退学情報と新しい校長先生
「今朝に新しい首相が就任し、内閣改造も行ったというニュースが流れたな」
「そうらしいね。 ボクも粕原という名前に怒りが沸きそうになったけど、あの教師も免許が剥奪されるみたいだしね」
次の週の月曜日。
いつも通りに双子を交えて真由と啓介と登校していた。
そして、話題には今朝に流れた新首相の就任と内閣改造が持ち上がっていた。
どうも佐奈も、あのお局教師に対して悪い印象を抱えていたみたいだな。
そりゃそうか。
校外学習で、悪野と葛宮に襲われた件はあのお局教師が絡んでたしな。
「これからはトイレとかに行く時は、まーくんに声を掛けるよ」
「いいのか?」
「去年も危なかったからね。 トイレに行こうとしてた所で邪魔されて連れだされ、OKが出るまで告白し続けてたしね」
「あれは酷かったね。 聞いた話だけど、先輩達が来てくれなかったら、佐奈は漏らしてたんでしょ?」
「そうだよ。 それでも未だに諦めていないからね、あの下酢という男は。 あまりにもしつこいから、父さんとおじさんに伝えたよ」
そこで、佐奈は去年の出来事を思い出したと同時に、今度からトイレとかには俺に声を掛けるそうだ。
佐奈自身もあれは忌むべき過去で、先輩達が助けてくれなかったら漏らしてたという。
ファンクラブ間では、下酢の仕業として広まってるが、佐奈自身も覚えていたようだ。
その後も下酢があまりにもしつこいので、彼女の父親と叔父にその事を話したと言う。
(そういえば、佐奈と奈々の叔父は、高岡商事という大企業の社長だったんだっけか。 ある財閥の家系とも仲がいいと言う)
そこで、俺は双子の叔父の会社を思い出した。
高岡商事という複数の部門を抱え、多くの社員のおかげで大きくなったと言う大企業を。
あの叔父さんは確か、幼い双子を溺愛してるし、今の双子の父親も可愛がっているから、その二人の耳に入ったら下酢もおしまいだろうな。
とはいえ、手負いの狼が何をしでかすかわからないので、警戒は緩めない事にしよう。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「おはようございます。 では、皆さん席に着いてください」
トイレを済ませて教室に入ると、少ししてから早紀先生が入ってくる。
教室では奈々と佐奈に守られているが、最近では田井中さんや他のクラスメイトとも話せるよになった。
佐奈が仲介してくれてるので、トラウマも今の所発生はしていない。
「さて、幾つかお知らせがあります。 まず、悪野くんと葛宮くんですが、そのまま退学となります」
ホームルームが終わる頃に、早紀先生からお知らせが入る。
停学中の悪野と葛宮が、そのまま退学となる運びのようだ。
確かに最近の選挙で、あいつらの家族が秘書的な形で仕えている粕原議員が落選、議席を手放す形になったのだが、それだけですぐに退学はならないはずだ。
確か、お父さんの親族が記者をしていたらしいが、お父さんに聞いてみるか。
「あと、去年のやりすぎたいじめ内容をもみ消した粕原先生も免許取り消しとなり、今の校長と共にこの学校を去ります」
悪野と葛宮の退学の話ではシンとしていたが、次のお知らせでクラス内がざわついた。
粕原というお局教師は想定してたが、校長が辞めるというのには初耳だ。
「まーくん、これも後で両親に聞いたほうがいいんじゃないかな?」
「ああ、そうだな」
ざわめきの中で、佐奈が俺に小声でそう伝えた。
これに関しても後でお父さんに聞いてみた方がいいのかも知れない。
ファンクラブにも情報担当がいるが、キャパに限度があるだろうしな。
「そのため、新しい校長が就任されましたので、臨時の集会を行う事になります」
そう言いながら早紀先生は、大きなモニターに向かってリモコンを入れた。
すると、そこには若い女性が映し出されていた。
この人が新しい校長なのだろう。
名前は九条 久留里というらしい。
就任の挨拶とそのいきさつなどを彼女は話してくれた。
同時に、悪野と葛宮、そして粕原の事についても。
しかし、多くの地方の教育委員会が粕原一族が掌握していたとはなぁ。
校長も、その圧力に屈した分家の一人だとも。
これに関しても、九条本家とまともな分家で対応していくとされる。
この私立ゆらめき高校は、【学校法人九条学園】という九条家が運営している学校法人だから。
そう言った事実にも驚きながらも、1限目の半分はこの会見で費やすのだった。
なお、残りは自習となったようだ。
少し勢いが落ちて来たこともあるのと、仕事先でのストレスが酷くなってきているため、明日は昼と夜の2回の更新となります。
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