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青春聖戦 24年の思い出  作者: くらまゆうき
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第97話 舎弟としての初の遠征

高校に入学して早くも2週間。



千野達3年生は高校最後の夏の大会が控えていた。



高校野球といえば誰もが聞いた事がある甲子園だ。



都道府県の代表高校が甲子園という野球の聖地でプレーをする晴れ舞台だ。



千野達も当然甲子園を目指していた。



とてつもない不良の千野だったが、野球への取り組み姿勢は真面目で手を抜く事はなかった。



厳しい練習も先頭に立って仲間を導いていた。



不真面目な選手がいれば同級生だろうが迷わずに怒鳴っていた。



そんな姿勢に祐輝はますます惹かれていた。



気がつけば自分もあの様な男になりたいと憧れるほどに。



そして今週は入学して初めての遠征だった。



他校へ赴いて試合をするこの遠征では祐輝は舎弟として千野の隣で荷物を持っていた。



駅を出てから隣で千野が愛用するバットだけを持って試合会場へ向かった。



けんせー達1年生はボールやキャッチャーのレガースセットなどそれは重そうに運んでいたが、祐輝が持っているのは千野バット1本だけだ。



だがチームで一番重い物を持っていた。



入部して1週間目の週末で2年生が千野のバットを倒しただけで練習後2時間もランニングさせられた挙げ句、タコ殴りにされたのだ。



暴君とも言える千野の振る舞いは一見すると理解に苦しんだが、舎弟である祐輝にはその理由がわかっていた。



大名の小姓の様にバットを縦に持って右後ろに追従する祐輝は千野の大きな背中を見て、少しだけ微笑んだ。



それはとある日の練習後の事だった。



2年生がグローブをグラウンドに置いたまま、駅に向かって歩き始めていた事があった。





「おいそれ誰のだ?」

「たぶん和田さんですね。」

「2年全員呼び戻せ。」

「は、はい!!」





祐輝は千野に言われるまま、2年生の代表に電話をかけると荒い口調で怒鳴っていた。



すると千野は通話をスピーカーに変えて2年生の罵声を聞いていた。



焦る祐輝は2年生をなだめるが駅まで来たのに戻るわけねえだろの一点張りだった。



我慢の限界がきた千野は「早く戻って来い!」と怒鳴ると祐輝に「1年は2年の部室に行って、荷物全部グラウンドに出せ!」と続けた。



数分待つと青ざめた表情で2年生が戻ってきた。





「てめえら今日の練習最初からやり直せ。」

「で、でももう真っ暗です・・・」

「関係ねえ。 やれ。 道具を片付けなかった連帯責任な。」





なんと夜の21時まで居残り練習をさせられた。



祐輝は2年生へ不信感を抱くと同時にかつて佐藤コーチに教えてもらった道具を大切にする心を千野も持っている事に嬉しかった。



その後、千野からバット持ちを任された時にこんな会話をした。





「今日から俺のバットを死んでも傷つけるな。」

「はい!」

「親の金でこんな高えバット買ってもらってんだからボール以外で傷つけるわけにいかねえだろ。」





千野は何気なく言ったにすぎなかったが、祐輝には深く共感できた。



母親の真美が一生懸命にやらせてくれた野球。



グローブはピッチャーにとって命だ。



侍でいう刀に等しい。



千野は一塁手で専門は打撃だ。



だからこそバットは命の様に大事にしていた。



そして親への感謝の気持ちも持っていた。



まるで祐輝が真美や佐藤コーチに感謝しているのと同じ様に。


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