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青春聖戦 24年の思い出  作者: くらまゆうき
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第6話 友達なんかじゃない

祐輝は勝を含む5人の子供に怪我をさせた。



その爆発的な力も問題だが何よりも怪我をさせた事が問題だ。



真美と祐輝は家に帰ると祐一が仕事を終えて帰宅していた。





「何があった?」

「この子が勝君達に怪我させちゃったの・・・」

「友達を大切にできねえやつは野球なんて辞めちまえ。」





祐一からはその一言だけだった。



怒りもせず、それだけ言うと風呂に入ろうと服を脱ぎ始めた。



祐輝は絞り出す様な声でボソッと言った。





「友達なんかじゃない。」

「なに?」

「あいつらは友達じゃない。」

「そうかじゃあ野球辞めちまえ。 以上だ。」

「ちょ、ちょっと。 もう少し何か言ってあげてよ。」





真美が困った表情で祐一に助けを求めるが反応せずに風呂に入っていった。



祐輝は部屋に戻って考えていた。



友達とは何か?



一輝は自分を大切にしてくれる。



だから野球も上手くなって一輝と一緒に頑張りたい。



それが友達だ。



それに比べて勝はいつも馬鹿にした顔で見ている。



取り巻きを連れて偉そうに。



これの何処が友達なのかと。



布団に入って黙り込んでいると祐輝は眠ってしまった。



結局祐一からは何も言われなかった。



しかし翌朝。



週末になり、タイガースの練習に向かおうと祐輝は目を覚まして準備を始めた。





「ユニフォームなんて着なくていい。 監督に辞めると言ってこい。」

「え?」

「いいから早く行け。」

「でも・・・」

「家から追い出すぞ。」





そして祐輝は仕方なく自転車でグランドへ向かった。



グランドには監督やコーチが祐輝を待っていた。



監督の息子に怪我をさせたからには辞めるのが当然なのかと祐輝も諦めていた。



グランドに着くと監督が駆け寄ってきた。





「おいおい。 何も辞めなくても・・・確かにうちの息子は歯が折れたけどな。 男の子なんだから殴り合いの喧嘩ぐらいするよ。 ネチネチいじめるよりいいさ。 監督は祐輝に怒ってないよ。」

「でもお父さんに辞めて来いって言われたので・・・」





すると監督はコーチと顔を見合わせた。



監督に謝っている祐輝をあざ笑うかの様に勝はニヤニヤとしている。



取り巻き達は祐輝と目も合わせない。



監督は祐輝の肩に手を置いて言った。





「監督は怒ってるぞ。 いいかい。 喧嘩したのも仕方ない。 それで祐輝が責任を感じて辞めるって言いに来たのも立派だよ。 でもね。 途中で考えを変えてお父さんのせいにするのはダメだよ。 それは監督も怒るぞ。」






祐輝は監督の言っている意味がわからなかった。



小1の祐輝には理解ができなかった。



驚いた表情をしたが祐輝はとっさに監督に謝った。



すると監督は祐輝の頭をなでて微笑んだ。





「偉い。 もうお父さんのせいにしちゃダメだぞ。 お父さんも心配して監督に電話してきたんだからな。」

「ご、ごめんなさい・・・」

「じゃあ帰って着替えておいで!」

「はい。」





理解できなかったのだ。



小1の祐輝には何が起きているのかわからなかった。



自転車を漕いで家に帰ると祐一はユニフォームを着ていた。





「早くしろ。 置いていくぞ。」

「う、うん・・・」





自分が何か間違えたのか。



頭の中がグチャグチャになったまま、祐輝はユニフォームに着替えてグランドへ向かった。



何か思う事がある。



しかし上手く整理できないし、何が起きているのか理解できない。



ただ1つだけ。



小1の祐輝の頭でも決定的な事がある。



勝達は友達なんかじゃない。



一輝だけがいてくれればそれでいい。



大勢に馬鹿にされても怖くなかった。



祐輝はグランドに戻った。



すると一輝が駆け寄って来た。





「もう辞めるなんて言わないでくれよお・・・」

「ごめん・・・」

「俺達は親友だよね?」

「うん。 一輝は俺の親友だよ!」





一輝は安堵した表情で祐輝とキャッチボールを始めた。



小学校1年生の夏の事だ。



蝉の鳴き声が響き渡り陽炎がグランドを漂う。



少年達は肌を焦がして必死に白球を追う。


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