第7話 勝と祐輝の衝突
タイガースから始まった祐輝の野球人生は少しずつ彩り始めていた。
一輝との日々は少しずつ祐輝を成長させ、親友の大切さも良く知った。
そんな祐輝と一輝は夏祭りへ出かけた。
的屋が並び、浴衣を着た女の子達がさらに祭りに花を持たせる。
祐輝と一輝はたこ焼きを食べながら歩いていた。
「射的やろうぜー!」
「おおいいねえ!」
射的を楽しんでいる2人をじっと見る存在。
勝と取り巻きだ。
懲りもせずしつこく2人を挑発していた。
射的を楽しむ2人はまだ勝に気がついていない。
「おお祐輝上手いなあ!」
「でしょ。 なんか得意なんだよね。」
「祐輝あれ狙ってよ!」
「いいよ!」
そして祐輝が撃とうとした瞬間に勝は祐輝の背中を押した。
弾が的を外して、祐輝は前のめりになる。
慌てて一輝が祐輝を引っ張ると祐輝は振り返った。
そこにはニヤける勝。
「何するんだよ。」
「へへー当たらなかったな。」
「いつもいつも嫌がらせしやがって。」
「えー? そんな事してないよー」
祐輝は勝の胸ぐらを掴んで思い切り殴った。
転んで顔を押さえる勝に祐輝はまだ殴ろうとする。
すると的屋のおじさんが2人の首根っこを掴んで押さえつける。
「おらガキ。 喧嘩なら祭りの外でしやがれ。」
的屋のおじさんは新宿では有名なヤクザの構成員。
そしてその組長の娘は祐輝や勝と同じ小学校にいた。
下手に暴れたらヤクザが出てくる。
既に他の的屋からも睨まれている。
祐輝は大人しくおじさんに謝った。
「喧嘩するのは構わねえ。 でもここでやるんじゃねえ。 わかったら向こうの公園で続きやれ。」
「行くぞ勝。 続きやろうぜ。」
「父ちゃんに言ってやるー!」
勝は走って逃げていった。
2人の犬猿の仲は何処までも続いた。
その後の学校でも校庭で先生が5人も出てくる乱闘を行った。
勝は取り巻きを連れて我が物顔。
15人ほどの取り巻きをいつも連れている。
祐輝は家で見た歴史のテレビからヒントを貰った。
「今日は無名の織田信長がどうして天下の表舞台に立てたのか?」
1時間ほどの歴史番組を見続けて祐輝は答えに辿り着く。
取り巻きの数は多い。
それなら自分も仲間を増やさなくてはいけない。
次の日学校で一輝に話した。
「ええ? で、でもタイガースのみんなだよ?」
「関係ない。 勝は俺達をいじめるんだから。 監督に言っても信じてなんかくれないさ。 だったらいじめられない様に俺達で仲間を増やすんだ。」
困った表情の一輝は横目で勝にいじめられる生徒を見る。
すると祐輝は真っ先に走っていった。
勝を後ろから押し倒すといじめられる男の子の前に立った。
「弱い者いじめばっかりしやがって。」
「うわーバイキンが来たー逃げろー!!」
祐輝はいじめられていた男の子に手を差し伸べた。
立ち上がり涙を拭くと嬉しそうに祐輝の顔を見た。
「あ、ありがとう。」
「これからは俺達が守ってあげる。 一緒に遊ぼう!」
「ありがとう。 俺は駿太!」
「祐輝と一輝!」
「よろしくね!」
駿太は頭が良く、授業を真面目に行っていた。
それを良く思わない勝の標的にされていた。
駿太は1年A組だ。
祐輝はB組で一輝はC組。
そして勝と取り巻きはDとE組にいた。
全F組まである小学校のクラスは勢力図となっていった。
祐輝はさっそくAからC組までの仲間集めに着手した。
「俺はB組のみんなに声かけるよ。 一輝も自分のクラスから仲間誘ってよ。」
「わかった。 で、でもいいのかな・・・タイガースのみんなと喧嘩なんて・・・」
「弱い者いじめから友達を守るんだ。 どう考えても勝が悪い。」
こうして祐輝と勝は1年生を巻き込む大喧嘩を始めた。
小学校1年の秋の事だった。
夏は終わり、涼しくなる頃だ。
しかし少年の魂は熱く燃えたぎっていた。