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青春聖戦 24年の思い出  作者: くらまゆうき
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第140話 終わりのサヨナラ

祐輝は仕事に行っていた。



玲斗も首が座って動いている。



可愛い子供のためならどんな過酷な仕事にも耐えられた。



凍りつく様な極寒の冬の中で祐輝は仕事をしていた。



ある日の台風で愛車のバイクが壊れた事から出勤にはリカの運転で車で行っていた。



そして今日も仕事を終えると会社の隣にあるスーパーの駐車場でリカが待っていた。



助手席に玲斗が乗っているにも関わらず、窓を開けてタバコを吸っているリカに激怒すると火を消させた。





「てめえ二度とするな。 運転ぐらいの価値しかねえんだからやれ。」





もはや祐輝はリカを家族とは思っていなかった。



稼いでも稼いでもどこかへ消える金は確実にリカの口座へと消えていっているはず。



わかっていても祐輝はカードを奪い返せなかった。



リカは財布にカードを入れていなかった。



カードの在り処はゴミ屋敷の部屋のどこかだ。



怒りをあらわにする祐輝は玲と玲斗と自分の近くに座らせると車の窓を全て開けていた。



そして無言のまま、夕食を食べると子供達を眠らせた。



翌朝目が覚めると仕事へ行った。



冬が開けて春が来ると世の中は新生活が始まる。



それは祐輝達にとっては繁忙期が始まるという事だった。



膨大な荷物を限られた人員で運ばなくてはならない。



残業だって当然の様にあるはず。



祐輝はそう考えると不安で仕方なかった。



トラックの中で考えながら仕事を終えるといつもスーパーへ行った。



だがどうした事かリカの車がない。



携帯で電話をかけるが繋がらなかった。



首をかしげながら歩いて家に向かっていると帰り道にある交番にリカの車が停まっていた。



交番を覗くと「パトロール中」と書かれて誰もいなかった。



祐輝はそのまま、家に帰ると警察官が数人立っていた。



警察官は衝撃の言葉を発した。





「息子さんが危険です。 急いで病院へ行ってください。」





その時祐輝は全身の血が冷たくなるのを感じた。



病院へ行きたくてもバイクは壊れ、リカの車は鍵がない。



財布を見ると100円ほどしか入っていなかった。



たまらず上司の豊田に電話をした。



駆けつけた豊田と共に病院へ入ると直ぐに案内された。



そこには青白くなって動かなくなった玲斗がいた。



玲斗は死んでいた。



理由はわからなかった。



司法解剖をしても原因はわからないままだ。



リカは終始「私のせいだ」と泣いていた。



それが何を意味しているのか知るすべはなかった。



祐輝は泣いていなかった。





「玲斗・・・お前。 何か伝えたかったのか・・・な、なにも死ななくたっていいんだよ・・・」





携帯を取り出すと祐一に連絡をした。



「助けてください・・・」と。



数日警察の取り調べを受けた祐輝は祐一の車に乗り込んだ。



東京に帰るのだ。



リカという悪魔はその後も京都の家に残って新たな男と暮らしていた。



あまりに空虚だ。



祐輝は東京に帰って数日後に。



号哭を上げた。



24年もの間、一体何がしたくて生きてきたのか。



野球という夢は潰え、愛する人とも出会えなかった。



我が子だけが生きる希望だと思っていたのにそれすらも失った。



長年の間、屈強に保たれていた祐輝の心は遂に壊れた。



朝から晩まで玲斗の遺影と遺骨の前で座っている。



玲の面倒は妹の千尋と真美が行っていた。



1週間も何も飲まず食わずで痩せ細った祐輝だったが、空腹も痛みも感じていなかった。



この時祐輝には声が聞こえていた。





「お前はよく頑張った。 俺と代われ。 もう十分だ。」




幻聴だと思っていた声は24年の人生で何度も目を覚ましかけていた「何か」だった。



玲斗の死を堺に聞こえ始めた「何か」の声は祐輝に話しかけ続けた。



これは序章だ。



天冥聖戦という物語がこれから始まるのだ。



そのために犠牲になった祐輝の24年の人生だ。

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