第137話 それから2年・・・
京都に来て早くも2年が経過した。
完全に冷え切った祐輝とリカとの間には会話はなかった。
玲も既に3歳になっていた。
「パパ・・・」
「よーしおいで!!」
公園で玲を歩かせて遊んでいる祐輝は抱きかかえると頬にキスをしていた。
嬉しそうに笑う玲の愛おしい笑顔を見て生きる希望を貰っていた。
子供に支えられていた。
祐輝は既に金銭的にも精神的にも限界に来ていた。
仕事で稼いだお金は全てリカに握られていた。
キャッシュカードもリカに持たれていた祐輝は僅かな小遣いを貰ってはギリギリの生活をしていた。
玲に自動販売機で飲み物も買えなかった。
食事も1日1食が限界だった。
それもコンビニのおにぎりを一つ買うかどうかで食べない日も珍しくなかった。
痩せ細った祐輝は少ないお金を玲の食事にだけ費やしていた。
稼いだ金をリカに使われてしまう理由も眠っている間にキャッシュカードを財布から奪われていた事にある。
気がつけばリカの財布には祐輝の名義の見覚えのないクレジットカードが存在していた。
玲の成人まであと17年もあった。
そんなある日の事だ。
「妊娠した。」
「はあ!?」
「降ろす?」
「そんなわけねえだろ!!」
リカは妊娠した。
祐輝にも覚えがないわけではなかった。
だが必ず避妊具をしていた。
首をかしげる祐輝は黙って出産の準備を始めた。
だが今の経済状況で子供を産む事は困難を極めた。
「金がない・・・」
これからは病院に通う事もある。
出産をする時は多額の金が必要だった。
為す術もなくなった祐輝は真美から金を借りる事にした。
「本当に申し訳ない・・・」
離れた母親から金を借りるという事が真美にどれだけの心配をかけるのか。
張り裂ける思いで祐輝は真美から金を借りた。
そしてそれと同時にリカからキャッシュカードとクレジットカードを回収しようと試みた。
仕事終わりに疲れた表情の祐輝は寝静まったリカを確認すると財布を漁り始めた。
そしてカードを抜き取ると自分の財布へしまおうと振り返った。
すると背後で立ち尽くしているリカがじっと見下ろしていた。
驚き身構えた祐輝は声が出なくなっていた。
「何してるの?」
「俺の物を自分の財布にしまっているだけ。」
「私からお金奪うの? 死ぬね。 生きるの辛いから・・・死んだら警察に色々調べられるよ・・・」
その悪魔の囁きは祐輝を苦しめていた。
万が一に殺人の容疑でもかかれば玲とは離れて暮らす。
刑務所に入ってしまうのではと考えると従う他なかった。
おとなしくリカにカードを返すと眠った。
こんな状況でもお腹の子供は順調に育っていった。