第139話 最終通告
悲惨な産まれ方をしたにも関わらず、子供は無事に退院した。
祐輝は息子に「玲斗」と名付けた。
玲斗は家に帰るとゴミ屋敷の中で横たわっていた。
祐輝は突然の事で仕事をしばらく休む事になっていた。
この連休を使って玲斗と兄の玲がしっかりと暮らせる環境を作り直すつもりだった。
まずは玲斗が過ごす事になる和室の部屋を掃除していた。
リカが食べ散らかした生ゴミを片付けて除菌スプレーを吹きかけていた。
害虫の死骸が当たり前の様にゴミの下から出てくるのも祐輝は何も言わずにちりとりで片付ける事1時間。
部屋は綺麗になり玲斗にミルクを飲ませると眠らせた。
兄の玲は可愛い弟の隣で寝顔を見ているとしばらくして玲も眠った。
その隙きに祐輝は部屋の全てを掃除していた。
既にゴミの量は一世帯から出る量ではなかった。
近隣住民が冷ややかな視線を祐輝に浴びせる中でも掃除を止める事はなかった。
「どうだっていい。 子供が暮らせる環境を作り直すにはこの休みしかない。」
丸一日かけて綺麗にした部屋を見た祐輝は夕食を自分で作った。
そして玲と2人で食べている。
リカは祐輝が掃除している間もタバコを吸いながら携帯を眺めていた。
祐輝はリカの部屋を一部屋用意した。
ゴミ屋敷のまま、維持された唯一の部屋だ。
祐輝はリカを部屋の中に入れると綺麗になった家の中で玲と遊んでいた。
目を覚ました玲斗も一生懸命に体を動かしていた。
「早く3人で遊ぼうな。」
そして夜になり子供達を寝かせるとリカの部屋をノックした。
扉を開けたリカは動画サイトを見ながら楽しそうに笑っていた。
「なに?」と興味もなさそうに目も合わせず話すリカに祐輝は「これが最終通告な」と冷たい声で話した。
「は?」
「次に家を汚したら消えろ。 子供の面倒もそうだ。 見れないなら消えろ。」
「死ぬよ?」
「好きにしろ。」
その言葉は長年、必殺技の様に使ってきたリカに衝撃を与えた。
するとリカは大粒の涙を流し始めた。
「今までそんな事言わなかったのに・・・」と泣きながら窓を開けると身を乗り出していた。
祐輝は今にも飛び降りそうなリカをじっと見ていた。
リカも止めるのを待っているかの様に身を乗り出したまま動かなかった。
だが祐輝は部屋の扉を閉めると子供達の元へ行った。
これが最終通告。
お前の存在はもはや何の価値もない。
祐輝はそう言ったに等しかった。
「子供を守る。 それだけだ。」
そして眠る我が子達の寝顔を見たまま、祐輝は眠った。