奈と百合原が睨み合っている光景に戸惑い、真由からの依頼にさらに戸惑う。
田井中さんは状況を察したのか、奈々に目配せして俺を遠ざけるように指示。
奈々もようやく理解した所で、俺を抱えて遠ざけるのだった。。
「そういや、百合原って人が何か絡んで来たらすぐに連絡してと彼女のクラスの先生に言われてたわね。 先に報告しましょうか」
「授業はどうなるんだ?」
「まだ時間はあるからね。 新しい校長先生の配慮で昼休みが長めに設定されてるのと、五限目の授業時間は短めにされたから」
なるほど。
就任と同時に昼休みの延長と五限目の授業の短縮化を実行したのか。
というか、校長の一存でそれをしても大丈夫なのか?
いくらここが九条家が運営する学校だとしても。
そう考えながら、俺と奈々は百合原の件を奴の担任に報告しに職員室に向かうのだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
【Side 真由】
「あんた、何しに出て来たの?」
「決まってるじゃない! 男の排除よ! 男なんかクズなんだから!」
「それは、あんたの感想でしょ? 私はそうは思わないよ」
私こと二宮 真由は、トイレの前で百合原という女と遭遇した。
この女は、確かファンクラブ内でも要注意人物として警戒していたし、この女がいるクラス内でも嫌われており、担任の教師からも何度か指導を食らっていると聞いた。
だが、百合原は反省するどころか、ヒステリックに捲くし立ててきている。
この女も自分の都合のいい世界を形成しているみたいで、不快だ。
佐奈ちゃんもドスの効いた声と共に百合原を睨んでいる。
だから、奈々ちゃんに兄を遠ざけるように頼んだ。
「あんたも男と付き合ってるの!? さっさと別れて女同士で付き合いなさいよ!!」
「はぁ!? 訳わかんないんだけど!?」
そこに私にも矛先を向けた。
私が啓介と付き合ってるのを知って、別れさせようとしてきたのだ。
訳のわからない行動に、私もキレそうになる。
「大体、双子姫もそう!! 男なんかと付き合ってはいけないのよ!! 特にあの陰キャ底辺クズ男となんて」
「こいつ……!!」
百合原は独自のルールを展開し、兄をバカにしてきた。
私も田井中さんも啓介も服部くんもみんな、強要じみた言動に怒りを露にし始めた時だった。
「おい」
「何? そういや、あんたはあの底辺……ぐぼあぁっ!?」
「佐奈ちゃん!?」
佐奈ちゃんのさらにドスの効いた声と同時に百合原に腹パンを繰り出した。
思いっきり腹部を殴られた百合原は、お腹を押さえて蹲る。
「今、ボクの彼氏の事を……陰キャ底辺クズ男って言ったかぁ?」
「あ、当たり前じゃない! 双子姫のあんたは男と付き合ってはいけな……、ひいいいっ!!」
「ボクの意思を無視して、お前の思想を強要させるんじゃないよ! ボクの初恋を邪魔しようとしやがって!!」
「ひ、あぁ……」
腹部を押さえながらも佐奈ちゃんに自分のルールを強要してくる百合原の顔面スレスレに思いっきり踏みつけ攻撃を仕掛ける佐奈ちゃん。
兄さんが初恋の人で、これからも付き合いたいと思っているのに、無理やりにでも別れさせて、女同士で付き合わせようとする思想にブチ切れたのだろうね。
佐奈ちゃんの剣幕に百合原は気絶し、そのまま失禁してしまったようだ。
「やれやれ、またですか。 とにかく保健室に連れて行って、指導室に運びますね」
「そうしてください」
その後、兄さんと奈々ちゃんと一緒に現れた担任の先生によって百合原は運ばれていった。
失禁していたようなので、私達で後始末をして、そのまま教室に向かう。
佐奈ちゃんは、数分だけ先生に注意されたが、仕掛けて来たのは百合原なのでこれ以上のお咎めはなかったようだ。
いきなりのトラブルはあったが、その後の5限目も無事に終わることが出来たようだ。
百合原は暫く出てこれないだろうから、後は下酢と退学したはずの悪野と葛宮、そして教員免許を剥奪された粕原だね。
特に後者の三人は、処分に納得がいかずに襲撃する可能性もあるからね。
ファンクラブ内でも警戒を強めるように言っておかないとね。
次回は明日の昼に更新します。
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