双子姫ファンクラブのチャットにて①
佐奈との初めてのデートを楽しめた日の夜。
俺は真由と一緒に、スマホで双子姫のファンクラブのグループチャットを見る事にした。
情報収集の為に真由はかなりの頻度でチャットに参加しているのだ。
「ちなみに私のチャットでのアカウント名は【超MM】だよ」
「酷いアカウント名だな、おい!?」
真由が使っているアカウント名の酷さにツッコミを入れつつも、俺も何とかグループチャットに入った。
通常チャットとVRチャットがあり、後者はアバターを使ってあたかも対面で話しかけるような感覚になれるモードのようだ。
とはいえ、俺も真由もハイエンドスペックのスマホを持ってても、アバターを持っていなので、通常チャットを使う。
ちなみに俺のアカウント名は【仮名N】だ。
真由よりはマシだけど、それでもいいのが思い浮かばなかったのがなぁ。
「じゃあ、通常チャットに入るよ」
「ああ。 メールで書かれたコードを入力だったか」
通常チャットは、いわゆる【GAIN】というアプリを使ってのチャットであり、VRチャットはそれ用のアプリを使ってチャットで話すタイプだ。
いずれも同じアカウントを連動できるらしく、これを構築したある財閥の技術がすごすぎるんだよな。
ともかく、真由に倣うように通常チャットに入っていく。
この間、田井中さんから来たメールに書かれているパスワードを入れれば、中に入れるのだ。
『今北産業。 今日は彼も連れてきてるよ』
『仮名Nです』
スマホでの文字入力には慣れているはずなんだけど、こういうチャットは初めて利用するから、上手く打てない。
そのせいか、あっさりめの名乗りになってしまった。
『お、元気姫の想い人の登場かな? 俺はここでは【グエル】って名乗ってる。 学校では先輩だが気軽に行こうぜ』
『仮名Nくんも来てくれたのね。 丁度よかったよ』
チャットには、学校の先輩の人も入っており、その人はここでは【グエル】というアカウント名を使ってるみたいだ。
そこに、星のマークがついたアカウントが丁度良かったと書き込んできた。
アカウント名は【イインチョ】。
ファンクラブの会長かつ、今のクラスの委員長の田井中さんのアカウントだろうか?
『なにがあったの? イインチョさん?』
『情報担当の【フーマ】くんが、加盟していない者の中でのブラックリストを纏めてくれててね。 そこからさらに危険な人物リストをアップしてくれたの』
真由がすぐにチャットに打ち込んで、内容を尋ねる。
すると、ファンクラブの情報担当がブラックリストの中からさらに危険なリストをアップしてくれたようだ。
俺と佐奈の恋路を邪魔する可能性のある人物が記載されてるリストらしい。
『そのリストの中から、2-Eの百合原 佳奈美と3-Dの下酢 陽真は特に要注意だな』
『ハッキリ名前が出ましたね』
情報担当から提供されたリストの中から二人がひときわ危険人物としてリストアップされたのだ。
危険人物だからなのか、名前がはっきり出たのだけど、大丈夫だろうか?
『このグループチャットなどは、鍵を掛けてるからね。 私がメールで送ったパスワードを入れないと入れないようにしてるの』
なるほどね。
田井中さんからのメールに記載されてるパスを入れないと入れないようにしているか。
大丈夫だろうけど、ミスはしないようにしないとな。
スマホを落としたりすると、大惨事だしな。
『それで、その二人が要注意な理由は?』
俺は気になってチャット参加者に聞いてみる。
この間にもどんどんとチャットに人が入ってきているが、流れるのを防ぐためにまだ書き込んでいないみたいだ。
『百合原に関しては、かなりの男嫌いでいわゆる百合という女好きだ』
『それだけなら害はないんだけど、彼女はその思想を他人に押し付けているみたいでね。 クラス内から嫌われてるの』
百合原という女が要注意の理由が【イインチョ】から語られる。
どうもその女は、大の男嫌いでさらに歪んだ百合思想持ちだ。
それを他人にも押し付けているらしく、少なくともクラス内からは嫌われている存在だとか。
『あの女は、双子姫が男と付き合ってはいけないという考えも持っててな。 お前さんと別れさせようと画策してるみたいだ』
『そういう事か』
『多様性は構わないけど、それを他人に強要するからね……』
百合原が要注意な理由は理解した。
男嫌いで歪んだ百合思想を他者にも押し付けているからだ。
それによるものか、俺と佐奈の仲を引き裂いて、佐奈を女同士のカップルを紹介させるつもりらしい。
最悪だな。
だから、要注意人物指定してるのか。
で、もう一人はどんな理由で要注意人物に指定されてるのだろうか?
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