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マクスウェルの悪魔  作者: ガバガバ
最初の1日
5/9

お然り後

明かりの下、畳の上で僕は星座をしてる。狭苦しい6畳の和室には畳のいい匂いが心を落ち着けるが、目の前に静かに座っているのは、目の下を赤くするまで泣いた母親だった。


「...」


潤んだ瞳で僕を睨んでいる。単なる静かな空間がピリついていることを肌で感じていた僕は、どうにも言葉を踏み切れないでいる。

母の泣く姿を初めて見た。いつも右頬に添えて静かに怒っては、誰にも分からないところでちょっとしたやり返しをする。そんな慎ましい母の姿とは一転して、一直線に、僕に向かっていて、辛い。


「大河。あなたはヒーローになりたいの?それとも力を使いたいだけ?」


小さな口が静かに動いて僕の心を刺す。おじさんにも問いかけられたが、未だ答えは見つかっていない。正直に話そう。


「わかんない。」

「...そっか。ならまだ大丈夫ね。」


母さんは涙を拭って鼻をすすると、また僕の目を真っ直ぐ見て言葉を投げる。


「わたしね。怪我をしたのもそうだけど、1番心配したのはあなた自身のこと。」

「僕のこと?」

「そうよ。力の使い方や自分の立ち位置を決め兼ねてるあなたが、力を使って人を傷つけた。そんなことを聞いてわたしがどう思ったと思う?」


いじめっ子である狭間くんに手を挙げたということ。この事実は変わらなくて、そんなことを聞かされたら、僕はどう思う。自問自答が足りなかった。僕は母親の気持ちを考えると、途端に泣き出してしまった。


「そう。貴方と同じ気持ち。あなたが力を使って、誰かに報復するような人だと思いたくなかった。」

「ごめんなさい。」

「あぁ。大我。あなたはもっと自分を知るべきだわ。」


母さんは僕を優しく抱きしめてくれた。泣き出した僕を包んで、肩に顔を乗せてそっと語り掛ける。


「もっと叔父さんと自分への理解を深めなさい。」

「うん。」

「私はあなたがより良い道を選ぶ事を祈ってる。」

「うん。うん。ごめんなさい。ごめんなさい...」


母親の腕の中で泣くだけの僕は、何も出来ない弱虫のままだ。何も変わっていない。変えなたくない。僕は力に振り回されることなく、自分の力で道を切り開くことを覚悟した。




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